|
6 宇宙通信の実用化の促進(1) 通信衛星及び放送衛星の実用化の促進48年以来,我が国は実験用中容量静止通信衛星(CS)及び実験用中型放送衛星(BS)の開発を行い,現在までにこれらの衛星を利用して各種の実験を実施して,多くの貴重な成果を得ているところである。これらの実験用衛星の開発成果を踏まえるとともに通信,放送分野における衛星の実利用に対する強いニーズにかんがみ,通信衛星2号(CS-2a及びCS-2b)を57年度及び58年度に,また,放送衛星2号(BS-2a及びBS-2b)を58年度及び60年度に打ち上げ,それぞれ実用に供していくことしている。 通信衛星は,[1]地上の災害の影響を受けにくいこと,[2]地理的障害に左右されず遠距離,広範囲通信が可能であること,[3]通信量の時間的及び場所的変動に対する適応性に富むこと等の特徴を有することから,通信衛星2号(CS-2)については,当面,非常災害時における通信の確保,離島,辺地等との通信回線の設定及び平常時における臨時回線の設定等を目的として,電電公社が開設する国内公衆通信業務用通信回線及び行政機関等が開設する公共業務用通信回線に利用することとしている。 また,放送衛星は,1個の衛星により高仰角で日本全土をカバーできるという特質を有するので,その打ち上げは,全国規模でのテレビジョン放送の難視聴解消に有効であることから,放送衛星2号(BS-2)については,当面,辺地や離島におけるNHKのテレビジョン放送の難視聴解消に利用することとしている。また,この衛星の打ち上げにより,非常災害時における放送の確保等のための利用などが期待される。 CS-2及びBS-2は基本的には,それぞれ,CS及びBSと同規模・同機能の衛星であるが,打ち上げロケットを変更すること,WARC(世界無線通信主管庁会議)において決定された技術基準に適合させること等から,CS,BSに対しそれぞれ所要の設計製作上の改修等が行われている。 CS-2及びBS-2の概要を第2-7-4表に示す。 (2) 通信・放送衛星機構の設立 郵政省は,通信衛星及び放送衛星の実用化を積極的に推進してきたところであるが,その利用の推進に当っては, [1] 静止軌道及び宇宙通信用周波数を有効に利用する必要があること。 [2] 多額の資金,最新の技術及び要員を集約し,これを効率的に活用する必要があること。 [3] これら実用の衛星には,複数の利用者が予想されるが,当該利用者の利害を公正に調正する必要があること。 等の観点から実用の通信衛星及び放送衛星の管理,運用を一元的かつ効率的に行う機関を新たに設置することとした。 また,同機関の法的形態については, [1] その実施する業務は,利用機関からの料金によって運営されるという事業経営的性格を有することから,国以外の機関の協力を得ることによって,一層の発展が期待されること。 [2] 事業の公共的性格にかんがみ,国の監督と助成が及ぶ組織とする必要があること。 等を考慮して,特別法に基づき,民間の発起人の設立許可申請に対し,郵政大臣がその設立を認可するとともに,所要の監督及び助成が及ぶ法人とすることとした。 郵政省は,以上のような考え方に基づき,54年の第87通常国会に同法人の設立,管理等について規定した「通信・放送衛星機構法案」を提出した。 同法案は54年6月6日に可決成立し,同6月12日付で公布され,同7月1日に施行された。同法案の施行に伴い,郵政大臣の認可を得て同8月13日に通信・放送衛星機構(以下「機構」という。)が発足した。 (3) 通信・放送衛星機構の概要 ア.主要業務 (ア) 通信衛星及び放送衛星を他に委託して打ち上げること。 (イ) 通信衛星及び放送衛星の位置,姿勢等を制御すること。 (ウ) 通信衛星及び放送衛星に搭載された無線設備をこれを用いて無線局を開設する者に利用させること。 イ.資本金 機構の資本金は,昭和54年度分8.4億円,昭和55年度分9.6億円の計18億円であり,昭和58年度までに約70億円に増資される計画であり,機構の事業運営に必要な基本財産を形成する衛星の管制用地上施設の建設に充当される予定である。 この資本金は,政府及び政府以外の者が5対5の割合で出資しており,政府以外の出資者としては,電電公社,日本放送協会及び国際電電となっている。
|