昭和58年版 通信白書

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2 通信インフラストラクチャーの地域格差

 通信インフラストラクチャーの整備拡充は,上述のとおり政治的安定,社会経済発展といった開発途上国の国家目標の達成にとって有力な手段となる。そこで近年,開発途上国は,国の発展に必要な通信インフラストラクチャーを重視し,国家開発のための長期的な計画の中にその整備計画を折り込むなどして,整備,拡充に努力している。
 しかし,通信インフラストラクチャーの現状及びその利用状況を,先進諸国,中GNP諸国,低GNP諸国別に比較してみると,第1-2-3表のとおり,その差は依然として大きいものがある。例えば人口1,000人当たりの日刊新聞発行部数でみると,低GNP諸国では先進諸国の17分の1,ラジオ受信機台数では13分の1,テレビ受像機台数では63分の1となっており,電話機の台数に至っては271分の1にすぎない。
 また,日本とアジアとの対比でみると,日本の人口はアジアの人口の5%にすぎないが,日刊新聞の発行部数では66%,ラジオ受信機台数では46%,テレビ受像機台数では63%,電話機台数では89%と,その大部分を占めている(第1-2-4表参照)。
 さらに,電気通信インフラストラクチャーに対する人口1人当たりの投資額でみると,1968年と1977年とで比較した場合,投資額の伸び率は,先進国(3.3倍)より開発途上国(4.2倍)の方が大きいが,1人当たりの投資額の絶対額では,先進国が1977年で54.4ドルであるのに対し,開発途上国は6.7ドルであり,8倍以上の差があるとともに,すべての投資に占める電気通信インフラストラクチャーの投資の割合でも,先進国が3.9%であるのに対して開発途上国は2.0%となっている(第1-2-5表参照)。
 こうした状況の背景としては,次の点が挙げられる。
[1] 通信は,大規模かつ複雑なシステムであり,その計画,建設,保守,運営には高度かつ総合的な技術力とシステム運営の能力を要するが,開発途上国ではこのような高度な技術や経験を持った人材が不足している。
[2] 通信インフラストラクチャーの整備には,ぼう大な資金を要するため,開発途上国だけではその資金調達に困難が伴う。
[3] 通信インフラストラクチャーは,道路,港湾,電力等の,他のインフラストラクチャーと同様,農業,工業等の生産活動の効率化,合理化に役立ち,経済社会発展のための潜在能力を向上させるものである。しかしながら,それらの生産の拡大に直接結びつくものではなく,その効果が出るまでには長時間を要することから,投資が後回しにされることが多い。
 一方,通信インフラストラクチャーの整備発展に当たり,技術水準の高い情報通信手段ほど格差が大きくなりやすいという問題がある。先進国では宇宙通信やコンピュータ等の先端技術の導入によって情報通信の高度化・多様化を一層推進しており,先進国と開発途上国との間に格差の広がることが懸念されている。反面,先端技術を積極的に導入することによって開発途上国が急速に先進国に近づく可能性も出てきている。例えば,国土に多数の島々を抱えていたり,広大な国土のため通信網の構築が遅れている場合に,通信衛星を利用して国内通信網を作り上げることなどが可能となってきている。このためには,開発途上国が先端技術を積極的に導入できるような条件を整備することが必要である。

第1-2-3表 通信インフラストラクチャーの地域格差

第1-2-4表 アジアの中の日本

第1-2-5表 電気通信インフラストラクチャーに対する投資

 

 

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