昭和58年版 通信白書

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3 周波数割当

(1)概 要
 無線局に周波数を割り当てる場合には,一般に次の事項を考慮して行っている。
[1] 周波数分配表に従うこと。
[2] 周波数に関する国際的な規律に従うこと。
[3] 周波数割当計画が定められている場合にはこれに従うこと。
[4] 周波数の効率的利用を図ること。
[5] 電波の型式,必要周波数帯幅,伝搬特性,保護すべき電界強度等の電波の技術的特性を考慮し,既設局に有害な混信を与えないようにすること。
 昭和57年度末現在,割り当てられた周波数の数は,第2-6-3図に示すように約10,270波に達し,長波帯からマイクロ波帯までほとんどくまなく割り当てられている。
 特に,移動業務に適しているVHF帯及びUHF帯は,都市部における陸上移動業務及び沿岸無線電話を中心とする海上移動業務の伸びが著しく,VHF帯及びUHF帯の混雑緩和は現在の周波数監理上最も重要な課題の一つとなっている。
 また,マイクロ波帯についても,最近は通常のいわゆるマイクロウェーブ回線のほか,レーダ,気象観測,航空管制等の用途が拡大され,さらに,宇宙通信の本格化を迎え,混雑の度合いはますます高まっており,準ミリ波帯,ミリ波帯の開発が急がれている。
 一方,短波帯は従来からその混雑が国際的に大きな問題となっており,最近の国際通信の分野において海底ケーブル,対流圏散乱波通信,衛星通信等の広帯域通信回線が逐次整備されてきているものの,主として開発途上国においては依然として国内・国際通信とも短波に依存するところが多く,また,世界的にも海上移動業務,短波放送業務の分野では,短波の需要が増大していることから,依然として国際的にし烈な需要がある。(2)業務別周波数割当の現状
 ア.固定業務
 固定業務に分配されている周波数帯は,第2-6-4表に示すとおりである。
(ア)30MHz以下の周波数帯は,10数年前までは国際通信用として広く使用されていたが,衛星通信,海底ケーブルの導入により国際通信に占める役割は減少の一途をたどり,現在,短波回線が全回線数に占める比率は1%未満にすぎなくなっている。したがって,今後は主として衛星,ケーブルのいずれも使用することが困難な対地向け通信回線用として使用されることとなろう。また,国内通信用としては,市況情報等の同報通信,離島通信,災害対策用の通信,保安用の通信等短波帯の特性を生かした通信回線に使用されている。
(イ)30MHz〜1,000MHzの周波数帯は,中小容量の局地系の通信,災害対策用の通信,音声放送の中継,移動業務における通信所と送受信所間の連絡回線等に割り当でられており,今後もかなりの需要が見込まれている。
 しかしながら,この周波数帯は,移動業務に最も適した周波数帯であり,今後とも移動業務に対する需要は増大が予想されることから,固定業務用周波数については可能な限り2GHz以上の周波数帯に移行するなどして移動業務の拡大に対処する必要がある。
(ウ)1GHz〜10GHzの周波数帯は,大容量の無線中継方式に適し,公衆通信,テレビジョン放送中継及び公益,治安,行政等の業務の幹線系,支線系の通信網に広く使用されている。また,小容量固定多重回線に2GHz帯でPCM方式が導入されたことにより,従来400MHz帯を使用していた小容量固定多重回線は,できる限り2GHz帯等に移行することとした。このように,この周波数帯については,我が国は世界有数のマイクロ波利用国といわれるように,高い密度で使用されている。
(エ)10GHz以上の周波数は,降雨による減衰が大きいが,大容量信号の伝送が可能であることから,比較的短距離の大容量回線に用いており,現在では40GHz程度まで実用化されている。また,26GHz帯では,公衆通信の加入者無線回線への利用について検討が進められてぃる。
 この周波数帯の需要は,情報化の進展とともにデータ通信,画像通信等の新しい通信需要を含め,大幅な増大が予想されているので,今後,空中線の指向性を利用して地域的な周波数の共用を一層図っていくとともに,準ミリ波帯及びミリ波帯の開発あるいは衛星通信の利用を進めていく必要がある。
 イ.放送業務
 放送業務に分配されている周波数帯は,第2-6-5表のとおりである。
(ア)中波放送
 中波放送は,526.5kHz〜1,606.5kHzの周波数帯を使用している。
 この周波数帯の割当については,LF/MF帯放送に関する地域主管庁会議(1975年ジュネーブ)の協定に基づいて,「中波放送用周波数割当計画」を作成して行われており,我が国としては9kHz間隔106波の割当てを行っている。
(イ)短波放送
 短波帯で放送用に分配されている周波数帯は,6,7,9,11,13,15  17,21及び25MHz帯において合計617波(5kHz間隔)である。
 我が国では,国内放送用として6波の割当てを行っているほか,国際放送用として約30波の割当てを行っている。
 短波帯の放送業務用の周波数については,附属無線通信規則の規定により,年4回季節別の周波数を国際周波数登録委員会(以下「IFRB」という。)に提出し,IFRBは技術審査と各国間の調整を行い,必要に応じて関係主管庁に勧告を行うこととなっており,この勧告を受けた主管庁は,これを勘案して周波数の割当てを行うという建前がとられている。
 しかしながら,第2-6-6図に示すように,世界各国の周波数の使用は逐年増加しており,さらに,最近は各国とも大電力化を図っているために混信は激化の傾向にある。これに対し,1979年に開催された世界無線通信主管庁会議(WARC-79)において,新たに13MHz帯の分配をはじめとし,周波数の拡大が図られ,合計780kHz幅の追加配分が行われた。これらの使用については,1984年及び1986年に開催が予定されている放送業務に分配されたHF帯の計画化のための世界無線通信主管庁会議によって作成される規定に従うこととなっている。
(ロ)超短波放送
 いわゆるFM放送のための超短波放送用の周波数としては,76MHz〜90MHzが分配されており,「超短波放送用周波数割当計画」に従ってNHK及び民間放送に対し割当てが行われている。
(ニ)テレビジョン放送
 テレビジョン放送は<5>HF帯(90MHz〜108MHz及び170MHz〜222MHz)の12波,UHF帯(470MHz〜770MHz)の50波及びSHF帯(12.092GHz〜12.200GHz)の18波を使用し,「テレビジョン放送用周波数割当計画」に従い割当てを行っている。
 ウ.陸上移動業務
 陸上移動業務に分配されている周波数帯は,中短波帯からマイクロ波帯まで広範囲にわたっているが,電波の特性上から陸上移動業務に適している周波数帯は,一般にVHF帯及びUHF帯が中心であり,この周波数帯の割当ての状況は,第2-6-7表のとおりである。
 これらVHF帯及びUHF帯の陸上移動業務用周波数帯は,無線局の使用が最も混雑しており,従来から割当周波数間隔の縮小,セルコール方式の採用等による周波数共用,集中基地方式の採用,マルチチャンネル通信方式の導入等による周波数の有効利用を図ってきている。
 単一通信路用の周波数帯における周波数間隔は48年度末までに,60MHz帯では30kHzから15kHz間隔へ,150MHz帯では40kHzから20kHz間隔へ,400MHz帯では50kHzから25kHz間隔へ,それぞれ周波数間隔が縮小されたが,400MHz帯では更に25kHzから12,5kHz間隔へ縮小を図っており,66年5月末までに完了する予定である。
 陸上移動業務では,自動車交通の発達,移動体との間の迅速な通信の確保の要求に伴い,都市部を中心に今後ますます増大の傾向にあるので,<5>HF帯及びUHF帯について,ちみつな割当計画を定めて一層周波数の有効利用を図るとともに,自動車公衆無線電話,MCA陸上移動通信及びパーソナル無線に800MHz〜900MHz帯を利用するなど,より高い周波数の利用技術開発が推進され,さらに,GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)方式,高能率音声処理方式等周波数有効利用につながる技術の適用についても検討が進められている。
 陸上移動業務に分配されている周波数帯は,第2-6-8表のとおりである。
 エ.海上移動業務
 海上移動業務に分配されている周波数帯は,第2-6-9表のとおりである。
 海上移動業務は人命の安全に直接関係のある業務であり,世界的ベースで専用周波数帯が分配されている。また,500kHz,2,182kHz及び156.8MHzの周波数は,遭離及び呼出周波数として国際的な保護が与えられている。
(ア)短波帯の専用周波数帯は,無線電信用と無線電話用とに大別され,割当周波数及び割当基準が国際的に定められている。分配表では,海上移動業務へは4,6,8,12,16,18,19,22,25及び26MHz帯で合計4,650kHz幅が分配されているが,WARC-79で新たに専用で800kHz幅及び共用で158kHz幅,合計958kHz幅が追加分配された。そこでこれらの使用については,1987年に開催が予定されている移動業務のための世界無線通信主管庁会議において決定されることになっている。
(イ)154.7MHz〜162.05MHzのVHF帯は,国際海上移動無線電話,沿岸無線電話及び一般海上関係の業務に広く使用されている。
 特に沿岸無線電話は,海上交通の発達に伴い需要が急増しており,この需要に対処するために,53年度には,250MHz帯による自動交換方式を導入し,以来順次これに移行することにしており,61年までには移行を完了する予定である。
 なお,VHF帯国際海上移動無線電話については,その周波数間隔を50kHzから25kHzに縮小するとともに,国際航海に従事する船舶局にあっては,新たに設定したインターリーブ・チャンネルを外国の無線局と通信を行う場合に限って使用することができるようにした。
 (ウ)我が国においては,漁船の通信は主として専用通信として行われており,操業海域の相違等により,中短波,短波及びVHF帯の周波数を割り当てているが,遠洋漁業用の短波帯及び小型船舶に対する近距離通信用の26MHz及び27MHz帯の需要が増大している。そこで,小型船舶による近距離通信の需要増に対処するとともに,併せて船舶と陸上の公共機関等との直接通話に対する要望にこたえるため,漁業新通信システムを58年6月15日から導入し,これに40MHz帯の周波数を割り当てることとした。
 オ.航空移動業務航空移動業務は,海上移動業務と同様,人命の安全に直接関連のある業務であり,かつ,著しく国際性を有するので,原則として世界的ベースで専用周波数帯が分配されている。航空移動業務には,主として民間航空路に沿う飛行の安全に関する通信のための航空移動(R)業務とそれ以外の航空移動(OR)業務の区分がある。
 航空移動業務用の周波数分配の状況は,第2-6-10表のとおりである。
(ア)航空移動(R)業務
 航空移動(R)業務専用に分配されている周波数帯の使用に際しては,航空機の安全に関する通信が優先することになっている。また,航空移動(R)業務の使用に関しては,国際民間航空機関(ICAO)において技術基準,国際航空の周波数使用計画等が定められており,我が国でもこれを尊重している。短波帯については,無線通信規則附録第27号に世界的な周波数区域分配計画が定められており,我が国でも,この計画に従って主として遠距離通信用に割当てを行っているが,1978年2月ジュネーブにおいて開催された航空移動(R)業務のための世界無線通信主管庁会議において,SSB方式を基礎とした新たな航空移動(R)業務のための周波数分配計画が無線通信規則附録第27号(改定版)として採択された。この附録第27号(改定版)による割当ては1983年2月1日から実施された。
 また,空港周辺における管制通信の主力は,現在,高品質の通信が可能なVHF帯の118MHz-136MHz帯を使用しており,空港の整備に伴う需要の増大に対処するため,1983年1月シンガポールで開催されたアジア・太平洋地域航空会議により,割当周波数間隔を現行の50kHzから25kHzへ縮小して使用できるように,25kHzの割当周波数間隔に基づく周波数の使用計画が作成された。
(イ)航空移動(OR)業務
 航空移動(OR)業務には,主として短波帯,138MHz〜142MHz,235MHz〜328.6MHzのVHF帯及びUHF帯が分配されており,海上保安用,防衛用,新聞・報道用等に使用されている。短波帯においては,無線通信規則附録第26号に区域分配計画があるが,我が国ではSSB化により周波数の有効利用を図っている。
 VHF帯では現在50kHz,UHF帯では100kHzの周波数間隔で割当てを行っている。
 カ.無線測位業務
 無線測位業務は,電波の伝搬特性を利用して,位置の決定又は位置に関する情報の取得を行う業務であり,船舶及び航空機の航行のための無線測位を行う無線航行業務,無線航行以外の目的のための無線測位を行う無線標定業務がある。これらの周波数分配の状況は,第2-6-11表のとおりである。
(ア)無線航行業務
 無線航行用の周波数帯は,短波帯を除く全周波数帯にわたって分配されている。
 長・中波帯は,船舶及び航空機の位置決定のシステムのために割り当てている周波数帯であり,ロラン,デッカ,海上ビーコン及び航空ビーコンに使用されており,また,遠距離の高精度航行システムのオメガに対する割当ても行われている。
 30MHz〜1,OOOMHz帯は,主として航空無線航行に割り当てられており,VOR(VHF全方向無線標識施設),ILS(計器着陸用施設),DME(距離測定用施設),TACAN(UHF全方向方位距離測定施設)等に使用されている。また,マイク声波帯は,船舶,航空機,空港監視,航空路監視のレーダ,マイクー波ビーコン等に割り当てられている。
 海上無線航行では,今後,港湾を含む沿岸海域における海上交通のふくそうに対処するため,準ミリ波帯の高精度の監視レーダも実用に供されてきている。
 なお,衛星による航行援助システム(NNSS)が既に使用されているが,より正確かつ迅速な位置の決定の必要性に対処するため,更に進んだ衛星を利用した位置決定システムの導入が今後積極的に検討されることとなろう。
 (イ)無線標定業務
 無線標定業務に分配されている周波数帯は,短波帯を除く全周波数帯にわたっているが,主としてパルス方式のレーダに使用されている。低い周波数帯は,精度は低いが探知距離の長いレーダに,高い周波数帯は,探知距離は短いが精度の高いレーダにそれぞれ適している。
 パルス方式のレーダのほか,航空機,船舶,車両等の位置,速度及び高度の測定用としてCW方式(持続電波方式)のものも最近増加している。
 なお,1,606.5kHz〜2,000kHzの中短波帯は,漁業用のラジオ・ブイ及び海洋開発等に伴う局所的な精密位置測定システムにも使用されている。
 キ.その他の地上業務
 気象援助業務,アマチュア業務及び標準周波数報時業務に分配されている周波数帯の状況は,第2-6-12表のとおりである。
(ア)気象援助業務
 気象援助業務に分配されている周波数帯のうち,400MHz帯の4MHzと1.6GHz帯の31.6MHzは,ラジオゾンデ用,気象データを伝送するラジオロボット及びロポット中継用に使用されている。
 また,最近,公害対策としての下層大気の観測データ及び海洋資源の開発のための海洋気象データの伝送等の需要が増大しつつある。
 なお,衛星からの気象観測や衛星を経由する気象観測資料の収集のための気象衛星システムが国際的規模で計画されており,我が国でも52年度に静止気象衛星(GMS),56年度に静止気象衛星2号(GMS-2)の打上げが行われた。使用周波数は400MHz帯及び1.7GHz〜2GHz 帯である。
(イ)アマチュア業務
 アマチュア業務用には,1,810kHzから250GHzまでの周波数帯において,21周波数帯の分配が行われているが,このうち現在使用されているのは14周波数帯である。57年4月から,新たに10,100kHzから10,150kHzまでの周波数帯の使用を認めた。
 アマチュア無線は,電波技術の発展あるいは災害時における通信の確保等に貢献してきており,57年度末現在全国で約55万局の多数の局が運用されている。
(ロ)標準周波数報時業務
 WARC-79において,我が国の提案によって,「標準周波数業務」の呼称は「標準周波数報時業務」に改正され,また,第3地域においては,4MHz,8MHz及び16MHzが共用の基礎で新たに分配された。
 標準周波数報時業務に分配されている周波数帯は,短波帯以下の9周波数帯である。
 標準電波は,周波数,時刻,時間間隔の標準を一般に供することを目的とし,我が国では,郵政省電波研究所(小金井市)が管理する標準周波数信号で変調された2.5MHz,5MHz,8MHz,10MHz及び15MHzの標準電波が名崎送信所(茨城県三和町)から常時発射されている。
 この標準電波は,機器の調整,校正,各種観測,学術研究等に広く利用されている。
(ニ)その他
 簡易無線業務としては,26MHz帯に4波,150MHz帯に9波,400MHz帯に10波,900MHz帯に80波及び50GHz帯に38波を割り当てている。
 58年1月1日より免許を要しないこととなった市民ラジオの無線局に対しては,8波を割り当ててぃる。
 信号報知業務用としては,半径約1km以内の狭い地域で専用に使用するものに対しては,26MHz帯で4波を割り当てている。
 また,一般の利用に供する信号報知業務は,150MHz帯(アナログ方式)で43年7月にサービスを開始して以来,需要は増加の一途をたどっており,ふくそうした150MHz帯での増波は困離な状況となったため,新たに250MHz帯を割り当てることとし,逐次150MHz帯から移行を行っている。250MHz帯のものはディジタル方式で,1波当たりの加入容量が150MHz帯のものの3倍(3万加入)に増大され,58年5月末現在,サービス地域は67地区,加入者数約147万に達している。
 なお,61年5月末までには,すべて250MHz帯になる予定である。
 ク.宇宙無線通信業務
 1971年の宇宙通信に関する世界無線通信主管庁会議(WARC-ST)の結果,衛星を使用する無線通信の業務に対して,275GHzまでの周波数帯で多くの新しい周波数帯が分配され,また,WARC-79においては,新しい周波数帯を含め,更に大幅な周波数帯が増加分配された。我が国においても,これらの周波数帯を使った実験用中容量静止通信衛星,実験用中型放送衛星,静止気象衛星等のほか,58年2月に我が国初の実用通信衛星CS-2a8月に実用通信衛星CS-2bが打ち上げられており,今後,放送衛星2号,通信衛星3号等多くの衛星が計画又は検討されている。
 現在計画中の衛星通信系については,計画が確定され次第,順次附属無線通信規則の定めるところにより事前公表の手続を行い,その後,必要なものについて,関係主管庁との間で周波数の割当てに関する調整を行っている。
 今後,世界的に衛星通信系の数は,一段と増加する傾向にあり,宇宙通信に関する周波数割当ても本格化して行くと考えられる。
 宇宙無線通信業務に分配されている周波数帯の状況は,第2-6-13表のとおりである。
 (ア)固定衛星業務
 固定衛星業務には,2GHz〜275GHz帯の広範囲に分配されており,
 このうち,4GHz帯及び6GHz帯の各500MHzは,インテルサットの国際公衆通信用として世界的に使用されている。
 さらに,将来の大幅な需要増に対処するため,インテルサットでは,現在のIV号系衛星より大型で,11GHz,14GHz帯も利用したV号系衛星を,大西洋及びインド洋上の静止軌道に打ち上げている。我が国においては,国際電電がこの衛星を用いて,11GHz,14GHz帯のサイトダイバシティ実験を行い,実用化に必要な基礎資料を得ることとしてい  る。
 また,我が国が58年2月及び8月に非常災害対策用通信,離島通信等に活用するために打ち上げた実用通信衛星の使用周波数としては,4GHz,6GHz帯のほか,地上系等との干渉等を考慮して,20GHz,30GHz帯の準ミリ波が用いられている。
 (イ)放送衛星業務
 1971年のWARC-STにおいて,放送衛星業務冫こ対して初めて周波数帯が分配されたことを契機として,各国で具体的な放送計画が進められている。我が国においても,12GHz帯を使った実験用中型放送衛星が53年に打ち上げられた。
 WARC-STでは,12GHz帯を他業務との共用で放送衛星業務に分配した。すなわち,11.7〜12.2GHz(第2/第3地域)及び11.7〜12.5GHz(第1地域)を固定業務,移動業務(航空移動業務を除く。),放送業務及び固定衛星業務(第2地域)との共用で分配したわけである。このように複雑な分配との関連で,1977年1月には放送衛星業務の周波数割当計画作成のための世界無線通信主管庁会議(WARC-BS)が開かれた。その結果,第1/第3地域の周波数割当計画が作成された。WARC-BSにおいて,我が国は東経110度の対地静止軌道位置に8波の割当てを受けることとなった。
 なお,この割当計画に伴う上り回線の周波数問題については,WARC-79で審議の結果,14.5〜14.8GHz及び17.3〜18.1GHzが放送衛星業務の上り回線用として専用に分配され,また,14〜14.5GHz等が固定衛星業務の通信網との調整を条件として放送衛星業務の上り回線に使用できることとなった。
 (ウ)気象衛星業務
 気象衛星業務には,400MHz帯及び1.7〜2GHz帯を中心に周波数帯が分配されている。我が国が52年及び56年に打ち上げた静止気象衛星は,衛星からの気象観測や航空機等に設置された通報局からの気象データの収集に利用されており,400MHz帯及び1.7〜2GHz帯を使用している。
 (ニ)海上移動衛星業務
 海上移動衛星業務には,1.5〜1.6GHz帯において周波数帯が分配されている。
 米国が海事衛星通信システム(マリサット)を開発し,1976年7月その利用を世界に開放したのを契機に我が国もこのシステムに参加した。一方,海上移動通信を抜本的に改善するため衛星通信技術を導入した国際海事衛星機構(インマルサット)が設立され,1979年7月には,この条約及び運用協定が発効し,1982年2月から運用を開始した。さらに,我が国は,国内の海上移動通信用の衛星の研究開発も進めている。
 (オ)宇宙研究業務
 宇宙研究業務の周波数帯幅はWARC-79の結果,大幅な分配の増加が図られ,特に40GHz以上の周波数帯では,共用で69.8GHzと受動用の宇宙研究に大幅な分配が行われた。
 我が国では,文部省宇宙科学研究所及び宇宙開発事業団において,科学衛星,技術試験衛星等の開発が進められているほか,関係機関においても,宇宙研究の分野における各種の衛星の研究が進められており,テレメータ,コマンド等衛星の追跡管制用等に136MHz帯,150MHz帯,400MHz帯及び2GHz帯が,また伝搬試験,通信実験用にマイクロ波帯及びミリ波帯の割当てが更に必要になるものと考えられる。
(2)その他
 前記のほか,航空移動衛星業務,地球探査衛星業務,無線航行衛星業務,標準周波数報時衛星業務,アマチュア衛星業務等に対しても,将来に備えて周波数の分配が行われている。
 ケ.電波天文業務
 電波天文業務は,宇宙から発する電波の受信を基礎とする天文学の業務で,周波数の分配は,第2-6-14表のとおりである。
 我が国では,電波天文業務用に専用に又は優先的に分配した周波数帯を受信する設備であって,一定の基準に適合するものについて指定を行い,受信の保護を行っており,現在,1,400MHz〜1,427MHzの周波数を受信する東京天文台の受信設備が指定されている。
(3)周波数登録の現状
 無線局に対し周波数割当てを行うに際し,次の場合,各国はIFRBに周波数の登録通告を行わなければならない。
[1] 当該周波数の使用が他の国の業務に有害な混信を生じさせるおそれがあるとき。
[2] 当該周波数が国際無線通信に使用されるとき。
[3] 当該周波数の使用について国際的承認を得ようとするとき。
 IFRBは,定められた基準に従って,各国から提出された周波数割当通告を審査する。一定の条件に適合するものは周波数登録原簿に記録され,その周波数割当ての国際的地位が確立されることになる。57年8月1日現在の周波数の登録状況は,第2-6-15表に示すとおりである。
 宇宙無線通信業務の局については,衛星通信系を設定しようとする国は,衛星通信系に関する主として技術的な情報を運用開始の5年前からなるべく2年前までに<1>FRBを通じて世界各国に事前に公表する。また,静止衛星通信系の宇宙局と地球局に対する周波数割当て及び1GHz以上で宇宙通信系と地上通信系が同等の権利で分配されている周波数帯を使用する地球局に対する周波数割当ての場合には,登録通告に先立ち,相互に影響があると思われる関係主管庁との間で周波数の調整を行わなければならないごとになっている。
 48年1月1日,現行の事前公表制度が実施されてから58年3月末までに公表された件数は計470件であり,その内訳は第2-6-16表に示すとおりで,ある。

第2-6-3図 無線局に対する割当周波数の推移

第2-6-4表 固定業務用の周波数分配状況

第2-6-5表 放送業務用の周波数分配状況

第2-6-6図 短波放送用周波数登録の年度別推移(全世界)

第2-6-7表 VHF帯及びUHF帯陸上移動業務用の周波数の数(57年度末現在)

第2-6-8表 陸上移動業務用の周波数分配状況

第2-6-9表 海上移動業務用の周波数分配状況

第2-6-10表 航空移動業務用の周波数分配状況

第2-6-11表 無線測位業務用の周波数分配状況

第2-6-12表 気象援助,アマチュア及び標準周波数報時の各業務用の周波数分配状況

第2-6-13表 宇宙無線通信業務用の周波数分配状況

第2-6-14表 電波天文業務用の周波数分配状況

第2-6-15表 国際周波数登録状況(57年8月1日現在)

第2-6-16表 衛星通信系の事前公表状況(57年度末現在)

 

 

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