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第4節 我が国における通信分野の国際協力1 我が国における通信分野の国際協力の現状(1)通信分野の国際協力通信分野の国際協力の意義については,次のことが挙げられる。 [1] 国際相互理解の促進 通信分野における通信インフラストラクチャーの南北格差とそれに伴う情報流通の不均衡は,南北間の相互理解を促進する上での障害となっている。このようなことから開発途上国の通信機能の充実のための国際協力は,国際相互理解の促進を図る上で主要な役割を果たすものである。 [2] 技術先進国としての役割 通信インフラストラクチャーは,すべての国の社会的,経済的発展にとって不可欠の要素である。我が国は,電気通信やコンピュータ等エレクトロニクス分野,特にハードウェアに関する技術については,世界の先進国の一つであり,電話,テレビ,新聞等の情報通信メディアの普及発展状況においても,世界の最高水準にある。こうした技術と蓄積をもって,開発途上国の通信インフラストラクチャーの整備に協力し,技術移転を図ることにより,開発途上国の経済社会の安定発展に貢献する必要がある。 [3] 通信分野の近代化の経験 我が国は,明治以降通信インフラストラクチャーの整備・拡充に取り組んできた。こうした経験とノウハウを開発途上国の通信インフラストラクチャーの整備・発展のために活用することができる立場にある。 (2)政府開発援助(ODA) ODAは,第1-2-14表のとおり,相手国政府との合意に基づく二国間協力と国際機関に対する出資・拠出等の多国間協力に分けられる。さらに,二国間協力は,資金協力(無償資金協力,政府直接借款)と技術協力に大別できる。 我が国の通信分野のODAの二国間協力について,以下概観する。 ア 資金協力 (ア)無償資金協力 無償資金協力とは,開発途上国に対し返済義務を課さずに資金を供与する形態の援助であり,無償資金協力のうち,文化無償協力,食糧援助等を除く一般無償資金協力に占める通信関係の割合は,第1-2-15表のとおりとなっている。(イ)政府直接借款 政府直接借款とは,通常「円借款」と呼ばれ,経済インフラストラクチャー分野のプロジェクト借款が中心となっている。通信分野のプロジェクト借款は,年々増加傾向にあり,全体に占める割合は57年度で11.3%となっているが,陸運や電力分野のプロジェクト借款の全体に占める割合より小さい(第1-2-16表,第1-2-17図参照)。 イ 技術協力 技術協力は,開発途上国における技術の普及あるいは技術水準の向上を目的として行われるものであり,研修員の受入れ,専門家の派遣,開発調査の実施,海外技術協カセンタの設置・運営等を通じて,開発途上国の社会経済の担い手となる人材の養成を行うものである。 我が国のODAに占める技術協力の割合は,近年10%前後であり,DAC諸国平均の約20%と比し半分程度にすぎない。 (ア)研修員の受入れ 開発途上国の通信関係技術者を,我が国の研修施設に受け入れ,人材の育成を行うものである。通信関係設備は,設置後の運用,保守においても高い技術力を必要とすることから,こうした研修は大きな役割を果たしている。通信関係の研修員の受入れ実績及び全体に占める割合は,第1-2-18図のとおりである。 (イ)専門家の派遣 我が国の通信関係の専門家を開発途上国へ派遣し,現地で職員の訓練,通信関係施設の建設,保守及び運用面の指導,開発計画の企画,助言を行うことにより,通信関係技術の移転を図るものである。通信関係の専門家の派遣実績及び全体に占める割合は,第1-2-19図のとおりである。 (ウ)開発調査 開発途上国の通信関係の開発計画について調査を行い,プロジェクトを選定したり,緊急妥当性の観点から特定プロジェクトの可否を判断するための基礎資料を得るために行われるものである。通信関係の開発調査の実績及び全体に占める割合は,第1-2-20図のとおりである。 (エ)その他 通信関係の技術協力には,上述のほか,通信関係機材の供与,開発途上国において,技術者の養成やその国の実情に合った研究開発等を行うために設置される海外技術協カセンタ事業への協力がある。 (3)その他の国際協力 その他の国際協力には,民間部門が営利を目的として長期にわたる資本取引を行うもの,例えば,通信機器メーカの行う直接投資,通信機器の輸出に際し,その代金の分割払いを認める輸出信用等がある。開発途上国は,自国の通信インフラストラクチャーの建設には,先進国で製造された機器を用いる場合がほとんどであり,我が国の民間通信機器メーカは,通信機器の輸出を通じて,その国の通信網の設計,建設,保守,運営に協力している。もとより,こうした活動は企業活動であるので,政府や国際機関のそれとは同列に論じられないが,開発途上国への技術移転という観点からすると,非常に大きな役割を果たしている。 また,電気通信網等の通信インフラストラクチャーは,高度に進歩したエレクトロニクス装置の結合であり,開発途上国にあっては,この種のプロジェクトの推進には,計画の策定からシステム完成後の保守,運用の訓練に至るまでの先進国による一貫したコンサルティングが求められている。 欧米諸国においては,通信分野でコンサルティング会社等を通じて民間ベースの国際協力が活発に行われており,我が国では,こうした要請に応じるため,いくつかの民間コンサルティング機関が活動しており,今後の発展が期待されている。
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