昭和57年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

6 その他の国際機関

(1)アジア・太平洋電気通信共同体(APT)
 ア.概 要
 アジア・太平洋電気通信共同体(Asia-Pacific Telecommunity)は,アジア・太平洋地域における電気通信の開発を促進し地域電気通信網の整備拡充を主たる目的として,その設立憲章が第32回ESCAP(アジア・太平洋経済社会委員会)総会(1976年3月開催)において採択された。我が国は,APT共同体設立準備のため積極的に協力した後,1977年11月25日に同憲章の批准を終えた。同憲章は,APT本部所在国であるタイを含む7か国の批准書が寄託されて1979年2月に発効した。同年5月創立総会がバンコクで開催され,同年7月に事務局が発足し,APTの活動が開始された。APTは,国際電気通信条約(1973年マラガ=トレモリノス)第32条の規定に合致する地域的電気通信機関でもあり,加盟国(19か国),準加盟国(2か国)及び賛助加盟員(9社)から構成されている。
 イ.組 織
 APTの主要機関は,総会,管理委員会及び事務局であるが,このほかに総会又は管理委員会はAPT目的遂行のため必要と認める補助機関及び専門部会を設置することができる。
 総会は,APTの最高機関であり,すべての加盟国及び準加盟国で構成され,3年ごとに通常会期として,また,必要がある場合には臨時会期として会合する。
 管理委員会は,共同体のすべての加盟国及び準加盟国で構成され,総会が決定する方針及び原則を実施する機関である。
 事務局は,共同体の首席の管理職員である事務局長,管理委員会が必要と認める数の事務局次長(現在1名)及び管理委員会が必要と認める他の職員で構成される。我が国からは,創立以来引き続き事務局次長が派遣されるとともに2名の長期専門家が事務局に派遣されている。
 ウ.活 動
 APTは,アジア・太平洋地域の電気通信網の整備,拡充,調整等を行うことを目的としている。このため第2回管理委員会の決定に基づきスタディ・グループが設けられている。このグループの第1グループ(SG<1>)では主として国際電気通信に関する事項が,第2グループ(SG<2>)は主として国内電気通信に関する事項が研究付託事項とされている。1981年10月5日から10日までに開催されたスタディ・グループ会合では,我が国から「伝送媒体の配分」(SG<1>),「ルーラル通信の研究を推進するための提案」(SG<2>),「マイクロウェーブ伝搬分析」(SG<2>)についての発表を行い参加国からの関心を集めた。
 また,第2回総会が,第5回管理委員会と併せて1981年11月3日から13日まで開催され,1982年から1984年までのAPTの目的を達成するための基本的な政策及びこれに伴う予算の上限等が決定された。
 なお,我が国は1981年度にAPTへ専門家5名を派遣するとともに,研修員1名を受け入れている。
 (2)国際連合アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)
 ESCAP(Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)
は,国連経済社会理事会(ECOSOC)の監督下にある地域経済委員会の一つで,1947年3月に設立された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の名称が変更され(1974年9月),現在に至っているものである。
 ESCAPの本部はバンコクにあり,地域内各国の経済・社会開発のための協力をはじめ,これに関する調査・研究・情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国39,域外国5の計44か国(うち準加盟国9か国)で我が国は1952年第8回総会で準加盟が認められ,次いで1954年に正式加盟が認められた。
 ESCAPには,総会の下部機構として,現在,9つの常設委員会があり,その一つである海運・運輸通信委員会の運輸・通信ウイングは隔年ごとに開催されることになっているが,そこでは,域内の電気通信及び郵便の開発に関する技術及び経済関係の諸問題の討議,勧告を行い,その実施状況の検討がなされている。
 また,ESCAPの総会及び諸会合が我が国において開催されてきており,1981年12月には,今後の域内諸国政府の情報システムを強化するために必要な方策及び各国の採るべき措置を検討するため「政府情報システム及びデータ処理に関する政府間会合」が東京で開催された。
 (3)国際海事機関(IMO)
 ア.概 要
 IMO(旧称,政府間海事協議機関(IMCO))は,海運に影響のあるすべての事項について,国際協力を促進することを目的として設立された国際連合の専門機関の一つである。海上交通の増大と高速化に伴い,船舶の航行,人命財産等の安全を確保するための重要な手段である無線通信の役割は,近年飛躍的に高まっており,IMOの通信分野における活動もとみに活発化している。
 これまでに,IMOの招集する国際会議において,無線通信に関係する「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」(以下「’74SOLAS条約」という。),「1977年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約」,「1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約」,「国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約」,「1979年の海上における捜索救難に関する国際条約」等の多くの条約が採択されている。
 また,海上における遭難・安全通信制度,船舶に備える無線設備の備付要件及びその技術基準等についても多くの決議が,IMOの総会で採択されている。
 なお,IMOは,1975年11月に採択された政府間海事協議機関(IMCO)条約の改正が,1982年5月22日に発効したことにより,その名称がIMCOからIMOに変更になった。
 イ.組  織
 IMOは,総会,理事会,海上安全委員会及び海洋環境保護委員会等の各種委員会及び機関が必要と認める補助機関並びに事務局で構成されており,無線通信に関する事項は,主として,海上安全委員会及びその補助機関である無線通信小委員会で審議されている。
 ウ.活 動
 (ア)’74SOLAS条約改正のための拡大海上安全委員会
 ’74SOLAS条約が採択された後の技術的発展を考慮し,海難事故の防止等安全の確保に万全を期すことを目的として,IMOがこれまでに作成してきた同条約の改正案を審議し採択するために,1981年11月11日,17日,18日,及び20日の4日間,英国のロンドンにおいて,拡大海上安全委員会が開催された。
 この会議で採択された無線通信関係の主な改正は次のとおりであり,これらの改正は1984年9月1日に発効する予定である。
 [1] 旅客船及び総トン数300トン以上の貨物船に対するVHF無線電話設備の備付強制
 [2] 無線電信局に対する2,182kHz周波数で送・受信可能な無線電話設備の備付強制
 [3] レーダの備付けを要する船舶の範囲の拡大
 (イ)第23回無線通信小委員会
 第23回無線通信小委員会は,1981年5月11日から15日までの5日間,英国のロンドンにおいて開催された。
 この会議においては,前会期に引き続き,今世紀末(1990年ころ)の実施を目途に,IMOで精力的に検討している将来の全世界的な海上遭難・安全制度(FGMDSS)に関する問題を重点的に審議したが,特段の進展は見られず,FGMDSSにおける船舶の無線設備の搭載要件及びFGMDSSとの関連で見直しが必要となる無線通信士の職務等について,たたき台を作成するにとどまった。
 また,’74SOLAS条約第<3>章(救命設備)の改正により備付けを要求されることとなる衛星用EPIRB及び双方向無線電話装置等の技術基準についても審議を行い,同条約第<4>章(無線電信及び無線電話)に含める改正案を作成した。
 このほか,無線電話警急信号の誤使用を防止するための措置についても検討を行い,’74SOLAS条約の関連規定の統一解釈案を作成した。
 (ウ)第24回無線通信小委員会
 第24回無線通信小委員会は,1982年3月15日から19日までの5日間,英国のロンドンにおいて開催された。
 この会議においては,前会期に引き続きFGMDSSに関する残された問題を中心に審議を行い,FGMDSSにおける船舶の無線設備の搭載要件,FGMDSSへの移行計画,FGMDSSの解説書及びFGMDSSに関する通信士の運用上の職務等について仮草案を作成した。
 また,従来から検討されてきた衛星用EPIRBのホーミング周波数についても審議が行われたが,一の周波数に統一することができず,来る9月に開催される海上安全委員会で再度審議を行うことになった。
 そのほか,1983年の移動業務のための世界無線通信主管庁会議(WARC-Mobile)に備え,国際遭難周波数500kHzの発射の種別及び遭難通信で使用する周波数の配列について,追加の勧告を作成した。
 (4)国際民間航空機関(ICAO)
 ア.概 要
 ICAOは国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全で経済的な運営を図ることを目的として設立された国際連合の専門機関の一つである。
 航空の分野においても,通信あるいは航行援助に多くの電波が使われていることから,ICAOの主要な任務には,航空通信の要件,無線設備の技術基準,航空通信に分配された周波数の使用等について国際的な統一基準を設定することが含まれている。これらの具体的な内容は,ICAOの標準及び勧告方式として国際民間航空条約の付属書に規定されている。また,対外的には,国際民間航空に影響のある問題について,ITU等,他の国際機関の行う研究活動に参加することも大きな任務の一つとなっている。
 今日,この分野における電気通信の課題としては,電子技術を十分に活用しての通信の自動化の促進,無線航行援助施設の性能の向上及び新技術の研究開発,宇宙通信技術の導入等が挙げられる。
 イ.組 織
 ICAOの組織は,総会,理事会,事務局等のほか,それぞれの分野における専門的な活動を行う各種委員会や地域航空会議等の補助機関により構成されており,無線通信に関する事項は,主として,航空委員会及びその下部機関である通信部会等で審議され,その結果を理事会に勧告,助言することになっている。
 ウ.活 動
 航空委員会で検討している最近の無線関係の事項は,次のとおりである。
 (ア)空対空通信用VHF周波数を新しく割り当てて,付属書に規定すること
 (イ)現在使用されている計器着陸方式(ILS)に代わるマイクロ波着陸方式(MLS)の技術基準を付属書に規定すること
(5)国際連合宇宙空間平和利用委員会
 国際連合宇宙空間平和利用委員会は,国際連合総会の下に宇宙空間の平和利用に関する問題を検討することを目的として設置された機関であり,国際連合総会によって付託された審議事項について,委員会自体が審議を行うほか,問題点を専門的に検討するためにその下部機関として設置した科学技術小委員会及び法律小委員会の作業を基にして審議を行っている。当面付託されている審議事項には,[1]衛星による地球の遠隔探査(リモート・センシング),[2]衛星直接テレビジョン放送,[3]宇宙定義及び静止軌道,[4]宇宙における原子力の使用等がある。
 科学技術小委員会は,宇宙空間の平和利用に関する科学技術面の検討を行っており,1981年2月2日から13日まで第18会期会合を開催した。また,法律小委員会は,宇宙空間の平和利用に関する法律面の検討を行っており,1981年3月16日から4月10日まで第20会期会合を開催した。
 宇宙空間平和利用委員会は,1981年6月22日から7月2日まで第24会期会合を開催した。
 審議事項の[1]リモート・センシングについては,科学技術小委員会ではリモート・センシングによって取得したデータの配布を自由にするか規制するかに関してデータの分解能に応じて規制しようとの案が出ている。また,法律小委員会では各国がこの分野の活動に際して遵守すべき原則案を作成しているところである。委員会は,科学技術小委員会のさきの会合で各国代表がデータの配布に関して従来の主張を再確認したこと,また,法律小委員会のさきの会合で案文の審議が行われたが未解決事項が残っていることを了承した。
 審議事項の[2]衛星直接テレビジョン放送については,法律小委員会で,各国がこの分野の活動に際して遵守すべき原則案を作成してきたところである。法律小委員会のさきの会合では,目新しい動きとして,各国の意見は既に出尽くしているので妥協によって原則案作成の作業を早急に完了すべきとの意見が支配的となり,協議が重ねられたが,なお,西側諸国が主張する情報の自由と東側諸国が主張する情報伝播の一部規制とが案文作成上依然として主たる対立点として残り,妥協点を見出だすに至らなかった。会期末に至り,従来審議されてきた案文に協議の成果を踏まえて修正を施したものとして新しい案文が作成された(同案を12か国案と称している)。委員会は,法律小委員会のこのような動きを反映し,非公式作業部会を設けて原則案作成作業を行った。12か国案に更に4か国が同調し(同案を16か国案と称している),主としてこの案に基づいて協議が行われたが,最終的に合意は得られなかった。なお,この問題の今後の取扱いについては.同年の第36回国際連合総会の決定により,委員会の翌年の会合において審議を継続することとなった。
 審議事項の[3]宇宙定義及び静止軌道については,科学技術小委員会では静止軌道の物理的性質に関して国際連合事務局に研究文献の作成を求めており,また,法律小委員会では空域と宇宙域とを海抜100〜110kmで別ける境界を設定するとの案が出ているが境界を設定すること自体に賛否両論がある。委員会は,これらの両小委員会のさきの会合で各国代表が従来の主張を繰り返したことを了承した。この事項は,今後も引き続き審議が行われる。
 審議事項の[4]宇宙における原子力の使用については,科学技術小委員会ではその安全性に関して論議を重ねており,また,法律小委員会では既存の国際法を宇宙における原子力の使用のための規定をもって補充することの必要性に関して検討しているが,この事項は,今後も引き続き審議が行われる。
 宇宙空間平和利用委員会は,これらの定例的な業務のほか,国連宇宙会議の開催の準備を進めている。この会議については,前年の第35回国際連合決議35/15により,1982年8月9日から22日までオーストリアのウィーンで開催することが正式に決定された。委員会は,宇宙活動に関する国連主催のゼミナールを定期的に計画し実施しているが,会議事務局長の意見を容れて,ゼミナールの一部を会議の準備にあてることを了承した。1981年11月18日から25日までインドネシアのジャカルタでアジア・太平洋地域の発展途上国向けに開催されたゼミナールには,我が国からも宇宙通信関係の担当の講師として参加した。
 (6)経済協力開発機構(OECD)
 OECDは,1961年に欧州経済協力機構(OEEC)を発展的に改組して発足した国際機関であり、我が国(1964年加盟)を含む先進24か国が加盟している。OECDは経済成長,開発援助,貿易拡大の三大目的を有しており,これを達成するため加盟国相互の情報及び経験の交換,政策の調整,共同研究等を行っている。
 OECDの組織は,上部機構として全加盟国によって構成されOECDの意見の正式決定機関である理事会,理事会の補佐機関である執行委員会等があり,下部機構として経済政策委員会,開発援助委員会及び貿易委員会など約30の各種委員会及び事務局がある。
 OECDの活動は,経済,科学,社会,教育等広範な分野に及んでいる。電気通信政策に関する諸問題は,科学技術政策委員会(CSTP)の下に設置されている情報・電算機・通信政策作業部会(ICCP)を中心に倹討されている。
 なお,ICCPは,1982年4月1日より情報・電算機・通信政策委員会(CICCP)として昇格した。
 1981年度におけるICCP関係会合の主なものは,次のとおりであった。
 [1] コンピュータ社会のぜい弱性ワークショップ(1981.5.19〜5.21)
 [2] 第2回国際データ流通専門家会合(1981.6.22〜6.23)
 [3] 第10回ICCP会合(1981.9.15〜9.17)
 [4] ブライバシー保護ガイドライン・フォローアップ会合(1981.10.5〜10.6)
 [5] 第3回国際データ流通専門家会合(1982.1.25〜1.27)
 [6] 第11回ICCP会合(1982.3.30〜4.1)
 (7)国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
 ユネスコは,国際連合の専門機関の一つであり,教育,科学,文化等多様な分野で活動を行っているが,取り分け近年はコミュニケーション分野に関心を深めている。
 1980年9月から10月までベオグラードにおいて開催された第21回ユネスコ総会は,主に開発途上国におけるコミュニケーション分野の開催を促進するために国際協力を強化することを目的とした国際コミュニケーション開発計画(IPDC)を設立することを決定した。
 1982年1月18日から25日まで,メキシコのアカプルコにおいて,IPDC第2回政府間理事会が開催され,計画実施に当たっての実務的な諸問題を審議した。主な議題は,次のとおりであった。
 [1] IPDCの財政問題
 [2] 計画推進に当たっての優先分野及びプロジェクト採択の基準
 [3] IPDCプロジェクトの選定
 [4] ユネスコ事務局のIPDC事務局長候補者リストの作成

 

5 国際海事衛星機構(INMARSAT) に戻る 第2部第8章第2節1 通信・放送分野における国際協力 に進む