第2部第5章第3節1 有線テレビジョン放送：昭和58年版通信白書

　年度別・規模別に見た有線テレビジョン放送施設数及び受信契約者数は，第2-5-20表のとおりである。
　57年度末における有線テレビジョン放送施設数を規模別にみると，その構成比は許可施設1.1％，業務開始届出施設57.2％，小規模施設41.7％となっている。引込端子数が501以上の大規模な有線テレビジョン放送施設の設置については，郵政大臣の許可を要するが，許可施設数（廃止件数を除く。）は384施設（対前年度比8.5％増）である。引込端子数が51以上の施設及び引込端子数が50以下の施設で自主放送を行うものは，業務開始の届出を要するが，業務開始届出施設数（許可施設数を除く。）は，1万9，428施設（対前．年度比9.1％増）である。引込端子数が50以下の小規模施設でデレビジョン放送の同時再送信のみを行うものは，業務開始の届出を要せず有線電気通信法に基づく設備設置の届出を要するが，届出済みの小規模施設数は1万4，169施設（対前年度比10.4％増）である。また，施設規模別の受信契約者数の構成比は，許可施設17.2％，業務開始届出施設（許可施設を除く。）72.8％，小規模施設10.0％である。
　57年度末現在における有線テレビジョン放送施設を都道府県別にみると第2-5-21表のとおりである。東京都，大阪府，兵庫県，神奈川県，愛知県が多いが，これらの都府県では高層建築物，高速道路等交通関係の高架建造物，超高圧送電線等によるいわゆる都市受信障害が多く，その解消手段として有線テレビジョン放送が使われているためである。
（1）許可施設
　許可施設数の推移は，第2-5-22表のとおりである。57年度末現在における現存許可施設数は384施設であって，前年度末に比べ30施設（8.5％）の増加となっている。
　許可件数は，前年度32件であったのに対し57年度は41件で28.1％の増である。
　57年度に許可した41施設の設置目的等をみると，都市における受信障害の解消を目的とする，いわゆる補償施設（人為的原因により発生した受信障害を解消するために原因者負担の考え方に基づいて原因者が設置したもの）が33（内訳，高層.ビル関係13，超高圧送電線関係11，交通関係9），地形による難視聴解消及び放送番組の多様化を目的とするもの4，放送番組の多様化を目的とするもの3，自主放送を目的とするもの1となってぃる。
　許可施設の規模，運営主体及び業務の状況は，次のとおりである。
　ア．施設の規模及び運営主体
　許可施設の設置運営主体の状況（57年度末現在）を規模別に見ると第2一5-23表のとおりである。
　運営主体別では，任意団体（受信者組合）の施設が190で最も多く，全体の49．5％を占め，以下営利法人，公益法人，国・地方公共団体，特殊法人，協同・共済組合，個人の順となっている。
　有線テレビジョン放送法施行直後の48年度末現在と57年度末現在の運営主体別の施設数及び構成比率は第2-5-24表のとおりであって，公共性の強い運営主体による施設の増加が目立つ。
　なお，施設の規模の推移をみると，引込端子数3，001以上の施設数は48年度末の7施設から57年度末48施設に，その構成比率が4.7％から12.5％と増加したことに見られるよ．うに施設の大型化が進んではいるが，その約半数（45.8％）は引込端子数501から1，000までの施設によって占められている。
　イ．業務の内容
　有線デレビジョン放送の業務内容別にみた許可施設数は，第2-5-25表のとおりである。その大部分はテレビジョン放送の同再送信のみを行うものであるが，同時再送信に自主放送を併せ行うものも徐々に増加しつつある（自主放送のみのものを含め対前年度比10.4％増）。
　同時再送信業務を行う施設を目的別にみると，第2-5-26表のとおりである。辺地難視聴及び都市受信障害の解消を目的とするものが68．7％と最も多いが，番組の多様化を目的とするものもかなりある。
　ウ．自主放送
　第2-5-25表にみられるように許可施設のうち自主放送を行っているものは，57年度末現在で53施設（13.8％）となっているが，このうち52施設は，同時再送信業務と併せて自主放送を行っているものである。また，有線テレビジョン放送施設者（施設の設くこついて郵政大臣の許可を受けた者）から施設の提供を受けて（いわゆるチャンネルリース）自主放送を行っている有線テレビジョン放送事業者は，5事業者（7施設）である。
　特色ある自主放送を行っている許可施設の事例としては，都心部のホテルやマンションの外国人を主な対象として英語放送を行うもの，地域の小・中学校を有線テレビジョン放送システムに組み込み，視聴覚教育の一環として学校放送を行うもの，離島対策として放送番組の多様化を図るため東京の民放番組のビデオテープを空輸して放送するもの，各種農事情報の計画的提供により農業生産の近代化及び農村の生活環境の向上を目的とするもの等がある。自主放送番組の一般的な内容としては，地方公共団体や農業協同組合からの広報，地域社会のニュース，ショッピング情報，市町村議会中継，地域住民参加番組，テレビジョン放送番組の再放送等がある。
　エ．料　金
　有線テレビジョン放送の役務の料金としては，契約料（加入金）及び利用料.（維持管理費）を徴収しているのが一般的であるが，施設の設置運営主体，設置目的及び規模によって料金額が異なる傾向を示している。営利事業として番組の多様化のための区域外再送信を行う施設に比較的高額な料金を徴収しているものがみられるのに対し，都市におけるいわゆる補償施設では，契約料は無料，利用料は無料又は比較的低額なのが一般的である。
　許可施設のうち料金を徴収するものについてみると契約料は，1万円を超え3万円までのものが47.0％と最も多く，次いで1万円以下のもの（18.7％），3万円を超え4万円までのもの（13.3％），4万円を超え5万円までのもの（11.4％）の順となっており契約料を徴収する施設の65.7％が3万円以下となっている。なお，契約料の最も高額な施設では8万円となっている。月額利用料は，200円を超え500円までのものが最も多く（38.8％），次いで200円以下のもの（35.3％），500円を超えるもの（25.9％）の順となっており，利用料を徴収する施設の74.1％が500円以下である。なお，利用料の最も高額な施設は，3，000円となっている。
（2）業務開始届出施設
　57年度末現在における業務開始届出済みの有線テレビジョン放送施設数（許可施設数を除く。）は，1万9，428施設であって，前年度に比べ1，627施設（9.1％）の増加となっている。特に建築物の高層化，高速道路の高架化，立体化が進んでいる大都市や国鉄新幹線が建設された地域等における増加が著しく，その主な地域は，大阪市（前年度比34.3％増），大阪府（同22.8％増），埼玉県（同22，3％増），東京都特別区（同17.1％増）等である。
　運営主体及び業務の状況は，次のとおりである。
　ア.運営主体
　業務開始届出施設の設置運営主体の大半（63，8％）は，受信者によって構成された任意団体（主として地元受信者組合）であるが，それらの任意団体のうち52.4％は辺地難視聴のためにＮＨＫと共同で施設を設置運営しているものである。
　イ.業務の内容
　業務の内容をみると，57年度末現在で同時再送信のみを行うもの1万9，392施設（99.8％），同時再送信と自主放送を行うもの18施設，自主放送のみを行うものが同じく18施設となっており，テレビジョン放送の難視聴の解消を目的とするものがほとんどである。
　ウ.料　金
　料金を徴収するものについてみると，契約料は73.4％の施設が2万円以下であり，また，利用料は88.7％の施設が月額200円以下である。
　なお，都市におけるいわゆる補償施設を任意団体が管理運営しているものにあっては，契約料は無料，利用料は無料又は月額200円以下としているものが大部分を占めている。

第2-5-20表年度別・規模別有線テレビジョン放送施設数及ぴ受信契約者数