昭和58年版 通信白書

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8 衝突防止装置(CAS)

 航空交通量の激増により,近年,航空機相互間の空中衝突の危険性が増加してきているのに加えて,航空機の高速化に伴いパイロット自ら衝突防止機能を果たすことは,人間の視認判断による回避操作にも限界があることから極めて困難な状況になってきている。
 CASは,このような背景から,航空機相互間の空中衝突を未然に防止するため,各国で開発が進められているものであり,我が国においても46年7月30日全日空ボーイング727と自衛隊のF86が雫石上空で空中衝突して161人の死者を出す大事故を契機として本格的な開発が始められている。
 我が国で開発しているCASは航空交通管制に利用されている二次監視レーダ(SSR)のモードA/Cを基礎としたB-CAS(Beacon based CAS)である。
 これは第2-7-9図に示したように,SSRと同一の周波数を使用して自機に接近する航空機に対し質問信号を発し,相手機のATCトランスポンダからの応答信号を受信して,この応答遅延時間等から相手機の位置を把握しようとするもので,必要に応じてパイロットに警報を発するものである。
 この方式の特徴は,自機がB-CASを搭載していれば,ATCトランスポンダを搭載している航空機に対し有効に機能することから,漸次導入が可能であること,既存のSSRとコンパティビリティを有することなどが挙げられる。
 一方,ICAOでは,1981年の通信部会会議の勧告に基づいて,SSRの改善と衝突防止装置について検討する機関(SICASパネル)が1981年11月に設置され,SSRモードSとこの信号形態を利用した衝突防止装置の検討が58年5月から始まった。

 

第2-7-9図 CASの概念図

 

 

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