昭和53年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

2 多摩CCIS実験の成果

(1) CCIS実験に至るまでの経緯

 46年9月CATVの多目的利用に関する将来動向等を調査検討するため,郵政省はCCIS調査会を設置した。同調査会は48年2月にCCIS開発のための施策として,[1]実験施設及びパイロット施設の設置,[2]低廉で効率的なシステムの開発,[3]コミュニティ施設としてのシステム化の研究と開発,[4]ソフトウェアの開発,[5]施設設置に関する便益の確保という提言等を内容とするCCIS調査会報告書を発表した。
 郵政省では,48年度からCCISの開発実験を進め,同年度から実験サービスに必要な機器の開発を行い,また49年度から番組の制作開発にも着手,諸施設の準備を行い,51年1月から多摩ニュータウンでモニター世帯に対し,サービスの提供を始めた。

(2) CCIS実験の概要  当初の実験対象地区は,多摩ニュータウンの第6住区(永山団地)であり,そのうち約250戸が実験モニターとなり,51年10月には第7・8住区(貝取・豊ケ丘団地)にも対象を拡大し,新たに250戸余が実験モニターとなり,約500戸を対象に実験を行ってきた。
 実験サービス種目は,テレビジョン放送の再送信というCATVの第1世代のサービスから,ファクシミリ型のメモ・コピー,ファクシミリ新聞,そして双方向性を有しているリクエスト静止画,放送応答という新しい情報サービスまで幅広いサービスを提供している。これらのサービスは第1-1-29表のとおり分類される。
 システムの概略は第1-1-30図に示したとおりであり,構成要素としては,受信アンテナ,実験センタ,伝送路,端末機器がある。約250m2の実験センタには,各サービスの番組を制作・送出するための機械室,調整室,スタジオ,制作室,展示室,事務局がある。伝送路は同軸ケーブルであり,樹枝状伝送システムとなっている。モニター世帯に設置する端末機は,サービス種目により貸与されているものと家庭のテレビ受像機を利用しているものがある。
 実験で提供されたサービスの概要及び提供状況は第1-1-31表のとおりである。
 提供時間がほぼ日中ということもあり,各サービスの利用は主婦層が最も多かった。利用ひん度は,実験の経過につれて低下してきたが,52年9月調査時点において最も利用されていたのはメモ・コピーであり,身近な地域情報に対する欲求があることが分かる。

(3) 実験の成果及び評価

 第1-1-33図に示すように,52年9月におけるモニターの実験全体に対する評価は「非常に有意義」「やや有意義」とするものが過半数を占め,「日常生活に役立った」「身近な人が出演して面白かった」など生活情報,地域情報を中心に取り上げていることが理由として挙げられている。また,市役所,警察署,保健所,消防署,幼稚園,電力会社などの地域諸機関の評価は非常に高く,「地域住民に身近な情報を提供できた」ことが理由として挙げられている。また,この実験期間中,内外から多数の視察見学者が多摩の実験センタを訪れている。その数は,外国からの視察見学者500人を含め約6,000人に達しており,社会的デモンストレーション効果は大きかった。
 CCISのサービスがどの分野において役に立っているかを調査した結果が第1-1-32表である。
 この評価は各サービスが提供した情報の内容を反映したものであり,生活に直結した停電,断水等の公共サービス情報分野や,交通通勤の分野ではメモ・コピー,フラッシュ・インフォメーションが,また教育分野においては放送応答等が高く評価されている。
 これまでの論議では双方向性の有用性が強調されてきたが,これらに関連したサービス,例えば放送応答やリクエスト静止画に対しては,期待されたほどの評価が地域住民からは得られなかった。これは,画質が悪かったこと,情報の量が少なかったこと,また,番組内容の未熟さなどが原因として挙げられている。しかし,このサービスの持つ本質的な機能である個別情報ニーズ,双方向性については,他の実験などで引き続きその情報ニーズに合った形態が模索されている。また,フラッシュ・インフォメーションなどはテレビジョン多重文字放送の一形態として現在検討されている。
 このシステムが生活に与えた影響としては,「地域的な関心や話題が増えた」との回答が半数近くあり,「市政への認識が高まった」「地域的な催物への参加が増えた」などコミュニティ意識の向上や活動への参加が挙げられる。また自主放送・自動反復放送の利用ひん度と,コミュニティ活動の関心度,満足度とは相関関係があり,利用ひん度の高いものがこれらについても高いという調査結果が出ている。

(4) 将来への展望

 この実験を評価するために設置されたCCIS実験調査評価検討会によれば,これからの発展のためCCISをハードウェア中心の発想から地域性を中心としたシステムとして理解しなおそうとコミュニティ・コミュニケーション情報システムとしてとらえ直すとともに,次のような提言がなされている。まず実験は,種々の制約の下で行われたので,更に検証すべき課題が残されており,これを解明するためにも多摩CCIS実験の第2段階を実施する。次に実験規模の拡大を図り,コミュニティ単位程度の規模を確保する。地方自治体の参加を積極的に要請し,情報源としての機能以上の役割を担ってもらう。またソフトの高度化を図り,地域住民の参加を更に積極的に推し進める。そしてニュータウン以外のコミュニティにおいてもCCIS実験の多様化を図るべきであるとしている。
 CCISのこれからの発展は,次の三つの特徴が社会にどのように適応し受け入れられていくかに係っている。その一つは,社会的コミュニケーションシステムとしての新しさである。新しさからくることのハンディキャップを背負っており,これがどのように社会に容認されていくかの課題がある。次に公益性を有していることが挙げられるが,その公益性が社会にいつの時点で,どの程度認知されるかという問題である。三つめは,コミュニティ・メディアとしての性格であるが,コミュニティ形成の一つとして,この役割は,定住構想等とも関連し合い,社会的ニーズはこれから強まるものと思われている。
 郵政省では今後,実験の成果を活用すべく,今年度から既存の施設を活用した生活情報システムの普及基盤の整備を行うこととしている。

第1-1-29表 多摩CCIS実験のサービス種目

第1-1-30図 実験システムの概略構成

第1-1-31表 実験サービスの概要等(1)

第1-1-31表 実験サービスの概要等(2)

第1-1-32表 有用性評価各視点におけるサービスの順位(1)

第1-1-32表 有用性評価各視点におけるサービスの順位(2)

第1-1-33図 多摩CCIS実験全体に対する評価(52年9月調査)

 

 

第1部第1章第3節1 画像通信の現状と動向 に戻る 3 画像通信の展望 に進む