昭和57年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

15 アマチュア業務用

 アマチュア業務用の無線局は,「金銭上の利益のためでなく,専ら個人的な無線技術の興味によって,自己訓練,通信及び技術的研究の業務」を行うものであり,世界的に共通の周波数帯を使用して,国内はもとより諸外国のアマチュア無線局との交信を通じて,通信技術の研究あるいは国際親善に大きな役割を果たしている。
 我が国でアマチュア局が最初に免許ざれたのは昭和2年であったが,太平洋戦争中に一時期中断の後,戦後27年に再開され今田こ至っている。アマチュア局の局数は,戦前は300局程度であったが,33年に無線従事者資格制度,(電信級及び電話級アマチュア無線技士の資格の新設)の改正が,34年には,免許手続等の簡素化制度(社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)による保証認定制度)の導入が行われるとともに,戦後における電波科学知識の向上,無線技術の進歩,発展もあって,急速に増加し,56年度末には52万3,021局と世界一のアマチュア無線普及国となっているが,そのうち97%は,電信級及び電話級アマチュア無線技士であり,これらはJARLの保証認定制度を利用して開設する空中線電力10W以下のものである。
 また,利用周波数帯,通信の形態等について見ると,再開されてから30年代までは,主に自作の送受信機により,短波帯(3.5MHz帯-28MHz帯)の周波数を利用するものが中心であったが,40年代以降は,小型,高性能の無線機器が市販されるようになり,最近のマイカー時代を反映して,自動車に設置して運用するモービル・ハムが急増していることから,VHF帯(54MHz帯-144MHz帯),UHF帯(430MHz帯-2,300MHz帯)の周波数を利用するものが急速に増加している。さらに,SHF帯以上(5GHz帯以上)の周波数の利用研究も盛んに行われており,高度の技術を要する人工衛星を利用する通信(VHF帯,UHF帯),大電力(500W〉により月面反射を利用する通信(EME)(UHF帯),ラジオ・テレタイプ(RTTY),スロ-・スキャニング・テレビジョン(SSTV)等も行われている。
 56年度の動きについて見ると,第1に,第94回通常国会において電波法の一部が改正され,我が国の国民が,外国において同等の待遇を受けられること(相互主義)を条件に,我が国に在留する外国人に対しても,アマチュア局の免許を与えることができることとなった(電波法第5条の改正)。これにより,相手国との間で相互協定が結ばれることになれば,アマチュア無線の特質を生かした国際親善の一層の増進が図られるものと期待される。
 第2に,57年1月には,JARLを免許人とした430MHz帯及び1,200MHz帯の周波数を使用するアマチュア業務用レピーター局(自動中継局)の開設が認められることとなり,430MHz帯の周波数を使用するレピーター局が東京(JARL本部)に1局開設され,3月から運用が開始された。JARLでは,更に全国的に設置するよ.う計画している。このレピーター局が普及された場合は,ハンディ型の小出力の無線設備を使用するアマチュア局にとって交信範囲の拡大が図ら扛るなど新たな利用形態,通信技術の研究に役立つものと考えられる。
 また,1979年の世界無線通信主管庁会議(WARC’79)によりアマチュア業務用の新周波数帯の割当てが行われたことに伴い,新たに10MHz帯(10,100kHzから10,150kHzまで)の周波数帯が第1級及び第2級アマチュア無線技士(相当資格を含む。)の資格を有するアマチュア局に対して指定できることとなり,主に遠距離で安定した通信が諸外国との間で活発に行われることとなった。今後,更にEHF帯(47.1GHz帯,75.75GHz帯,143GHz帯,249GHz帯)の周波数の指定も予定されている。

 

14 自動車運送事業用 に戻る 16 簡易無線業務用 に進む