昭和57年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

2 社会経済環境の変化と利用者ニーズの高度化・多様化

(1)価値観・欲求の多様化
 生活水準の向上,余暇の増大等社会経済環境の変化により,国民の価値観や欲求が多様化している。通信の分野においても,利用者の二-ズは,画一的な情報からより個別かつ詳細な情報を求める傾向が見られる。
 放送においては,テレビジョン多重放送として,音声多重放送,文字放送,静止画放送等放送形態の多様化に向けて技術開発が進み,また,質の面でも高精細度テレビジョン放送,雑音やひずみが少なく高品質の音楽が聴取できるPCM音声放送等の開発が行われている。さらに,利用者が必要な時に必要な情報を利用したいという欲求にこたえるものとして,リクエスト型の通信メディア,例えば,ビデオテックス〈キャプテンシステム)や双方向CATVが実用化に向けて研究開発されている。
(2)合理化・効率化の要請
 我が国においては,すでに生産ラインの合理化,優れた品質管理体制の構築,省資源・省エネルギー技術を確立するなどして,大幅な生産性の向上を実現してきた。さらに,今後の厳しい社会経済環境に対応するため、企業においては,データ通信の高度利用やファクシミリ,ワードブロセッサ,コンピュータ等の導入によるオフィスオートメーション(OA)化,さらに,これらの各種OA機器間を有機的に結合したOAネットワークにより,事務部門の合理化・効率化が進められている。
 これに伴い,データ通信やファクシミリ通信等に対する二-ズが著しく増加している。
(3)生活空間の拡大
 余暇時間の増大・週休2日制の浸透並びに乗用車の目覚ましい普及等交通機関の発達は,生活空間の大幅な拡大をもたらし,これに伴い移動通信に対する関心が高まりつつある。
 移動通信としては,従来,警察・報道・タクシー無線等業務用通信が主体であったが,近年,ポケットベルや列車公衆電話の拡大,普及,さらに54年に自動車電話サービスが開始されるなど国民のニーズにこたえたサービスが提供されている。
(4) セキュリティ
 ニーズの高まり近年,健康や防犯・防災といった安全に対する関心が高まってきている。これを通信の面でみれば,医療の分野においては,交通事故や急病の発生に対する救急医療情報システムが全国的に普及してきており,今後はさらに,医療機関の乏しい地区において必要な医療を確保するため新しいシステムの形成が望まれている。
 防犯・防災といった安全の確保のため,産栗用としてテレコントロ-ルやテ.レチェッキングを行うシステムは,すでに一般的なものになっている。さらに,一般家庭においても,家庭と警備会社・消防署等とを有機的に結合したセキュリティ情報システムの普及が進みつつある。
(5)国際化の進展
 近年における国際間の政治・経済・文化の交流の進展,企業活動の国際化等により,海外との情報連絡あるいは各種情報を入手分析し,迅速な対応を講じる必要性が一層増加している。
 こ9ような国際化の進展に伴い,国際通信の需要の伸びは著しいものがある。また,従来,企業における国際通信の利用は,電話・電報・テレックスが中心であったが,近年においては,ファクシミリやデータ伝送のため,電話網の利用,さらに専用回線を利用した企業独自のネットワークが構築されるなど多様化が進んでいる。

 

第1部第2章第1節1 基幹通信サービスの普及 に戻る 3 通信関連技術の進歩 に進む