昭和58年版 通信白書

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第3章 自営電気通信

第1節 概  況

 1 無線通信

 昭和25年に電波法及び放送法が施行され,電波が広く国民の利用に開放されて以来,30余年を経過したが,その間に,我が国の無線通信は,国民の社会経済活動領域の拡大及び国民生活の向上に伴い,目覚ましい普及発達を遂げ,あらゆる分野で導入されている。
 25年当時約5,000局であった無線局数は,57年度末現在では201万2,822局となり,自営電気通信に供される無線局は193万6,845局で全体の96.2%を占めている。
(1)固定通信
 固定地点間の無線通信は,近年,企業の合理化又は業務の省力化の手段として,その利用はますます増加している。用途別固定局数は,第2-3-1表のとおりであり,広い分野において利用され,その総数は前年度に比し5.1%の増加となっている。
 これらの固定通信は,主としてマイクロウェーブ回線により構成されているほか,短波回線,VHF回線等によって,全国的又は局地的ネットワークを構成して,各種の業務において重要な役割を果たしている。
 なお,災害時における通信の確保に万全を期すため,重要通信回線については,多ルート化するなど施設面で各種の対策が進められている。
 また,伝送内容も単なる音声通信のほか,最近はファクシミリ,画像通信あるいはデータ通信,符号伝送等多様化してきている。
(2)移動通信
 ア.航空移動通信
 航空移動通信は,航空交通管制通信と運航管理通信及びその他の通信に大別される。
 航空交通管制通信は,航空機の安全かつ秩序ある航行を確保するため,国の航空交通管制機関と航空機との間に行われる通信であり,全国の主要空港及び航空路の要地に航空交通管制用航空局が設置されている。
 運航管理通信は,主として航空機の能率的運航を図るため,航空事業者等が開設する航空局と航空機局との間で行われる通信であり,全国の主要空港及び航空路の要地に航空局が設置されている。
 その他,国の機関,報道事業者等が,治安,報道等に関する通信を行っている。
 ほとんどの航空機が航行の安全のために,航空機局を開設している。
 その他,地上の要地には,航空機に方位や距離情報を与える航空保安無線施設が設置され,航空機側には,これと対応して機能する航行用機上無線設備が搭載されている。
 57年度末現在の航空移動業務用無線局(航空局及び航空機局)は,第2-3-2図及び第2-3-3図のとおりである。
 イ.海上移動通信
 海上を航行する船舶にとって,無線通信は欠くことのできない通信手段となっており,法令によって無線設備の設置を強制される船舶をはじめ多くの船舶が,航行の安全の確保及び事業の能率的運営のために,その大小を問わず各種の無線通信設備を設置している。57年度末現在,船舶に開設された海上移動業務用無線局等の総数は約8万4千局に達し,前年度に比べ1.6%の増加となっており,その内訳は第2-3-4表のとおりである。
 一方,これらの船舶との海上移動無線通信を支える陸上側施設も,船舶のふくそう,高速化等に対応して整備拡充が図られてきており,船舶の航行の安全等に大きく貢献している。
 海上移動通信は,小型船舶における無線電話の利用も盛んになるなど,全般的に電話化の傾向にあり,また,衛星を利用した海上移動通信サービスの提供により,通信品質は目覚ましく向上している。
 海上移動通信の目的は,人命・財貨の保全,事業の運営及び港湾出入管理に大別される。
 人命・財貨の保全を図るための通信は,海岸局及び船舶局に遭難周波数の聴守を義務付けるとともに,一方,遭難等の非常事態の際は遭難周波数で通報するというシステムにより成り立っている。我が国における遭難周波数及び聴守対象船舶局は第2-3-5表のとおりであり,これらの対象船舶局は,海上にある間,所定の遭難周波数により一定時間聴守を行っている。遭難通報を受信した海岸局及び船舶局は,即時に救助活動が開始されるよう,遭難通信の取扱い等救助に必要な措置を採ることとなっている。「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」の発効(55.5.25)により,船舶の無線電信局にも従来の無線電信用国際遭難周波数500kHzのほか無線電話用国際遭難周波数2,182kHzの無休聴守が義務付けられ,2,182kHzの無休聴守対象船舶局が拡大されたことは,人命・財貨の保全のための通信を一層充実させるものとなった。
 また,船舶の遭難の際,即時の救助を求める信号を自動的に送信する遭難自動通報設備(2,182kHz又は2,091kHzを使用)を設置する船舶は,57年度末現在1万8,050隻であり,海難救助に効果を発揮している。
 なお,「1979年の海上捜索救助に関する国際条約(SAR条約)」が採択されたことにより,現在,我が国においてもこの条約の下での世界的規模の新たな捜索救助制度及びIMO(国際海事機関)の諸決議等に基づき将来の全世界的な海上における遭難・安全制度(FGMDSS)への対応が検討されている。
 事業運営のための船舶と陸上との通信は,一般海岸局(公衆通信を取り扱う海岸局をいう。)を経由しての公衆通信によるほか,漁業においては漁業用海岸局との間で,内航海運業等においては内航用海岸局又は船舶運航用専用海岸局との間で行われている。
 交通船舶量の多い主要港湾においては,海上保安庁及び港湾管理者が国際VHF無線電話等によって港湾出入船舶の管制及び管理を行っており,船舶の大型化,高速化に伴い,この通信は,航行の安全,港湾施設の利用の迅速化等にとって大きな役割を果たしている。
 ウ.陸上移動通信
 陸上移動通信は,事業所と自動車その他陸上を移動する移動体との間の通信,あるいは移動体相互の通信手段として公共事業,公益事業,私企業等,社会のあらゆる分野において使用され,社会経済活動に大きく貢献しており,その利用は今後社会経済活動の活発化,多様化に伴いますます増加するものと予想される。
 57年度末現在,基地局及び陸上移動局を併せた陸上移動業務の無線局数は72万7,288局に達し,前年度に比べ9.5%の増加となっている。
 これら陸上移動業務には,VHF帯又はUHF帯の電波が使用されているが,その需要は急速に増加していることから,その需要に対処するため,周波数のより一層の効率的利用を図るための方策としてマルチ・チャンネル・アクセスシステム(MCAシステム)の導入,通信路間隔の縮小(ナロー化)の推進等諸施策が講じられている。

第2-3-1表 用途別固定局数

第2-3-2図 事業別等航空局数

第2-3-3図 事業別等航空機局数

第2-3-4表 船舶に開設された海上移動業務用無線局等の局数

第2-3-5表 遭難周波数及び聴守対象船舶局

 

 

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