昭和57年版 通信白書

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7 海上運送事業用

(1)外航海運用通信
 外航船舶は,一般に,中波電信,中短波電話,短波電信,短波電話の周波数を使用した大電力の無線設備,世界の主要港湾において使用さ九ているVHF無線電話(国際VHF)設備のほか,レーダ,無線方位測定機,ロラン受信機等各種の無線設備を備え,航行の安全及び貨物の輸送・手配等に関する通信を内外の海岸局と行うとともに,船舶向けに送信されている気象,る事業運営や乗組員のための通信は,主として短波帯による公衆通信によって行われてぎているが,短波帯による通信は電離層の変動による影響を大きく受けて不安定であるため,その円滑な疎通を図るとともに,近年の通信量の増大に対処するため,最近海事衛星通信を利用するための宇宙通信システム用の無線設備を設置する船舶が増加している。
 1982年2月には,それまで海事衛星通信の先駆的役割を果したマリサット・システムに代わり,国際海事衛星機構(インマルサット)条約に基づくイシマルサット・システムが運用を開始し,ほぼ,全世界の海域をサービスエリアとして,電話,テレックス及びデーテル(高速度テレックスに画像通信機能を加えたもの)の公衆通信サービスを提供しており,短波通信ではできなかった「いつでも,どこでも」高品質の通信が確保されるようになった。
 我が国においては,マリサット・システムによるサービスが開始されて以来,このシステムを利用した船舶が増加しており,56年度末現在,134局が開設されている。インマルサット・システムへの移行を契機に一層の増加が見込まれるところである。
 また,現在,国際海事機関(IMO)においては,移行時期の目途をおおむね1990年ぐこおいた,これら外航船舶を対象とする全世界的な海上遭難・安全制度(FGMDSS)について検討を重ねているが,この制度は,「1979年の海上捜索救難に関する国際条約(SAR条約)」に定める捜索救難業務を効率的に実施するものであり,今後のIMO等の検討状況によっては,将来,外航船舶に開設される無線局について,大幅な変革が予測されている。
(2) 内航海運用通信
 日本周辺海域を航行する内航船舶は,電電公社が提供する沿岸無線電話(公衆通信)設備を利用して事業運営や乗組員のための通信が行われているほか,法令により無線設備の設置が強制されるいわゆる義務船舶局では,中短波無線電話やVHF無線電話等が整備され,航行の安全のための通信が行われている。
 内航の海運事業者等の中には,事業の必要上,あるいは,沿岸無線電話では通信が困難な海域で通信を行う必要があることから,無線利用組合等の団体をつくり中短波無線電話の海岸局(全国8か所)を開設したり,また,海運事業を能率的に行うことを目的として専用の海岸局を開設し,船舶との通信を行っているものがある。
 なお,長距離カーフェリーについても,その航行の安全を図るために無線電信を設置している。
 以上のほか,海上でのスポーツ,レジャー人口の増加に伴い遊漁船やヨット等に船舶局を開設するものが増えており,スポーツ,レジャー用海岸局との間で,安全等に関する通信が行われている。
 その他小型内航船舶においては,沿岸無線電話のほか,無線航行移動局及び遭難自動通報局を開設して航行の安全を確保しているものもある。

 

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