昭和60年版 通信白書

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6 通信の高度化に向けて

 (競争水準の向上を目指して)21世紀に向け高度情報社会を形成していくための基盤的役割を担う電気通信の高度化は,今後,電気通信事業分野において展開される競争の水準をいかに高めていくかに大きくかかっている。
 競争水準の向上は,事業者自身の責任と努力によることが基本であるが,国の補完的役割も重要である。本節で述べた各種の施策は,高度情報化への展望を明示し,事業者の競争力を高め,また,競争の過程で生ずるあつれきをでき得る限り回避するためのものであり,競争水準の向上を図る上で,今後,一定の役割を果たしていくものと期待される。
 (研究開発の推進)
 研究開発を進めるには限られた財源の中で,有効かつ効率的に行うことが望ましい。
 郵政省では,技術開発において重点を置くべき研究分野・課題等を明らかにするため,電気通信に関する基盤技術研究指針を策定し,60年6月に発表した。同指針は、公的に支援するのが適当な電気通信分野の基盤技術の研究課題として,[1]マンマシンインタフェース技術,[2]自動翻訳電話システム,[3]ソフトウェア,[4]光通信基盤技術,[5]宇宙通信技術,[6]生体機能の通信への応用,[7]新材料及び新機能素子,[8]新通信メディア,[9]電気通信の高度化,高信頼化等に関するその他の技術を挙げている。
 指針は,広く我が国電気通信分野における研究開発の効率化・高度化に大きな役割を果たすものと期待される。
 (通信の活動領域拡大のために)
 電気通信の高度化を図っていくためには,競争水準の向上と併せて,競争が生み出す高度で多様な通信メディアやサービスが,国民にとって真に身近で有用なものとなり,より広範な分野,より多くの局面で活用される環境を整えていくことが重要となる。
 そのため,データベースの充実,プライバシーの保護,適正な料金体系の確立等を図っていく必要があるほか,新しい通信メディアやサービスがその機能を充分に発揮し得るよう法律・制度の見直しを行うとともに,効率的・安定的なシステムの構築や利用に関する助言を行い得る人材の育成を急ぐ必要がある。
 また,通信の高度化に当たっては,通信と人間との調和が確保されることが重要であり,技術偏重のあまり,人間性が疎外されることのないよう,社会の仕組み全体の中における通信の在り方について,幅広い視野からの配意が求められる。
 電気通信は国民の共有財産であり,その高度化は事業者,利用者,国の三者が一体となってはじめて達成されるものである。こうした中で,国の基本的役割は,長期的,総合的な観点から事業者,利用者双方の利益を国民的利益へと誘導することにあり,常に現状の的確な把握に努め,高度化の進展度合いに応じた機動性,柔軟性に富んだ施策の遂行が必要である。

 

 

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