昭和55年版 通信白書

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4 電離層観測衛星の運用

 電離層観測衛星(ISS-b「うめ2号」)は,53年2月16日に打ち上げられ,約2年を経過した現在も衛星各部機器は順調に動作している。
 ISS-bは,限られた地球局で運用するために衛星の1周回分の観測データを,とう載テープレコーダに記録し,地球局の可視域内で全記録データを地上に降ろすことができ,また,観測経度を任意に選択するため観測記録開始時刻を遅延コマンドで指示できるように設計されている。
 コマンド,テレメトリ等の衛星管制運用は,電波研究所鹿島支所において行ってきたが,それに加えて54年4月からはカナダ国オタワ市の通信研究センターにおいても行われ,54年度中に629地球周回分の観測データを取得した。データの処理,解析は電波研究所本所で行っている。
 ISS-bの電離層観測(TOP)により,衛星軌道に沿って衛星直下点における電離層臨界周波数(f02)が得られる。観測は毎日3ないし4周回について行い,軌道に沿ったf02の分布が得られている。その結果は毎日電波研究所平礎支所にファクシミリ伝送され,電波警報資料として利用している。また,f02データを4か月間蓄積した後,電離層臨界周波数の世界分布図を作成しているが,現在までに北半球の秋と冬を代表するf02のアトラスをそれぞれ第一部,第二部として出版した。この結果から短波の伝搬状況を予測することができる。このほか,電離層観測によって得られるイオノグラム(周波数対エコー見掛け距離の関係を示すデータ)から散乱エコーを検出することにより,散乱発生ひん度の世界分布図を得た。また,電波雑音観測(RAN)により,雷放電に伴う空電を検出し,空電発生ひん度の世界分布図を得ており,さらにイオン組成観測(PIC)及びプラズマ観測(RPT)では,衛星近傍に存在するイオン(水素イオン,ヘリウムイオン,酸素イオン等)の組成及び電離気体(プラズマ)の密度,温度も測定され,これらの諸量の世界分布図を作成した。
 また,電波研究所では,44年及び46年に打ち上げられたカナダの国際電離層研究衛星(ISIS-1,2号)の計画に当初から参加しており,現在も鹿島支所及び南極昭和基地において,これらの衛星からの電波を受信し,磁気テープに記録している。
 54年度中,鹿島でISIS-1を119パス,ISIS-2を217パス,昭和基地ではISIS-1を257パス,ISIS-2を267パス受信した。記録されたテープには電離層サウンダ及びVLF(ホイッスラー等自然電波)の観測データを含んでおり,データ処理は電波研究所本所において行っている。これから作られたトップサイドイオノグラム及び磁気テープのコピーは内外の研究機関(国立極地研究所,カナダ国通信研究センタ,米国宇宙科学データセンタ,米国海洋大気庁,英国アップルトン研究所)に送られて,既に多くの成果が発表されている。

 

 

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