昭和58年版 通信白書

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1 情報通信分野における我が国の国際的地位

(1)国際化の進展
 我が国は,明治以来,欧米先進国の物質的豊かさへのキャッチアップを目指し,近代化と産業社会の形成に力を入れてきた。この過程においては,エネルギー,食料,原材料等資源の多くを海外に求め,さらに製品市場についても海外に依存し発展してきた。
 この結果,国土面積では全世界の約0.3%,人口では約2.7%を占めるにずぎない我が国は,今や世界の貿易に占める割合でみると,輸出は約7.0%,輸入は約7.4%となり,さらに全世界のGNPの約10%を占める経済大国にまで成長するに至った(第1-2-21表参照)。
 我が国のこうした国際社会とのつながりは,経済面のみならず情報通信分野においても強まってきている(第1-2-22図参照)。
(2)我が国を中心とした情報流通
 情報流通の活発化は,国際相互理解にとって基本的要請である。特に,国際社会に依存することの極めて大きい我が国としては,円滑な情報流通の確保は極めて重要である。しかし,我が国を中心とした情報流通には次のような問題がある。我が国においては,郵便,電話,放送等の通信インフラストラクチャーは,高度に普及,発展しており世界の最高水準にある。特に,電気通信やコンピュータ等エレクトロニクスに関する技術については,世界の先進国の一つである。このように通信インフラストラクチャーの整備の面では,最も進んだ国の一つであるが,反面,日本を中心とした情報の流れをみると,我が国は,輸入超過国であり,その意味では,開発途上国と同種の問題を抱えているといえる(第1-2-23図参照)。
 このような背景としては,明治以降,我が国の近代化と産業社会の形成への取組が,西欧先進国の科学技術や文化の吸収を大きな目標として進められ,我が国からの情報発信が不十分であったことが挙げられる。
 しかし,世界経済に占める割合が高くなるのに伴い,情報通信の分野でも,経済規模にふさわしい貢献が求められるようになっている。
 さらに,我が国を中心とする情報流通は,流出入の不均衡に加え,地域的不均衡も大きい。すなわち,我が国の情報の流れは,欧米に偏っており,近隣のアジア諸国との情報流通は,これに比べて乏しい(第1-2-24図参照)。我が国は,特に近隣のアジア諸国との友好協力関係を強化し,様々なメディアを通じて交流を深めることが重要である。また,それとともに,日本を含めたアジアの文化や思想を他の地域に紹介するため,アジアからの情報発信を活発化することが重要である。
 それによって,アジア文化や日本文化に対する世界の理解と認識を促進することにより,国際間の相互理解が深められることになる。
 また,社会経済や科学技術等に関する情報,特にコンピュータにより処理・蓄積された情報については,一部の先進国へ集中する傾向があり,我が国は質量ともに豊富な米国のデータベースの利用が盛んである。今日,情報は二国の社会経済の発展にとって不可欠なものとなっており,情報の過度の他国への依存は問題がある。

第1-2-21表 世界における我が国の位置付け

第1-2-22図 通信分野における国際交流の増加状況(57年度)

第1-2-23図 情報通信分野の情報流通の状況[出入]

第1-2-24図 情報通信分野の情報流通の状況[対地別]

 

 

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