昭和57年版 通信白書

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3 海上保安用

 海上における船舶等の安全の確保,海難の救助,治安の維持及び汚染の防止等を任務とする海上保安庁は,陸上通信所の海岸局,巡視船艇の船舶局,航空局,航空機局等による移動通信系無線局をはじめ,船舶等の航行援助のための無線局,全国各管区機関を結ぶ固定通信系無線局等を開設して,我が国周辺海域の海上保安業務を行っている。56年度末現在,これらの無線局数は,4,855局に達している。
(1)海難救助に関する通信
 海上保安庁は,海難救助に関する通信を効果的に行うため,全国に設置した海岸局及び行動中の巡視船艇の船舶局において,中波帯,中短波帯等の遭難周波数を聴守しており,遭難信号等が受信されたときは,直ちに救難用無線方位測定装置を設置した海岸局と行動中の船舶局により方位を測定するとともに,同庁の全通信系を挙げて海難救助に当たる体制がとられている。
 また,米国が実施しているアンバー・システム(船舶の自動相互救助制度-海難救助機関において,常に特定の船舶の動静を把握し,海難の際の救助に役立てる制度)に関する通信の釧路,塩釜,横浜等8海岸局における中継事務の実施,さらに,54年3月から設けられた沿岸無線電話(自動接続方式のものに限る。)を利用する「海上保安通報用電話」の制度は,海難等の航行の安全に有効に利用されている。
(2)航行の安全等に関する通信
 海上保安庁は,航行船舶等の安全を確保するため,緊急を要する事項や安全航行上必要な事項等を航行警報として送信している。また,我が国が「世界航行警報業務」における第11区域(太平洋西部及び東南アジア海域)の調整国となっているところから,同区域内及び隣接する区域の一部を航行する船舶の安全を確保するための航行警報(NAVAREA警報)の送信を55年4月から実施している。
 また,船舶交通の安全,海難の未然防止のため,航行警報や気象庁が発表する海上の気象・海象等の予報及び警報を全国の主要海岸局等から船舶向けに送信している。特に,船舶交通がふくそうする東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海の海域においては,海上交通情報を提供するとともに,海上交通安全法に基づく巨大船等の航行管制を行うための通信を行っている。
 さらに,港則法等に基づき,全国48の特定港において,港内における船舶交通の安全及び港内の整とん,検疫等に関する通信も行っている。
(3)航行援助用通信
 海上保安庁は,我が国周辺海域を航行する船舶の安全確保と運航能率の向上を図るために,地理的条件や船舶交通の状況tこ応じ,電波を利用した各種の航路標識施設を設置している。これらの無線局の中には,局地気象の情報を船舶気象通報として提供しているものもあり,船舶の航行に有効に利用されている。
 また,レーダの映像をコンビュータにより一元的に処理するためのシステムが実用化され,現在,東京湾内の浦賀水道航路,中ノ瀬航路及びその周辺海域において,レーダ監視による情報の提供及び航行管制を行っている。
 さらに,京浜港では,レーダとカメラを用いて港内出入船舶の動向を把握して,船舶に対する情報の提供及び航行管制を実施している。
 これらの航行援助用無線局の56年度末現在の状況は,第2-3-16表のとおりである。
(4)今後の動向
 海上保安庁は,海難救助に関する通信をはじめとする海上保安通信体制の充実強化及び施設の近代化を図るため,陸上通信所(海岸局等)の統合再編成を進めており,56年度までに瀬戸内海東部地区,同西部地区,北九州地区,東海地区,関東地区及び東北地区の整備を完了し,56年度から北海道西部地区の再編整備を行っている。
 また,「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」の発効(55.5.25)に伴い,国際遭難周波数2,182kHzの位置付けが高められたため,2,182kHzの方位測定を行うための無線施設の整備を更に進めていく予定である。
 さらに,「1979年の海上捜索救難に関する国際条約(SAR条約)」が採択され,これを受けて「将来の世界的な海上遭難安全制度」について,世界的に検討が進められており,同庁としても通信体制の整備等必要な対応が求められている。
 また,航行援助用無線局の整備については,56年度からは北陸デッカ・チェーンの整備を開始するとともに,現在,東京湾で実施しているレーダ監視による情報の提供及び航行管制を瀬戸内海においても行うため,瀬戸内海海上交通情報機構に関連した無線施設の整備に着手している。その他,レーマークビーコン,レーダ・ビーコンの増設及び男鹿地区船舶気象通報の整備が予定されているなど,航行援助施設の一層の充実が見込まれている。

第2-3-16表 航行援助用無線局施設状況

 

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