昭和56年版 通信白書

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2 今後の課題

 これまで,災害時における通信の役割,関係機関等における各種の対策及び災害対策を目的とした新しい通信システムの開発の状況を取り上げ,災害と通信のかかわりについて紹介してきた。
 我が国の通信の分野における災害対策は,過去の教訓を生かしながら,積極的に進められてきているが,災害時における通信の確保及び適切な情報伝達をより確実なものにするためには残されているいくつかの課題を解決しなければならない。
 まず第一に,通信設備及び通信網に対する災害対策を一層強化することである。通信の分野は今後とも著しい技術革新が見込まれるため,その成果を積極的に取り入れ,設備の安全性を高めるとともに,衛星通信の導入等新しい通信システムの開発を推進することが必要である。
 第二に,行政機関,防災関係機関等がそれぞれ独自に設置している自営の通信網の有機的結合による活用である。現在,これらの自営通信網は,それぞれが独立して機能しているため,相互の接続や代替ができず災害時の緊急を要する通信手段として必ずしも十分に効果を発揮し得ない面がある。郵政省はかねてから国土庁,建設省,消防庁等と協力し,災害時における総合的な無線システムの在り方を検討しているところであるが,今後とも技術的問題点,法的問題点,運用体制等について調査・検討を進めることが必要である。
 第三に,災害時における通信システムの的確な運用である。たとえ,設備的に十分な整備がなされたとしても,それを災害時に的確に運用できる体制が作られていなければ役に立たないだけでなく,混乱を招くおそれがある。従って,設備面の整備だけでなく,通信システムの利用方法の訓練,習熟あるいは平常勤務以外の時間帯に災害が生じた場合の体制等運用面についての対策をこれまで以上に強化することが必要である。
 第四に,情報収集体制の充実である。現在,行政機関,防災関係機関等から住民に対して行われる指示・広報等のための通信システムについてはかなり整備が進んでいるものの,被害状況,避難状況あるいは住民の要望等を収集するための通信システム,あるいは体制については十分ではないといえる。今後はこれらの情報の収集・伝達のシステムについて対策を進めていくことが必要である。
 既に述べてきたように通信は今日の国民生活に不可欠な存在となっており,災害時においても極めて重要な役割を果している。今後,残されたこれらの課題を解決していくことにより,通信は災害時においても,迅速かつ的確な情報伝達という本来の役割を有効に果たすことが可能となろう。

 

第1部第2章第4節1 災害対策を目的とした新しい通信システムの開発 に戻る 第2部第1章第1節 概況 に進む