昭和60年版 通信白書

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2 日本電信電話株式会社の発足

(1)日本電信電話株式会社の概要

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)は,国内における電気通信事業の経営を目的とする特殊会社である。
 今回の電気通信制度改革においては,従来の電電公社(及び国際電信電話株式会社(以下「KDD」という。))による電気通信事業の一元的運営体制を脱して広く民間企業等の参入を認めることとしたのに伴い,公共企業体である電電公社を基本的に株式会社の性格を有する特殊会社に改組し,その経営の一層の効率化,活性化を図ることとしたものである(第1-1-2表参照)。
 NTTに対する政府の関与は,会社が経営の自主性を確立し,自らの創意工夫を発揮した事業運営を図り得るよう,必要最小限のものとしている。具体的には,政府の認可は毎事業年度の事業計画,役員の選任及び解任,新株式の発行等基本的事項に限定したものとなっている。
 なお,労働関係法制については,株式会社になったことから,公共企業体等労働関係法の適用を外された。
 (巨大企業の発足)60年4月に民間企業となったNTTは,59年度末現在の総資産10兆8千億円,社員31万人,また,60年度の事業計画における収益5兆円と我が国でも有数の巨大企業として発足した。

(2)NTTの事業範囲

 電電公社においては,その業務・投資範囲は,公共的使命の遂行が設立の目的である公社としての性格から,一定の範囲に制限がなされていたところであるが,NTTにおいては,会社の経営上必要とされる幅広い事業活動を営むことが認められており,以下のような新規業務の提供あるいは子会社の設立が行われている。
 NTTの新規業務のうち,国内電気通信事業に附帯する業務として端末機器の売渡し等が実施されており,また,目的達成業務として電話部門の余剰人員の活用を図るという観点から,テレホン・オペレータによる各種利用案内,伝言取次ぎサービスが実施されている。
 また,子会社については,NTTの有する資本力・技術力・人材を利活用するという観点等から,リース,コンサルティング,ソフトウェア開発等をそれぞれ主たる目的とする会社が設立されている。

(3)NTTの責務

 NTTは,電電公社がこれまで培った設備,技術力,全国ネットワーク,経営ノウハウ等をそのまま引き継ぐ事業体であることから,他の新規参入事業者にはない公共的使命,役割が負託されている。
 (適正かつ効率的な経営)
 公共企業体から離れ,民間企業として新規参入事業者をはじめ他の事業体と競争を展開していく中にあっては,電気通信市場の公正な競争の維持とともに,コスト意識の徹底と収益性を志向した,適正かつ効率的な事業の経営に努める必要がある。
 (電話サービスの日本全国における安定的な供給)
 電話は,国民生活に不可欠な通信メディアであることから,全国ネットワークの維持・運用を通じて,適切な条件で公平に,全国あまねく安定的にサービスを供給する必要がある。
 (電気通信技術に関する研究及びその成果の普及)
 電気通信分野は,技術先導性が高く,基礎的先端技術の開発等,研究開発のウェイトが高い分野であり,今後とも強力かつ効率的に研究開発を進める必要がある。
 これまで,この分野でリーダー的立場を維持してきた電電公社の役割にかんがみ,長期的視点に立った電気通信技術の実用化研究及び基礎的研究の推進に努めるとともに,その研究成果を自社内にとどめることなく,我が国の電気通信技術の向上・発展のため普及させることが必要である。

第1-1-2表 電電公社とNTTの比較

 

 

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