昭和58年版 通信白書

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2 映像通信

 画像応答システム(VRS)は,プッシュホン又はキーボードから画像センタを呼び出し,広帯域ケーブルを介してセンタに蓄積されてぃる各種情報をカラー静止画又は動画でテレビ受像機に映し出し,音声でもサービスを行う複合情報システムである。48年から電電公社で開発が進められており,都内約120端末を対象に実験サービスが実施されてぃる。
 キャプテンシステム(CAPTAIN:Character And Pattern TelephoneAccess Information Network System)は,電話回線を利用して文字図形等による豊富な情報を提供するシステムであり,郵政省と電電公社が関係各方面の協力を得て準備を進め,54年12月より東京23区内の約2,000端末のモニタを対象とし,実験サービスが行われている。システムの運用は,54年2月に設立された財団法人キャプテンシステム開発研究所が行っている。実験サービスに必要な情報については,多分野にわたる約280団体の情報提供者の協力を得ている。さらに,簡易動画,メロディー音,ハイブリッド伝送方式等の機能を確認するとともに,実用システムの開発が進められている。
 諸外国においても,英国電気通信公社の「プレステル」(54年3月商用開始)をはじめ,フランスの「テレテル」,西独の「ビルトシルムテキスト」,カナダの「テリドン」等,各種システムの開発が積極的に進められている。
 なお,公衆電話網を利用した会話形画像情報方式の国際標準化については,CCITTにおいて1978年から「ビデオテックス」と称して審議が行われており,日本のキャプテン方式は,北米のNAPLPS方式,西欧のCEPT方式と同様に国際標準の一つとして,認められる予定である。
 テレライティングは,電話回線を用いて音声と手書情報の2種類の情報を同時に伝送する新しい通信サービスであり,通常の電話及びファクシミリが満たし得ない需要を満たす可能性を持っている。
 我が国では行政用オーディオグラフィー(郵政省),スケッチホン(電電公社),レターホン(国際電電)等が既に発表されており,当面,専用線への適用が検討されている。国外での例としては,「テレボードシステム」(フランス),「スクリボホン」(オランダ)等があり,前者は既に実用化されている。CCITTではこれらの通信サービスを「テレライティング」と命名し,その通信方式の標準化の作業を始めている。
 テレビ電話は電気通信の未来像の一つとして期待され,以前から世界各国が開発に力を入れてきた。我が国でも45年の万国博で利用されたのを始めとして,47年にはグループタイプのテレビ電話が試行され,49年には東京-大阪間で大規模なモニタテストが実施された。このような実用化努力にもかかわらず,従来のアナログ技術に基づいた方式では,テレビ電話の効用に比ベサービス実現に要するコストが高く,現在のところ普及の傾向にない。しかし現段階での普及は難しいとしてもテレビ電話が電気通信の未来像であることに変りなく,各種機能の充実,経済化等システム全般にわたる技術開発,検討が継続して進められている。
 テレビ会議は,遠隔地で臨場感をもって会議が行えるものであり,交通の代替,省エネルギーに貢献するものとして,その実用性は高いと考えられる。我が国では,電電公社により51年5月から57年1月まで,世界で最初のカラーテレビ会議システムがモニタテストとして東京-大阪間で実施された。このモニタテストにおける利用者の意向等を取り入れ,利用者宅内の会議室等に容易に設置でき,かつ,伝送路を多端末で共用するなど,システム全体として経済化を図った新しいテレビ会議方式の開発が進められてきたが,58年4月からは宅内設置形テレビ会議システムの商用試験が開始された。58年度内には本システムによる商用サービスが,東京,名古屋,大阪,神戸地域において開始される予定である。国際テレコンファレンスにつぃては,その技術要件を明らかにするため,国際電電において58年末完成予定で,ビデオコンファレンスモデルシステム(オーディオグラヒックコンファレンス機能を含む。)の開発を進めている。また,59年4月3日〜5日,東京,フィラデルフィア トロント,ロンドン,シドニーの5会場をビデオコンファレンス方式で結んで開催されるInternationaI Teleconference Sym・posiumの技術準備を電電公社の協力を得て進めている。
 CCTV(Closed Circuit Television)の分野では,45年から電電公社の映像伝送サービスが開始されており,道路交通監視システム,外国語にょる有線テレビシステム等に用いられてぃる。このサービスは,比較的短距離区間で使用される場合が多く,当初は既設平衡対ケーブルにょる市内区間のみとされていたが,51年には,中距離のニーズにこたえるため同軸方式や,マイクロ波方式による伝送路を用いて市外伝送が可能となった。現在,約600回線が利用されており,延べ回線距離は約4,000kmとなっている。
 映像の光ファイバケーブル伝送及びディジタル高能率伝送技術についても開発が進められており,前者については平衡対ケーブルに比し中継間隔の増大,被誘導妨害の軽減が可能のため逐時導入が進められている。また,後者については電電公社において,4MHz帯域のカラーテレビジョン信号をディジタル信号に変換して高能率に伝送する6.3Mb/Sフレーム間符号化装置(TRIDEC6.3)及び32Mb/sフレーム内差分符号化装置(32M-DPCM)が実用化され,既にTRIDEC6.3はテレビ会議システムに,また,32M一DPCMは一般の映像伝送サービスの市外区間に適用されている。現在,更にこれら装置のLSI化による経済化,品質の向上を目指した検討が行われているが,他方,一層の高能率帯域圧縮を行う1.5Mb/Sフレーム間符号化装置(TRIDECl.5)についても研究が進められている。
 国際電電においては,インテルサット衛星の一つのトランスポンダ(36MHz帯域幅)で,4回線のニュースTV番組,あるいは2回線の高い画像品質の番組の伝送を可能とする,15/30Mb/sカラーテレビ高能率符号化実験装置が製作された。本装置は,これまで研究を進めてきた,新しい適応予測制御方式である“中央値予測法”を基本とし,動き補償フレーム間予測技術が採用されている。また,本装置は,1982年2月に採択された,ディジタルテレビ伝送の基本原則に関するCCIR勧告604に従ったものであり,世界の二つのテレビ方式(625/50と525/60)に共通に適用できる単一符号化アルゴリズムが開発採用されたことが大きな特徴である。これまでの予備実験によりほぼ予想どおりの優れた特性が達成する見通しが得られた。

 

 

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