昭和55年版 通信白書

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4 テレビジョン放送の難視聴解消

(1) 難視聴の現状
ア.辺地におけるテレビジョン放送の難視聴
 テレビジョン放送は,現在,全国的にほとんどの地域で受信できるようになっているが,一部の地域において,既設のテレビジョン放送局の送信アンテナから遠隔の地にあるため,あるいは自然地形によって電波がさえぎられるためテレビジョン放送の良好な受信が困難な状態にある。このような状態を通常,辺地難視聴といっている。
 54年度末現在の全国の辺地難視聴世帯数は,NHKについては約51万世帯,民間放送については約134万世帯と推定される。
イ.都市におけるテレビジョン放送の受信障害
 近年,都市においては中高層建築物,高架鉄道,高架道路,送電線等によりテレビジョン放送電波がさえぎられたり,反射したりすることが原因となって,画面にスノー・ノイズと呼ばれる細かいはん点が現れたり,ゴーストと呼ばれる多重像が現れる現象が生じている。
 このように都市化の進展に伴い,中高層建築物等様々の原因によりテレビジョン放送の映りが悪くなる現象を都市受信障害といっている。
 54年度末現在,都市受信障害世帯数は全国で56万世帯と推定されている。
(2) 難視聴の解消
ア.辺地難視聴の解消
 辺地難視聴については,中継局及び共同受信施設の設置により措置している。50年度から設置が始まった極微小電力テレビジョン放送局(ミニサテ)の普及,NHK民間放送による中継局の共同建設の推進,NHKによる共同受信施設の設置等により辺地難視聴の解消が進められている。NHK及び民間放送の年度別措置状況は,第2-5-12表及び第2-5-13表のとおりである。
 郵政省は,53年度から微小電力テレビジョン放送局の置局費用の低廉化を図るための研究を進め,54年10月報告書として取りまとめるとともに,54年11月の放送局の再免許時等,機会あるごとに難視聴世帯の多い民間放送に対し,さきの研究の成果も活用して中継局を設置し難視聴の解消に努めるよう指導を行っている。
 しかしながら,残存難視聴地域が散在し,1中継局当たりの対象世帯数が少なくなり,解消効率は悪化してきており,また共同受信施設による解消についても,その効率は悪化し,受信者の負担は極めて大きなものとなってきている。
 このような現状を踏まえ,当面放送事業者による解消が見込めない地域に設置する辺地共同受信施設に対し,その設置費の一部を国が補助する制度を54年度に創設し,23道府県の240施設に対し約2億1,000万円の補助を行った。なお,本制度は,55年度も継続することとしている。
イ.都市受信障害の解消
 都市受信障害は,高層建築物の増加,特に超高層建築物の出現により大規模化の様相を呈してきている。
 郵政省は,「高層建築物による受信障害解消についての指導要領」を策定し,建築主,受信者等の当事者が受信障害解消について協議する際の当面の基準的考え方を明らかにして,当事者間に紛争が生じないよう指導を行ってきた。また,受信障害の解消手段としては主として有線による共同受信施設が利用されてきたが,受信障害の態様によっては,SHF帯の周波数による放送が有効であるので,SHFテレビジョン放送局の免許方針等を策定し,受信障害の解消に無線も活用できる道を開いたが,このSHFテレビジョン放送局は,54年6月東京都足立区において初めて実用化された。
 一方,地方公共団体においても,受信障害の予防と解消に関する条例,指導要綱を策定するものが多くなっている。
 以上の経過を通じ,最近では受信障害の多くは当事者間の協議により解消されており,解消のための施設の設置費用は,ほぼ建築主が負担していると認められる。
 しかしながら,当事者間の協議には,解決までに多大の労力と時間を要する上,受信障害解消施設の維持管理の在り方,建築主が複数の場合の費用負担の在り方等,多くの問題がある。
 これらの問題を解決するため,関係者の受信障害解消に対するそれぞれの責務を明らかにし,受信障害解消の方策を制度化することが要望されている。
 このため,郵政省は,53年度,省内に部外学識経験者からなる「テレビジョン放送の受信障害に関する調査研究会議」を設置し,制度的解消の具体策の検討を行ってきたが,この検討結果は,同研究会議において,54年8月報告書として取りまとめられた。
 また,53年度,部外専門家と共同で受信障害の認定基準策定のための基礎的研究を行い,54年3月報告書として取りまとめたが,更に55年度調査研究会議を設け,引き続き受信障害認定基準策定のための調査研究を行うこととしている。

第2-5-12表 NHKの年度別辺地難視聴解消措置状況

第2-5-13表 民間放送の年度別中継局設置状況

 

 

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