昭和57年版 通信白書

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3 データ通信

(1)我が国の動き
 ア.データ通信の高度化・多様化
 電気通信回線に電子計算機等を接続してデータの伝送と処理を一体的に行うデータ通信は,我が国では39年国鉄の座席予約システム「みどりの窓口」に導入されて以来,46年の公衆電気通信法(以下「公衆法」という。)改正,さらに通信技術・エレクトロニクス技術の進展及び社会経済活動・国民生活の向上に伴い,飛躍的に発展してきている。
 データ通信は,主に製造業等の生産・販売・在庫管理や銀行等金融機関の預金・為替業務に利用され発展してきたが,最近では公害監視,交通制御,救急医療等の公共的分野においても利用されており,利用分野の多様化が進んでいる。また,データ通信システムの利用形態も集中処理から分散処理システムヘ,さらにシステムを相互に接続したネットワーク化へと発展していく傾向がみられる。
 我が国のデータ通信の発展状況を国内のシステム数(電電公社システム数及び自営システム数)及び回線数(特定通信回線数及び公衆通信回線数)でみると,47年度末にはシステム数468システム,回線数1万8,227回線であったが,56年度末には7,171システム,15万9,449回線に達している(第1-2-11図及び第1-2-12図参照)。
 現在.電電公社が提供しているデータ通信サービスには,回線サービスとして特定通信回線,公衆通信回線(電信型,電話型),デイジタル・データ交換網サービス(DDX:回線交換サービス,パケット交換サービス)があり,設備サービスとして公衆型の販売在庫管理システムサービス(DRESS),科学技術計算システムサービス(DEMOS-E)とオーダメイド型の各種システムサービス(全国銀行為替システム,運輸省自動車登録検査システム,航空貨物通関情報システム等)がある。また,民間企業においても,販売・在庫管理,証券取引,預金・為替業務等の多彩なサービスを提供しており,郵政省の行った「情報通信業実態調査」によれば,56年末現在この種のサービスを提供しているとして同調査に回答な寄せた企業は132社で,216システムとなっている(第1-2-13表参照)。
 イ.国際化の進展
 国際電電が従来から提供しているデータ通信サービスには,回線サービスとして特定通信回線,公衆通信回線(電信型),設備サービスとしてオートメックスサービス,オーダメイド型の個別システムサービスがある。しかし,近年におけるコンピュータの普及,社会の情報化及び国際化の進展に伴い,国際間のデータ通信の利用も高度化・多様化し,量的にも著しい増加をみせている。
 国際電電は,55年9月から国際コンピュータ・アクセスサービス(ICAS)の提供を開始した。同サービスは,我が国の利用者が外国冫こあるホスト・コンビュータ(データベース等)にオンラインでアクセスし、化学・薬品・農業・経済情報等の情報検索等を行うネットワークサービスである(第1-2-14図参照)。
 さらに,57年4月からはパケット交換方式によりコンピュータ相互間,コンピュータと端末間,端末相互間のデータ伝送等を行う公衆データ網サービスとして,国際公衆データ伝送サービス(VENUS-P)の提供を開始し,取扱対地は57年9月現在,米国等7か国となっている。同サービスは,57年9月,電電公社のパケット交換サービスと相互接続され,利用の一層の拡大が見込まれている。
 ウ.制度の整備
 データ通信の利用制度は,46年の公衆法改正により創設された。以来,現在に至るまで,この制度の下でデータ通信は著しい発展をみせた。しかし,それから10年が経過し,データ通信システムは,その利用動向の変化が著しいため,利用制限を実態に即して大幅に緩和してほしいとの要望が各方面から出されるようになった。
 郵政省においても,電気通信の重要性にかんがみ,80年代における電気通信政策の基本的方向と重要課題への取組み方を検討すべく,郵政大臣の私的懇談会である「電気通信政策懇談会」を設けた。郵政省は,56年8月の同懇談会の結論を受け,また,各界からの要望も踏まえデータ通信の一層の発展を図るため,次の法案を作成,準備した。[1] 民間が新しい高度通信サービス(付加価値データ伝送業務)を行えるようにするための所要の措置を定める付加価値データ伝送業務に関する法律案[2] 共同使用の範囲の拡大等,データ処理分野の自由化を図るための公衆電気通信法の一部を改正する法律案その後,政府部内の調整の結果,付加価値データ伝送業務に関する法律案については継続して検討することとし,一方,公衆法の一部を改正する法律案については,「行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律案」(いわゆる行革一括法案)の一部として第96回通常国会へ提出し,57年7月9日,可決成立,10月23日から施行されることとなった。その主な内容は,第1-2-15表のとおりである。この改正によりデータ通信回線の利用は,データ処理については原則として自由となり,その利用分野,利用形態はますます高度化・多様化するものと期待される。
(2)諸外国の動き
 欧米諸国におけるデータ通信サービスも,近年の電気通信技術の著しい進歩とともにますます高度化・多様化している。
 米国では,GTE/テレネット社,タイムネット社等の付加価値通信事業者(VAC)及びサテライト・ビジネス・システムズ社(SBS)等の国内衛星通信事業者がデータ伝送等のサービスを提供している。AT&Tは,FCCの第2次コンピュータ調査の最終決定により,子会社を通じてデータ通信等の高度通信サービスに参入することが認められたことから,1982年6月にアメリカン・ベル会社を設立した。同社は,1984年春ごろからニューヨーク,ワシントン,シカゴ等17都市でACS(AdvancedCommunicationsService)を再設計した公衆パケット交換網サービスAIS/Net1000(Advanced Information Systems/Net1000)の提供を計画している。SBSは,衛星を介して直接利用者間を結び,データ,画像,音声等の伝送を行う統合ディジタル網サービスCNS-A(Communications Network Service-A)を1981年3月から米国内で提供している。その後,SBSは,同サービスをカナダまで拡張する認可をFCCから得たが,インテルサット協定及びカナダ側の規制によりサービス開始に至っていない。また,SBSは,英国電気通信公社(BT)と米英間でディジタル網サービスを共同提供することに合意し,FCCに対し国際通信事業者として同サービス提供の認可申請を行っている。このほか,GTE/テレネット社及びタイムネット社がFCCに認可申請していた米欧間パケット交換の公衆データ網サービスは,それぞれ1982年3月と4月に認可され,タイムネット社については3年以内に外国通信事業体と運用協定を締結することが認可条件となっている。
 英国では,1981年7月,英国電気通信公社法(BT法)が成立したことにより,民間企業による付加価値通信サービスの提供が可能となった。産業省は,1982年2月,ケーブル・アンド・ワイヤレス社(C&W),ブリティシュ・ペトロリアム社,パークレー銀行のコンソーシャム(共同企業体)から申請のあった通信網建設(マーキュリー計画)を条件付きで認可した。同計画では,当初ディジタル専用回線サービスをロンドン市内の企業に提供し,その後主要都市まで拡張する予定になっている。一方,BTはデータ通信の需要にこたえ,1981年8月からパケット交換の公衆データ網サービスSwitchStreamの提供を開始している。
 フランスでは,1978年12月からパケット交換による公衆データ網サービスTRANSPACが開始され,1981年10月に西独の公衆データ網DATEX-Pと接続されている。
 西独では,1975年に回線交換の公衆データ網サービスDATEX-Lが,さらに1981年8月からパケット交換による公衆データ網サービスDATEX-Pが開始された。DATEX-Lは,1982年4月にスウェーデンの公衆データ網と接続され,将来は他の欧米諸国の公衆データ網とも接続される予定である。
 欧州共同体(EC)諸国間のパケット交換サービスのEURONETは,1980年2月にサービスが開始され,その後スイスやスウェーデンにも拡張されている。また,北欧4か国(デンマーク,フィンランド,ノールウェースウェーデン)の回線交換による北欧公衆データ網(NPDN)は,1981年10月にすべての国で商用サービスが開始された。
 このほか,カナダでは,トランス・カナダ・テレホン・システム社(TCTS)が1977年からパケット交換の公衆データ網サービスDATAPACを開始し,1982年1月からは西欧諸国の公衆データ網と接続されている。また,カナディアン・ナショナル/カナディアン・パシフィック・テレコミュニケーションズ社(CNCP)は,1978年から回線交換及びパケット交換による公衆データ網サービスINFOSWITCHを提供している。
 オーストラリアのテレコム・オーストラリアは,1982年末までにパケット交換サービスAUSTPACの提供を計画している。
(3)今後の取組
 データ通信利用の高度化・多様化に伴い,データ通信が社会経済活動及び国民生活に果たす役割は,極めて大きいものとなっている。データ通信は,企業においては通信回線とワードプロセッサ,ファクシミリ,コンビュータとを接続したオフィス・オートメーション(OA)の導入等事務部門の省力化・合理化,テレビ会議による企業活動の円滑化,家庭においてはホームショッピングやテレコントロールによる家事労働の省力化,自動警報システムによるセキュリティの確保等さまざまな二-ズにこたえる通信メディアとして,一層の発展が予想される。このようにデータ通信に対する社会及び国民の期待には大きいものがあるが,今後更にデータ通信を発展させるためには,解決すべきいくつかの課題がある。
 第1に,付加価値通信サービス部門への民間企業の参入である。コンピュータを交換機として,異なる企業のデータ通信システムの結合やコンビュータの蓄積・編集・同報機能を活用した文書伝送(メール・サービス)等を提供する付加価値通信サービスは,企業間システムの効率的な結合が可能となるため,その出現が強く求められるようになっている。
 同サービスへのニーズは,多様かつ変動的であることが予想され,これに迅速,適切に対応するためには,民間企業の活力,創意工夫を生かす必要がある。これらの状況を考慮し,民間企業の付加価値通信サービス部門への参入を認める制度の整備は,我が国のデータ通信政策上の重要な課題となっている。この参入を認めるに当たっては,そのサービスの公益的側面等の視点から,各種の配慮が必要であるため,これらに関する法制度面での措置について,今後とも継続して検討することとしている。
 第2に,データ通信利用の高度化・多様化に不可欠なネットワーク技術の高度化である。データ通信は,電気通信技術の進歩や利用形態の多様化に伴い,異機種コンピュータ間,異システム間の通信に対するニーズが出てきている。そこで通信方式の標準化が求められており,データ通信システムプログラムの標準プートコル(CCNP)に対する適合性いかんを検証するフロトコル検証システムの開発,複数のシステムに適用可能なアクセス言語(アクセス・コマンド)の開発調査及びデータベースの有効利用を可能とするため,複数のデータベースをネットワーク化し,同一端末機から利用可能とするデータベース利用技術の開発調査を行っている。
 第3に,データ通信システムの安全,信頼性の確保である。近年,データ通信が社会,国民生活の上で重要な役割を担うこととなり,災害,障害,犯罪等によりデータ通信システムが機能停止に陥ると,広く社会経済活動全般に大きな混乱をもたらすことが予想される。このような情報化社会のぜい弱性に対処するためには,電気通信システムの信頼性向上や各種安全対策を検討する必要がある。また,データに対する不当なアクセスやデータ破壊等に対するデータ保護対策として,郵政省では「ミックス方式」による暗号化手法を57年3月に開発した。
 第4に,データ通信利用の高度化・多様化に伴う社会問題としてブライバシー保護の確保である。データ通信の普及,発展に伴い,個人データの収集,利用がプライバシーを侵害するとの危ぐが高まりつつあり,また,OECDのプライバシー保護に関するガイドライン勧告の採択ともあいまって,プライバシー保護は重要な課題となっている。このため,通信の秘密確保がブライバシー保護対策上重要な役割を果たすとの観点から,通信の秘密保護法制について検討を進めている。
 第5に,国際間データ流通問題の対応である。近年,国際間データ流通の増大を通じて情報の不均衡の是正等,経済・社会・文化に幅広くかかわる問題が生じている。特に,米国による貿易上の障害除去の要求ぱ,情報サービス分野にまで及び,国際間データ流通をめぐる動きは活発である。このため,我が国としても新たな対応策が求められており,現在国際間データ流通に関する調査,分析を行っている。

第1-2-11図 国内システム数の推移

第1-2-12図 国内回線数の推移

第1-2-13表 我が国の情報通信サービスの概況

第1-2-14図 国際コンピュータ・アクセスサービスの概念図(対米国の例)

第1-2-15表 データ通信回線利用制度整備の概要(1)

第1-2-15表 データ通信回線利用制度整備の概要(2)

 

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