昭和56年版 通信白書

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第7章 技術及びシステムの研究開発

第1節 概  況

 近年,社会,経済の発展と国民生活の向上に伴い,社会活動はますます活発化と広域化の一途をたどっている。このような状況の下では,各方面における情報の円滑な流通の確保を図ることが,いっそう重要となってきており,このため,情報の伝達,処理の重要な担い手である電気通信に対する利用ニーズの質的な多様化と量的な増大の飛躍的な進展をきたし,この結果,電気通信に対するいっそうの高信頼化と高能率が要求されている。
 これらの要請にこたえるため,電気通信に関する各種の技術及びシステムの研究開発が広範な分野にわたって行われており,我が国においては,近年その進歩発展は目覚ましく,今や世界のトップレベルに肩を並べている。
 まず,電気通信を支える基礎分野としては,固体素子の開発を中心とした電子デバイス技術がある。この分野における大きな開発目標の一つに超大規模集積回路(超LSI)があり,その実現はコンピュータ等の情報処理機器の飛躍的な小型高性能化を実現するのみならず,新しい情報処理システムのニーズにこたえる大きな可能性を有するものである。また,レーザ技術で代表されるオプトエレクトロニクスの発達に伴い,伝送線路としてガラスを素材とする低損失,広帯域特性を有する小型軽量で,かつ,電磁誘導がないなどの利点を持つ光ファイバケーブル及び光通信システム構成に必要な各種の光デバイスの研究開発が急速に進められ,実用化時代の第一歩を踏み出している。
 同軸ケーブル等の有線系とともに,電気通信のメディアとして電波を用いた通信系がある。電波は,放送システムにみられるように,多量の情報を広範囲にしかも安価に伝達できることのほか,移動通信システムや宇宙通信システムに見られるように有線による接続ができない場合でも,空間を媒体として接続できる等の特徴があり,現在では,この特徴を生かした種々のシステムが発展普及しており,さらに,多様なニーズに対応すべく新しい電波利用システムの研究開発が進められている。
 一方,電波利用の増大に伴って使用可能な周波数帯のひっ迫が懸念されることから,現在未利用周波数帯として,大容量伝送の可能な準ミリ波帯以上の高い周波数帯の開発や,さらに,光領域を使用する光通信システムの実用化のための研究開発が進められている。また,現在既に使用されている周波数帯における電波の利用効率を高めるための新通信方式の開発を初めとし狭帯域化及び共用化等の技術開発も進められている。
 次に,広汎な分野の技術的集約の上に立つシステムの一つである宇宙通信の分野では,今後のニーズの多様化と増大に対処するため,実験用の中容量通信衛星,中型放送衛星及び気象衛星等の静止衛星,また,周回衛星として電離層観測衛星及び各種科学衛星が打ち上げられ,それぞれの目的のために研究開発が進められている。
 放送の分野においては,FM及びテレビジョン放送における多重化の研究開発が進められており,特にテレビジョン放送においては音声多重放送の実用化試験が行われているほか,文字情報,静止画及びファクシミリ等各種の多重放送について実用化のための研究が進められている。
 その他,コンピュータの発達と多様化,増大する情報の効率的な伝送に対する社会需要等から,大量,高速情報伝送システムの開発について,伝送回線,交換技術,情報処理装置及び入出力端末機器の研究が行われ,その成果は逐次実用に供されている。
 本章では,このような電気通信に関する技術及びシステムの研究開発について,我が国の関係研究機関等において進められている主なものを以下に述べることとする。
 これらの研究開発を行っている我が国の代表的な機関としては,次のものがある。
 郵政省の附属機関として電波研究所があり,その規模としては,研究者260名(昭和55年度末現在,以下同じ),55年度予算は歳出約55億4千万円である。
 電電公社には研究開発本部のほか,武蔵野,横須賀,茨城の各研究所があり,研究者総数2,198名,55年度予算は約732億円となっている。NHKには総合技術研究所及び放送科学基礎研究所があり,両所合せて研究者354名,55年度予算は43億1千万円である。国際電電研究所は研究者163名,55年度研究費約44億円である。
 また,研究機関には属さないが,郵政大臣の諮問機関として電波技術審議会があり,24名の委員及び191名の専門委員によって電波の規律に必要な技術に関する事項について調査審議が行われている。
 

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