昭和53年版 通信白書

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4 電離層観測衛星の開発

 電離層観測衛星(ISS-b)は,53年2月16日,宇宙開発事業団(NASDA)の種子島宇宙センター大崎射場からNロケット4号機により打ち上げられ,ほぼ予定の軌道に投入されて「うめ2号」と命名された。NASDAによる初期軌道決定データによれば,軌道諸量は近地点977km,遠地点1,222km,軌道傾斜角69.4度,周期107分であった。本衛星は「うめ」で生じた蓄電池温度の異常上昇による衛星機能の停止の原因を検討した結果,電源系統の改修を施したものである。打上げ後,約2か月間の初期運用段階では,NASDAの種子島増田追跡管制所等による同衛星の運用を郵政省電波研究所が支援する形で進められ,NASDAにおいてはビームの展開,ステム・アンテナの伸展等の初期管制,衛星各部の動作状態(ハウス・キーピング・データ)の監視等を,また電波研究所では,ハウス・キーピング・データの主要項目の監視と観測機器によるデータの評価を主に実施した。その結果ではとう載テープレコーダの記録再生,観測機器の動作,遅延観測等を含む一連のテストをほぼ順調に終了し,4月24日から定常運用業務に供されている。
 ISSの主要観測項目は,[1]電離層の臨界周波数の世界的分布の観測,[2]電波雑音の世界的分布の観測,[3]電離層上部のプラズマ特性の測定,[4]電離層上部の正イオン組成の測定,の4項目で,これらの観測結果を用いて短波通信等に影響を与える電離層の電離状態等を監視して,電磁環境のは握を行い,短波通信の効率的運用に必要な電波予報,警報に利用するとともに電離圏内における電波現象,電波伝搬に関する物理的研究にも資することにしている。
 本衛星では,限られた地球局(電波研究所鹿島支所等)でしかデータが取得できないため,衛星の一周期分の観測データをとう載,テープレコーダに記録し,地球局の可視範囲内で全記録分を地上に降ろすことができ,また,観測経度を任意に選択するため,観測記録開始時刻を遅延コマンドで指示できるよう設計されている。

第2-7-1表 CS,BS,ECSの諸元

 

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