昭和60年版 通信白書

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5 安全性・信頼性対策の確立

  (安全性・信頼性対策の必要性)
 通信の高度化は,我が国社会経済に多大な利便向上をもたらすとともに,通信への依存度の増大を伴うものである。そのため,いったん,自然災害等によりシステムに障害が発生すると,単に通信が途絶するのみならず,国民生活,企業活動等,社会のあらゆる局面において重大な影響を及ぼす。59年11月16日に発生した世田谷電話局とう道火災は,こうした社会経済の通信への依存度が極めて高いことを示した。
 さらに,このようなネットワークのハード面でのぜい弱性に加え,データベース化の進展に伴い,データの漏えい等ソフト面でのぜい弱性も懸念されつつあり,安全性・信頼性の確保に向けて、より一層の対策を図っていく必要がある。
 (安全性・信頼性対策の確立)安全性・信頼性対策としては,技術的対策のほか,制度的対策,保険によるなどの対策が考えられる。技術的対策には,地震,風水害等の自然災害や設備の故障等に対処するものとして,機器,建造物等の強化や分散化,回線の多ルート化,予備機の設置,また,利用者等による犯罪や不正行為に対処するものとして,データの暗号化,アクセスコントロール等がある。郵政省では,データ通信システムへの依存度が極めて高くなっていることから,データ通信システムの共同バックアップシステムとして,データ通信総合安全対策システムの検討を現在進めている。
 一方,制度的対策には,安全性・信頼性の基準や評価制度の導入等に関する法制度の充実等がある。現在,郵政省ではデータ通信ネットワークの安全性・信頼性を確保する上での望ましい基準として「データ通信ネットワーク安全性・信頼性基準」及び個々のデータ通信システムの通信方式や安全性・信頼性に関する状況を公開する必要性があるという観点から「情報通信ネットワーク登録規程」をそれぞれ告示している。
 今後は,高度情報化の進展に伴い,事故,災害,犯罪等に対する社会のぜい弱化を回避するための安全性・信頼性対策の充実を図ることは,ますます重要となってくる。そのため,各種のネットワークに係る推奨的な安全性・信頼性基準の策定,利用者が安心して利用できるための保険制度の導入に関する検討等総合的に安全性・信頼性対策を推進していくことが必要である。
 (世田谷電話局とう道火災とその対策)
 世田谷電話局付近のとう道内で発生した火災は,市内ケーブル及び市内中継ケーブルを焼失させ,これにより,加入電話8万9千加入,公衆電話1干4百個が不通になったのをはじめ,大規模なデータ通信システムが機能停止に陥った。事故による影響を最小限のものとし,速やかな復旧を図るため,郵政省と電電公社では,応急措置として可搬型無線機の設置,通信衛星の利用等を,また復旧に向けて,昼夜兼行の作業によるケーブルの取替え,接続等の措置を講じた。
 この火災事故を契機に,回線の2ルート化対策として「異経路による特定通信回線等の設置」に関して制度化が行われるとともに,とう道の管理・防火対策,予備設備の配備の重要さが更に認識され,今回施行された電気通信事業法の関連規則においても,これらに関する規定が盛り込まれた。このほか,ケーブルの難燃化対策,災害発生時の損害賠償の在り方,保険制度の導入等が検討されている。

昼夜兼行で行われた復旧作業

 

 

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