昭和53年版 通信白書

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第3節 我が国と国際社会との交流

1 国際機関等における動向

 国際社会の進展は,通信の量的拡大と質的向上をもたらし,その円滑な運用のために国際間の協力がますます必要となり,万国郵便連合(UPU),国際電気通信連合(ITU),国連宇宙空間平和利用委員会などの国際機関の場において多くの国際的取決めがなされ,協力の推進と様々な問題の解決が図られている。一方,通信技術の進歩は通信の形態を多様化させるとともに,通信以外の分野においてその存在を無視し得えないものとし,これがため通信関係以外の国際機関でもそれぞれの立場からの通信の効率的利用あるいは通信との調整を研究している。
 以下主な国際機関の動きについて述べてみよう。

(1) 通信関係国際機関の動き

 万国郵便連合(UPU)は,1874年に発足し,1948年以降国連の専門機関となっているが,その発足以来一貫して,郵便物の相互交換のため世界を単一郵便境域とする立場を堅持している。UPUは,郵便業務の組織化及び完成を確保し,この分野において国際協力を推進しながら各国郵便業務の向上を図る一方,国際郵便業務料金を決定し,国際郵便の発展を図っている。
 国際電気通信連合(ITU)は,1865年に発足し,1947年以降国連の専門機関となり,電気通信に関する唯一の専門機関として,電気通信の発展と向上に大きく貢献し,また,技術協力の面でも率先してその役割を果たしている。今後は,周波数資源の有効利用の必要性の急速な高まり,宇宙通信の進展,コンピュータ利用の進展に伴う通信形態の様変わりなど新たに生じた事態に対して,電気通信に関する専門機関としての活発な活動が期待される。
 国際電気通信衛星機構(INTELSAT)は,9年間の暫定制度を経て1973年に恒久制度として発足した米国を中心とする国際的な電気通信衛星組織であり,大容量通信衛星の打上げと衛星利用料の低額化によりグローバルな衛星通信の発展に大きく貢献してきている。このようにインテルサットは順調な発展を続けてきているが,近年,新たに対応を迫られている問題も生じている。例えば,インテルサットは,地域間国際公衆電気通信システムの設定を否定していないところから,アラブサットやユーテルサットシステムの計画に対し,技術面はもとより経済面についても調整を迫られている。
 欧州郵便・電気通信主管庁会議(CEPT)は,欧州諸国の郵便・電気通信主管庁の相互関係を緊密化し,郵便・電気通信の各業務の能率を促進するため勧告を行う地域的な行政連合であり,「欧州郵便・電気通信共同体」構想に代わるものとして1959年に発足した。CEPTは,欧州のための地域衛星通信システムである暫定ユーテルサットを設立することを決定し,同暫定組織は1977年に設立された。また,CEPTは,欧州以外の国,特に対米関係における欧州諸国の意識統一の場となっている。

(2) その他の国際機関の動き

 国連宇宙空間平和利用委員会は,1959年,第14回国連総会の決議によって設立され,その下部組織として法律小委員会及び科学技術小委員会がある。同委員会は,各国が宇宙空間平和利用を目的とした宇宙活動全般にわたって国際協調の立場から遵守すべき事項について法律面及び技術面から検討し,また,開発途上国を対象とした宇宙技術の利用に関する国際協力の問題を審議する等の活動を行っている。
 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は,アジア及びオセアニア地域の経済及び社会発展を目的としそれに関する調査・研究あるいは協力を行っているが,1959年の電気通信東京会議を契機として,アジア地域における電気通信事情が極めて遅れていること,それが世界の通信及び経済発展を阻みかねないことなどが広く認識され,地域内主要各国を結ぶアジア電気通信網計画を推進することとなった。このアジア電気通信網計画は,関係各国をはじめITUその他の国際機関との協力も得て,現在,その実現をみつつある。更にまた,この計画を一層拡大発展させるため「アジア太平洋電気通信共同体憲章」が採択され,現在,域内各国に対し,批准,署名のために開放中である。
 政府間海事協議機関(IMCO)及び国際民間航空機関(ICAO)は,ともに国連専門機関の一つとして,海上又は飛行の安全を確保することを目的としており,安全の確保に不可欠な無線通信の取扱いは,重要事項となっている。ITUが公衆通信を含めた全般的な立場にあるのに対し,IMCOやICAOは,海上又は飛行の安全確保という面から通信を扱っている。
 国連教育科学文化機関(UNESCO)は,「正義,法の支配,人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために,教育,科学,文化を通じて諸国民の間の協力を促進し,世界の平和と安全に貢献すること」を目的としている。この目的を実現するための方途としてのコミュニケーションの諸問題についても,UNESCOは取り組んでおり,各地域において関連国際会議等を開催しているほか,国際的な情報の流れに関する諸問題についても検討を進めている。また,UNESCOは,教育への衛星利用が極めて有効であるとの結論を得ており,1972年には,「情報の自由交流,教育の普及及び文化的交換増大のための衛星放送の利用に関する指導原則宣言」を採択し,1974年には,世界知的所有権機関(WIPO)と共同して,外交会議を開催し,「衛星により送信される番組伝送信号の伝達に関する条約」を採択している。また,「平和及び国際理解の強化並びに戦争宣伝,人種別差別主義及びアパルトヘイトとの戦いに対するマスメディアの貢献を律する基本原則宣言案」が審議継続中である。
 経済協力開発機構(OECD)は,経済政策,開発援助,通商など幅広い活動を行っている先進諸国間の国際機関であるが,科学技術政策委員会の下に「情報・コンピュータ及び通信政策に関する作業部会」(ICCP)を設置し,[1]情報,コンピュータ及び通信の分野の種々の要素間で相互関係が増大していることに留意して,国内的あるいは国際的な発展状況をは握すること,[2]それらの分野の発展状況を分析し,経済的,社会的,文化的及び法律的観点からその政治的影響について加盟国政府の注意を喚起すること,[3]この分野の政策決定及び実施に関し加盟国間の経験の交換を促進すること,[4]国内及び国際レベルにおける政策発展について,加盟国を支援し,適宜,国際的調整に留意して各国政策策定の指針を勧告すること,という活動方針の下に数次にわたる会合を開催しており,情報活動の経済分析,国際間におけるデータフローとプライバシーの保護等の問題を取り上げている。
 その他,電気に関する規格の国際的な統一と協調を目的とする国際電気標準会議(IEC)の特別委員会である国際無線障害特別委員会(CISPR)においても各種電気機器による無線妨害を除去するための努力を行っている。

第1-2-41図 通信からみた国際機関等の体系図

 

 

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