昭和56年版 通信白書

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第2節 分野別利用状況

1 警 察 用

(1) 現 状
 ア.警察事務と通信
 複雑,多様化かつ広域化する警察事案を迅速,円滑に処理するための警察活動において指揮,命令,報告等の情報をいつどこからでも即時に伝達できる体制の確立が不可欠の条件である。警察通信回線は,このような目的のために全国的規模において整備されてきているが,その主体となっているのは自営の多重無線回線で構成される幹線系,VHF帯及びUHF帯で構成される移動通信系並びに都道府県内警察,機関相互間を結ぶ専用回線(公社線)である。
 イ.通信施設の概要
 (ア)国内通信
 第1部第2章でも触れたとおり,現在全国の警察機関相互間を結ぶ警察事務用電話回線網は,警察庁-管区警察局ー都道府県本部(北海道における方面本部を含む。)間の幹線系マイクロウェーブ回線及び都道府県本部-警察署-派出所・駐在所間の専用回線(公社線)により構成され,警察庁,管区警察局,都道府県本部及び警察署の交換機を通じて全国の派出所・駐在所の電話機にいたるまで相互に結ばれている。これら回線は,事務用電話のほか,ファクシミリ伝送,データ伝送等にも用いられ,指名手配や犯罪手口等の照会業務及び各種統計業務等に利用されている。
 マイクロウェーブ回線は,幹線系のほか都道府県本部-拠点警察署間についても整備を計画し,新東京国際空港署等5ルートを有している。
 移動通信系は,110番への急訴によって事件現場へ急行するパトロールカー通信を主体とし,バス型車両にとう載されて事件現場の前進指揮所となる多重無線電話,幹部指揮用のプッシュボタン式自動車無線電話,警察官が使用する携帯用の各種無線電話,受令機,ヘリコプターや舟艇にとう載する無線機等多くの種類の無線機が第一線の警察活動に広く利用され,重要な役割を果たしている。
 また,無線設備のうち異色のものとしては,ヘリコプター又は大型車両にとう載される無線テレビジョン,無線方式の携帯テレビカメラ(ウォーキールッキー),車両の速度測定用のレーダスピードメータ,パトロールカーの現在位置とその活動状況を自動的に掌握できる自動動態表示システムがある。
 (イ)国際通信
 各国刑事警察の相互協力を目的として設立された国際刑事警察機構(ICPO)においては,我が国も重要な役割を果たしており,警察庁では国際間の犯罪情報の交換を迅速に行うため,この通信網に加入し,東南アジアの地域中央局として,パリ総局をはじめ同機構に加入している東南アジア地域の各局と短波通信を行っている。
 最近の国際犯罪の多発に伴い,この通信網を通ずる電報量は,逐年増加してきているため,55年度はパリ回線をテレタイプ化して通信の飛躍的な迅速・確実化を実現した。
(2)動 向
 ア.新技術の導入
 警察活動の形態は,多様化,複雑化する社会構造とその犯罪態様に対応するため,常に新しい技術の導入を要求されているが,これに対処すべく新しいエレクトロニクス技術の研究開発,導入を行っている。
 (ア)新通信指令システム
 110番通報を受け付けたとき,受付日時,発信電話局,通報内容の手書情報等パトロールカーへの指令に必要な各種の情報をコンピュータを介して自動的に無線指令台のCRTに表示するシステム,現場周辺の地図を自動的に表示する地図現示装置等を55年度導入した。
 (イ)車載データ画像共用装置
 移動無線において,1台でデータ及びファクシミリを受信できる車載装置を研究開発中である。
 (ウ)周波数拡散方式による無線装置
 犯罪捜査を円滑に行い,個人の人権を守る上において,警察無線の盗聴を防止するための対策として,周波数拡散方式(SSRA)等の無線装置を研究開発中である。
 (エ)衛星通信
 衛星を利用する通信システムについては,55年度から現在打ち上げられている実験用中容量静止通信衛星CS(「さくら」)を利用して運用実験を行っている。
 (オ)路側通信システム
 新しい交通情報提供システムとして,電波による情報提供設備を道路沿いの必要箇所に設置し,現用のカーラジオを通じて,慢性的な交通渋滞多発地区等の特定区間を走行する車両のドライバーに即時性のある交通情報を直接に提供する路側通信システムがあり,このシステムについての技術的条件に関し調査及び実験を行い,実用化に向けての最適システムについて,郵政省,警察庁,建設省等関係機関で検討を進めている。
 このため,警察庁では56年度このシステムについて所要の実験を行う予定である。
 イ.警察事務用電話網の整備
 警察事務用電話は,全国の警察機関の間を結ぶ専用の通信システムであり,警察活動の円滑な運営を支える重要な情報連絡手段である。
 このため,全国自動即時化の推進,電話交換機の機能の高度化,電話回線網の増強等に努めている。

 

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