昭和58年版 通信白書

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13 電気・ガス・水道事業用

(1)電気事業用通信
 ア.現 状
(ア)電気事業と通信
 電気は,国民生活になくてはならないものとなっており,一刻もその供給を停止することができないことから,電気事業は,電気の安定供給を最大の使命としているが,電気の安定供給を確保するためには,多数の発電所,変電所,送電線及び配電線で構成されている複雑多岐かつ広範囲にわたる電力系統を,安全かつ効率的に運用する必要があり,このための各種情報伝達手段としての通信回線が不可欠なものとなっている。
(イ)通信設備の概要
 固定通信回線は,電力会社の本店,支店及び発電所等の間に設けられており,電力系統運用のための保安用電話,給電用電話,遠隔監視制御,自動給電及び系統保護等に使用されている。これらの通信回線のうち,電力系統の運用や事故波及防止のための保護設備等高信頼度情報伝送を行う幹線系については,マイクロウェーブ回線を主体に構成されているが,ローカル的な通信回線は,通常の有線通信回線及び電力線搬送も一部使用されている。また,水力発電所ダムの放流を住民に周知する放流警報用無線局(サイレン警報)や,ダムの流入量を把握し,的確なダム操作を行うための雨量,水位観測用のテレメータ回線も設置されている。電力会社が開設している固定局数は,57年度末現在で2,835局となっている。
 さらに,送電線及び配電線の事故の未然防止のパトロ-ル,事故時の迅速な復旧のための連絡等,設備の安全業務を効率的かつ的確に遂行するための移動無線も多数使用され,多大の成果を挙げており,運用中の移動業務の局の数は,57年度末現在で2万4,477局となっている。このほか,各電力会社が協力し,日本全土の電力の需給調整を図ることを目的として,中央電力協議会を設け,各電力会社の電力の需給情報を収集するとともに,これに基づき電力の調整を図るため,同協議会の中央給電連絡指令所と各電力会社及び地域給電連絡指令所と関係電力会社との間に通信回線を構成している。さらに,電気事業は,電力会社以外では,地方公共団体においても行われており,事業運営及びそれに必要な通信回線の構成も小規模ではあるが,電力会社と類似の形態となっている。
 イ.動 向
 総需要電力量は,省電力の進展,節電意識の高まりや鉄鋼,アルミ,化学等の電力多消費産業の需要の落ちこみ,また,長梅雨冷夏の一時的要因等により,近年伸び悩みを見せているが,生活水準の向上や安定的な経済成長に伴って今後とも着実に増加していくものと見込まれる。現在,石油需給は緩和基調で推移しているものの,中長期的にはひっ迫の傾向にあると考えられるため,各電力会社は増大する需要に対応するために,原子力を始めとして,石炭火力,LNG火力等の石油代替電源の開発を進めている。一方,その設備の大規模化,発電所の遠隔化等から,基幹送電線の容量は年々大きくなり,超々高圧(50万ポルト)送電線へと移行する傾向にある。このような電力設備の大規模化に対処して,電力系統の安定かつ効率的な運用を確保するため,災害に対し高信頼度を有し,かつ多量の情報を高速度で伝送する必要があるので,本店・支店・基幹電力系統の各発電所,変電所等の間におけるマイクロウェーブ回線の増設,既設回線を利用するうかいルート等による多重化を図るとともに,次の諸点に重点をおいて通信設備,特に無線設備の整備・強化が図られている。
[1] 電気事業の広域化に伴い,電力系統の事故を他地域へ波及,拡大させないため,事故区間を高速遮断するマイクロキャリアリレー(送電線の保護装置)を,また,事故を高速除去した直後,電源制限,負荷制限,系統分離する系統安定化制御システム等を導入する。
[2] 電力系統設備の運転管理の合理化及び集中管理制御化を推進する。
[3] 変動する負荷に対して常時安定した電力を供給するため,電子計算機を導入し,各設備を有機的に連係する給電運用の総合的自動化を推進する。
[4] 58年2月に打ち上げられた我が国初の実用通信衛星であるCS-2aを利用する。また,58年8月に打ち上げられた同CS-2bについても利用することとしている。
(2)ガス事業用通信
 ア.現 状
 都市ガスは,都市生活にとって欠かせないエネルギーとなっており,その需要も近年急速に増大しているが,この都市ガスを安全にかつ安定的に供給していくためには,季節,曜日,時間帯,気象条件等によって,刻々変化するガス需要に対し,ガス製造量,ホルダーの貯蔵量,導管網の主要地点の圧力,流量,バルブの状態を常時監視し,状況に応じて適切な供給操作を行うことが必要であり,このための各種情報の伝達,遠隔監視制御等のための通信回線が必要不可欠なものとなっている。
 この通信回線は,通常,本社に設置している中央供給指令所(コントロールセンタ)と工場,整圧所,ガバナー・ステーション,バルブ・ステーション等の間で構成され,保安用,供給指令用の電話について使用されているほか,主要地点のガバナー,バルブ・ステーションの流量,圧力等の状況監視及び遠隔操作を行うためのテレメータ,テレコントロール回線等に使用されている。
 この通信回線は,無線及び有線回線が使用されているが,ガスの製造,需給調整の総合自動化に伴うデータ通信の採用等により,高信頼度が要求されることから,本社,整圧所,工場間について主として,マイクロウェーブ回線で構成されるようになっている。
 また,広域かつ長大な導管網を維持管理し,事故防止を図るとともに事故時における早期復旧を図るため,導管事業所,営業所等には移動無線局を多数配置し,ガス漏れ等の緊急事態に備え万全の体制をとっている。
 イ.動 向
 近年の都市ガスの需要傾向として,工業用の需要が増大しており,需要主力の家庭用の過去5年間の伸び率18.6%に対し,74.8%の増加を示している。
 これらの需要の増大に対応して,事業の拡大,合理化等のため,一段と製造,需給調整の総合自動化が推進される傾向にあり,また,幹線系導管の高圧化に伴い,導管事故によるガス災害の大規模化の防止,事故復旧対策に重点をおいたガス施設の制御監視,連絡体制の強化が進められているため,通信回線の需要はますます増大しているが,特に防災用の見地から災害に強く,信頼性の高い無線回線への依存が高まってきている。
 なお,57年度末現在,その無線局数は8,854局で,対前年度伸び率9.2%である。
(3)水道事業用通信
 ア.現 状
 水道事業は,健康で文化的な生活を支えるばかりでなく,あらゆる産業活動又は都市機能を維持していく上で必要不可欠な事業である。
 この水道事業においては,直接住民生活に影響を及ぼし,また,関連地域が広範囲に及ぶという性格もあって,取水,浄水,送配水等の水道各施設の合理的,能率的な管理維持を図る必要があり,このため,自営の無線回線を設置し,各事業所と本部との間に不断の通信連絡を確保するとともに,特に送配水設備に事故が発生した場合には,移動通信系により事故現場と本部間に緊急連絡体制を確立して,応急復旧作業に万全の対策を講じている。
 イ.動 向
 昭和30年代以降の都市化現象と生活水準の向上等による水需要の増大に対処しつつ経営,管理基盤の強化を図るため,近年,水道の広域的整備が進められている。そこでは,貯水量の調整,水質安全確保のための水質判断,配水量の調整等の監視制御に無線回線を利用し,電子計算機を使用した集中管理方式を導入するなど,種々の対策が講じられており,東京都,神奈川県,名古屋市,その他地方公共団体の開設する水道事業用無線局は,57年度末現在7,848局となっている。

 

 

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