昭和58年版 通信白書

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11 多重放送

 多重放送は,テレビジョン放送や超短波放送(FM放送)の電波の周波数的又は時間的な「すき間」を利用して,別の情報を同時に放送するものであり,電波の有効利用が図られ放送メディアの多様化が期待できる。
 多重方式としては,本来の放送番組との間の相互妨害がなく,良好な品質が得られ,しかも普及性のあることが開発の目標となっている。
(1)テレビジョン多重放送信号を多重する方法として,実用性があると考えられるものは,映像信号の垂直帰線消去期間あるいは音声信号の副搬送波に別の信号を重畳するものである。一般受信者を対象とする多重放送としては,現在テレビジョン音声多重放送,文字放送,ファクシミリ放送,静止画放送等があるが,このうちテレビジョン音声多重放送については,57年12月に放送が開始されている。
 ア.文字放送映像信号の垂直帰線消去期間の一部に,時刻,ニュース,天気予報,聴力障害者向け字幕等の文字あるいは簡単な図形を重畳して放送し,受信側ではアダプタを付加することにより,テレビ受信機のブラウン管上に,単独に,あるいはスーパーインポーズの形で文字又は図形を表示するものである。一般的には,数種類の情報が同時に放送され,受信者側でそれを自由に選択することとなる。
 文字放送の方式については,走査方法,伝送方法,伝送速度,制御信号等の異なるものが開発され,提案されているが,電波技術審議会では,これらの方式を基にして,普及性,発展性,国際性等を考慮し,53年12月に「文字放送の方式の基本」について答申を行った。さらに,これを基に,野外実験,室内実験を行い,56年3月に「文字放送の方式(パターン伝送方式)の技術基準」について答申している。
 また,伝送速度の速い,符号化伝送方式(コード(ハイブリッド)伝送方式)の文字放送についても電波技術審議会において,55年度以来審議が進められており,57年3月にコード(ハイブリッド)伝送方式に関する「文字放送(符号化伝送方式)の方式の基本」を答申した。
 これにより簡易なコードコンバータの接続が可能なパターン伝送方式の受信機の設計が可能となり,この結果,パターン伝送方式の受信機の所有者は,コード伝送方式の放送が開始されても経済的で簡易なコードコンバータの付加による容易な受信が可能となった。
 イ.ファクシミリ放送
 現在のテレビジョン放送にファクシミリ信号を重畳して放送し,受信者はアダプタ及び記録装置を用いて,印刷物の形で情報を得るものであり,ファクシミリ信号を重畳する方法としては,音声副搬送波を利用するものを開発研究している。
 57年度の電波技術審議会では,送信装置の特性の調査,伝送路の所要特性,各種制御信号等について検討を行った。
 その結果,基幹局の現用送信装置でファクシミリ信号を送信することは可能であるが,ファクシミリ信号の重畳による音声搬送波のスペクトルの広がりが映像へ及ぼす妨害の調査では,受信機の中に妨害を受け易い機種があることなどが判明した。
 ウ.静止画放送
 映像信号の垂直帰線消去期間の一部に静止画の信号を重畳して放送するものであり,本来のテレビジョン放送を映画とすれば,静止画放送はスライドに相当する。
 また,テレビジョン音声多重放送と組み合わせて音声付きの静止画放送とすることも可能である。静止画放送は,技術面,利用面とも検討すべき問題が多く残されている。
(2)FM多重放送
 FM放送電波に重畳できる信号については,50年度から電波技術審議会において現行ステレオ受信と両立する4チャンネルステレオ音声信号を重畳すること,現行のステレオ音声信号と別の音声信号を重畳すること,及び1kb/s程度の伝送速度をもつ,データ信号(例えばFM番組を受信する上で役立つ情報や天気予報等)を重畳することについて審議が進められていたが,58年3月答申がなされた。答申では各信号の重畳について,それぞれ解決すべき問題点はあるが可能性はあるとし,また,これらの失施に必要とする具体的な技術的条件の詳細については,多重方式の利用が具体化する段階で,慎重に検討するのが適当であるとしている。

 

 

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