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1972年に打ち上げられたERTS(LANDSAT)の捕えた地球の鮮明で精密な写真から,人工衛星による地球の資源や環境の探査は予想以上に有効であり,その利用範囲の広さや応用の可能性の非常に大きいことが明らかになった。以後,LANDSATシリーズのデータが各国で実用化の軌道に乗りつつあり,また,我が国の海域及び陸域観測衛星シリーズをはじめカナダ,ヨーロッパ等で次々と独自のリモートセンシングを目的とした衛星が計画されている。 電波によるリモートセンシングは,従来主に用いられてきた可視赤外領域の光を利用するものと異なり,昼夜の別なく,また,天候に左右されることもなく観測が可能であり,常に同一の観測条件で精度よくデータを取得できる。電波,特にマイクロ波によるリモートセンシングは今後電波の利用の主要な分野の一つとなると予測される。したがって,電波の有効利用の観点から電波研究所において54年7月から衛星計測部を新設し各種のマイクロ波リモートセンシングに関する研究を行っている。 [1] 散乱計:雨域及びその降雨強度の観測を行う衛星搭載用雨域散乱計の開発を目的とし,航空機搭載用2周波(10GHz,34.5GHz)散乱計/放射計を53年度と54年度で製作し,56年度末までに約107時間の飛行実験を行った。また,衛星搭載用雨域散乱計の設計仕様の検討を行った。 本航空機搭載用散乱計/放射計を用いて海面散乱の実験(海面の風向・風速の測定)を行い,NASDAと共同実験も行った。 電波の散乱特性の基礎データ収集のため室内実験用FM-CWレーダを製作し,実験を開始する。 [2] 放射計:大気中の水蒸気の検出及びそれによる電波伝搬への影響の補正を目的として2周波(20.0〜23.8GHz,30.6〜32.1GHz:MOS-1用2周波放射計の周波数を含む)放射計を整備し観測に着手した。 [3] 合成開口レーダ:合成開口レーダは,飛しょう体の速度を利用して小さなアンテナで光学系センサに匹敵する高分解能の二次元影像を得るマイクロ波センサで,将来のリモートセンシングの主要機器として期待されている。 56年度は,合成開口レーダデータの高速ディジタル処理に不可欠な高速フーリエ演算装置等の装置の整備を進め,SEASATデータの画像作成ソフトの開発を行った。