昭和55年版 通信白書

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3 映像通信

 テレビ電話は,45年の万国博において電電公社により,1MHz方式の装置が用意され,迷子案内等に利用されて好評を博し,引き続き,49年には全国的規模を想定した1MHz方式及び4MHz方式のテレビ電話システムのモニターテストが東京―大阪間で行われた。これにより,技術的には十分実用に供し得る見通しが得られたが,現時点では,システムコストと効用のバランスから普及にはいたっていない。しかし,将来の画像通信サービスの基本を成すものと考えられるので,各種機能の充実,経済化等システム全般にわたる技術開発,検討が継続して進められている。
 テレビ会議方式は,遠隔地点で臨場感をもって会議が行えるものであり,交通の代替,省エネルギーに貢献するものとしてテレビ電話よりもその実用性は高いと考えられている。我が国では,電電公社により51年5月から世界で最初のカラーテレビ会議システムがモニターテストとして東京―大阪間で実用化されている。さらに,利用者の意向等を取り入れ,自社ビル内に容易に設置でき,かつ,伝送路を多端末で共用するなどシステム全体として経済化を図った新しいテレビ会議方式の検討も行われている。CCTV(Closed Circuit Television)の分野では,45年から電電公社の映像伝送サービスが開始されており,道路交通監視システム,外国語による有線テレビシステム等に用いられている。このサービスは,比較的短距離区間で使用される場合が多く,当初は,既設平衡対ケーブルによる市内区間のみとされていたが,51年には中遠距離のニーズに応じるため,C-60M同軸方式やマイクロ波方式による伝送路を用いて市外伝送が可能となった。現在,約430回線,総延べ回線距離3,100kmが利用されている。
 一方,一般のテレビ受像機とプッシュホン等を組み合わせた端末から画像センタにアクセスすれば,情報検索,学習等社会生活に必要な情報が,一般テレビ受像機を通して得られる会話形画像情報方式の開発が,先進諸国で進められている。我が国では,電話回線を利用して文字,図形等の簡易な情報が提供できる文字図形情報ネットワークシステム(キャプテンシステム)が54年12月から実験サービスを開始した。このシステムは,郵政省と電電公社が関係各方面の協力を得て準備を進め,実施にあたっては54年2月に設立された財団法人キャプテンシステム開発研究所が中心となり,東京23区内の約1,000端末の加入者を収容して実験を行っている。キャプテンシステムは,英国郵電公社の「プレステル」(54年3月商用開始)をはじめ,フランス,西独,カナダ等で開発が急がれているシステムと類似であるが,技術的にみてセンタ・端末間伝送方式については,プレステルではコード伝送方式として文字図形発生装置を各端末に置いているのに対し,本システムでは,漢字を使用することを考慮に入れ,端末コストの低減,図形情報の扱いの利便さに注目し,文字図形発生装置を画像センタに置き,パターン伝送方式をとっている点が特徴である。
 また,広帯域回線を利用して,静止画,動画,音声等の豊富な情報が提供できる画像応答システム(VRS)が,電電公社により52年から実験が進められている。
 なお,公衆電話網を利用した会話形情報方式の国際標準化については,1978年から「VIDEOTEX」と称してCCITTにおいて審議が開始されている。
 また,画像のディジタル高能率伝送技術についても研究が進められており,電電公社においては,4MHz帯域のカラーテレビジョン信号をディジタル信号に変換して高能率に伝送する複合差分符号化方式が実用化されている。国際電電においては,さきにインテルサット衛星を対象として,一つのトランスポンダでカラーテレビジョン信号2回線をディジタル伝送するための「フィールド間,フィールド内適応形直接予測符号化方式」による30Mb/s高能率符号化装置を開発したが,さらにこの装置を用いて54年4月にインテルサット太平洋衛星折返しによるカラーテレビジョンディジタル伝送実験を実施し,また,同年9月にはディジタル伝送画質と商用中のハーフトランスポンダFM回線の画質との比較実験を行った。この結果,この装置を用いることにより,現用FM回線と同じ回線効率(2回線/トランスポンダ)かつ同等以上の伝送品質でディジタル伝送が可能なことを確認した。

 

 

2 行政用ファクシミリ通信システム に戻る 第2部第7章第8節1 電話サービスの多様化技術 に進む