昭和53年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

9 マイクロ波帯多重通信方式

 公衆通信用マイクロウェーブ回線では,逐次伝送容量を増加することで周波数の効率的利用が図られてきた。29年のマイクロウェーブ回線導入当時は1無線搬送波当たり電話360回線の伝送が限度であったが,周波数利用効率の向上と経済化の努力により5GHz帯(搬送周波数間隔40MHz)で電話2,700回線,6GHz帯(同29.65MHz)で電話1,800回線という大容量の伝送が実施されるに至っている。
 51年度には,更に伝送容量の増大が図られ,6GHz帯において2,700回線を伝送する方式が実用化された。また,4GHz帯(搬送周波数間隔40MHz)及び5GHz帯においては,3,600回線を伝送する方式の研究が進められ,実用化の見通しが得られた。
 これらは,空中線系交差偏波識別度の改善,送信出力の増大,受信機雑音指数の改善,送受信機の直線性の改良等により達成され,世界にも例を見ない画期的なものである。所要の無線搬送周波数間隔は従来,周波数分割多重したベースバンド最高周波数の3倍以上必要であるというのが常識となっていたが,これらの方式はこの値を2.3〜2.4倍にまで改善したものである。
 一方,マイクロ波帯多重通信方式は,治安維持,行政及び公益事業等の分野でも広く利用されており,今後も社会活動の高度化,複雑化に伴い,その利用は増大し,又,通信内容もデータ通信,画像通信等多様化して行くことが予想される。これら公共事業等で使用されるマイクロ波回線の大部分は,通信路数が電話換算で300回線以下の小中容量で運用されていること及び幹線系の整備拡充に伴う分岐系等支線系の需要が増大していることなど,今後益々小中容量の回線が増加する傾向にある。これらの小中容量回線の需要増大に対し,割当周波数間隔の縮小等,周波数の有効利用を図る観点から,51年度に郵政省は電波技術審議会に対し「マイクロ波帯を使用する小中容量多重通信方式に関する技術的条件について」諮問していたが,52年度,現在最も広く使用されているFDM-FM方式について一部答申を得た。PCM方式等の変調方式については機器を試作し,野外実験を行うこととしている。

 

8 テレビジョン放送及びFM放送波を利用した多重方式 に戻る 10 準ミリ波帯ディジタル無線伝送方式 に進む