昭和57年版 通信白書

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2 司法省・AT&T反トラスト訴訟の和解

 米国司法省は,1974年11月,AT&T,ウェスタン・エレクトリック社(WE)及びベル電話研究所を反トラスト法違反のかどでワシントンD.C.連邦地方裁判所に提訴した。司法省は,この訴訟でベル・システムからの”WEの分離,AT&T長距離回線部門とベル系電話運用会社(BOC′s)の分離及びベル電話研究所の分離を求めた。その後,司法省・AT&T間で激しい法廷闘争が行われ,1981年1月から公判が開始されるとともに,議会での通信法改正の動きや政府からの訴訟取下げ要求等から,両者間で和解の動きがみられたが,上院の81年通信法案が可決された後,司法省は和解の意向を撤回した。
 しかし,司法省は,1982年1月8田1956年同意審決を修正するというかたちでAT&Tと合意に達し,1974年のAT&T反トラスト訴訟の取下げを発表した。これに伴い両当事者は,ワシントンD.C.連邦地方裁判所に本訴訟の取下げを要請し,同裁判所はこの和解が公共の利益に合致するかについて広くコメントを求め審査した結果,1982年8月,和解内容を一部修正することを条件として,ごれを基本的に受諾した。司法省とAT&Tは,この修正条件を受け入れ,8年越しの反トラスト訴訟は終結し,これに伴い1956年同意審決は無効となり,新同意審決が発効し,AT&Tが高度通信サービスに参入する道が開かれることとなった。新同意審決の主な内容(審決自体に明示されていないものを含む。)は,次のとおりである。
 [1] AT&Tは,22のBOC′sをAT&Tから分離する。
 [2] AT&Tは,長距離回線部門,製造部門のWE及び研究開発部門のベル電話研究所を引き続き所有する。
 [3] AT&Tは,データ処理・通信分野への参入及び宅内機器の販売を許される。
 [4] BOC′sは,AT&Tの長距離回線部門だけでなく,すべての長距離通信事業者に対し同じ条件でBOC′sの回線を利用させる。
 [5] BOC′sは,電話機及び事務所用交換台の提供等,収益の見込まれる市場に参入できる。
 [6] BOC′sは,多大な広告収入が得られる職業別電話帳(イエロー・ページ)を発行できる。
 [7] AT&Tは,自社の伝送施設を用いニュース,生活情報,広告宣伝の収集,編集,配布等のエレクトロニック・パブリッシングの提供を今 後少なくとも7年間禁止される。
 [8] ベル・システムの組織再編成は,AT&Tと司法省によってのみ実施されるものではなく,BOC′sの財政的な基盤を確立させる意味からも分離する各段階で再吟味,承認が必要であり,裁判所が監督する。

 

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