昭和55年版 通信白書

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3 光ファイバケーブル伝送方式

 光ファイバケーブル伝送方式は,光ファイバを伝送媒体とするもので,直径0.1mm程度の光ファイバ1本で,同軸ケーブル1芯と同等あるいは,それ以上の容量の伝送ができること,低損失であるため中継距離を長くできること,光ファイバの直径が細いので大束ケーブルの製造が可能であること,漏話が無視できること,軽量で可とう性に優れていること,電力線,電気鉄道等からの外部誘導を受けないこと,限りある銅資源を使用する必要がないことなど,多くの特長を有しており,大容量基幹伝送路としてばかりでなく,加入者系にまで広範囲に適用できるものとして期待されている。このため,各方面で光ファイバ,光源である各種レーザ,発光ダイオード,受光器,中継器,変調器等の研究開発に加えて伝送方式の研究,実用化が行われている。
 電電公社では,損失が0.5dB/kmを下回る極低損失の多モードファイバ及び0.2dB/kmを下回る単一モードファイバの試作が行われたほか,ファイバの新しい融着接続技術の開発(平均損失0.1dB以下)及び光ファイバの連続製造法の発明並びに1.3μm帯のレーザ光による800Mb/sディジタル伝送実験の成功,1.5μm帯半導体レーザの室温1万時間連続発振等の成果を上げている。このような研究成果を踏まえ,53年度には近距離光ファイバケーブル伝送方式について都内(唐ケ崎―霞ケ関―大手町―蔵前―浜町)の約20kmの区間において,48芯の多モード光ファイバケーブルを主体として,商用に近い形で32Mb/s,100Mb/s及びカラーテレビジョン信号の伝送実験が行われ,目標値を十分満足する良好な品質の伝送回線が得られることが確認された。54年度からは上記伝送実験に6.3Mb/sを加え,より実用化に近い形での現場試験が川崎市内約18kmの区間で進められている。また,光ファイバケーブル伝送方式の長距離大容量伝送路への適用についても研究が行われている。
 陸上用の光ファイバケーブル伝送方式の開発と並行して,海底光ファイバケーブル伝送方式の開発も進められており,1.3μmの長波長帯の光源を用い,6.3〜100Mb/sのディジタル信号を約50kmにわたり無中継で伝送可能な方式の検討が行われている。
 この他,超広帯域特性を活用した波長多重伝送方式等の研究が進められており,明るい見通しが得られている。また,加入者系への適用についても検討が進められている。
 国際電電においては,将来の国際通信に使用する光ファイバ海底ケーブル方式に関する研究開発を進めている。現在目標としているシステムは,最大方式長1万km,伝送速度約280Mb/sで,開発期間は8年を予定している。この開発の一環として,システム諸元を想定し光海底中継器回路の基礎的な試作を行った。また,水深8,000mまでに使用できる光ファイバ海底ケーブルを試作して,房総半島南東約100kmの水深約5,000mの海域において敷設実験を実施し,伝送特性,機械的特性及び敷設上の問題点のは握を行った。
 また,光ファイバの低損失波長領域で動作する長波長帯半導体レーザと受光素子の開発を進めている。広帯域伝送に適した1.3μm帯半導体レーザの開発に引き続き,54年8月には,光ファイバの伝送損失が最小となる1.55μm帯の半導体レーザの室温連続発振に成功した。この1.55μm帯レーザは,7,000時間経過後も順調に動作を続けている。一方,受光素子については,波長1.7μmまで感度を有する新しい構造の低雑音,高感度アバランシ・ホトダイオードの開発を進めている。

 

 

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