昭和60年版 通信白書

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1 実用化の進展する宇宙通信

 米国をはじめとする諸外国において宇宙通信の実用化が進む中で,我が国においても通信衛星2号(CS-2)及び放送衛星2号(BS-2)によるサービスが開始され,宇宙通信の実用化が進展している。
 (衛星通信サービスの開始)
 58年2月及び8月に打ち上げられたCS-2は,これまでの離島通信,非常災害時通信,臨時通信といった地上系回線の補完的利用に加えて,現在,通信衛星の有する同報性,広域性という特質を生かした新しい衛星通信サービスを開始するに至っている。
 60年2月に開始された衛星通信サービスには,衛星ディジタル通信サービスと衛星ビデオ通信サービスがある。このうち衛星ディジタル通信サービスは高速のディジタル回線を提供するもので,高速データ伝送,高速ファクシミリ伝送,新聞紙面伝送,テレビ会議等に利用可能である。
 また,衛星ビデオ通信サービスは,4MHzのカラー映像伝送と10kHzの音声伝送ができる回線を提供するもので,有線テレビジョン放送事業者への番組伝送等に適している。
 (衛星利用パイロット計画とCS-3)
 CS-2の利用が進展する一方で,郵政省では,通信衛星の高度利用に向けて,CS-2を用い,衛星を使用する機会をできるだけ広く一般に提供し,利用に当たっての具体的な技術,ノウハウを蓄積させることを目的とする「衛星利用パイロット計画」を62年度までの予定で進めている。同計画に基づき,現在,大容量ファイル転送,LAN(ローカルエリアネットワーク)間通信,ビデオテックス,テレビ会議等が可能な統合ディジタル通信を内容とするコンピュータ・ネットワーク実験並びに新聞紙面等伝送実験が実施されている。60年度の実施計画では,延べ20グループ,52機関の参加が予定されている。
 さらに,CS-2に続く第二世代通信衛星CS-3の開発については,宇宙開発委員会が60年3月13日に決定した宇宙開発計画において,本機CS-3aを62年度に,予備機CS-3bを63年度にそれぞれ打ち上げることを目標に引き続き開発を進める旨計画されている。
 (通信衛星の利用拡大に向けて)
 こうした国による通信衛星の利用計画が進む中で,60年4月1日からは,電気通信事業法の施行により,民間自らの手で通信衛星を運用して電気通信事業を営むことが可能となった。6月21日,2社が事業の許可を受け,通信衛星を使用した新たな電気通信事業の開始に向けて準備を進めている。今後これらの衛星通信事業が開始され,衛星を利用した多彩なサービスが提供されるものと期待されている。
 (テレポート構想の動向)
 さらに,通信衛星の新たな利用形態として,世界的に地域開発と利用者の利便性向上を目的とする情報通信基地「テレポート」建設の構想が提唱されている。現在計画されているテレポートは,都市に衛星通信の受発信基地を設けるもので,この基地と周辺のオフィスビルを通信回線で結び,都市に必要な様々な情報を扱うほか,内外各地との接続を可能とすることにより,国際的,国内的情報通信拠点を目指すものである。
 60年4月には,世界各都市の情報ネットワーク化を目指し,東京で世界テレポート会議が開催された。
 (難視聴解消と放送衛星)59年1月に打ち上げられたBS-2aは,一部の中継器に故障が発生したため,正常な中継器1系統を用い,NHKによって,59年5月から総合テレビジョン放送の番組を基本とした試験放送が実施されている。
 これにより,小笠原,南・北大東島等の離島のほか,山間部等に散在化する残存難視聴地域等での受信改善を効果的に図ることが可能となった。
 (放送衛星への期待)
 BS-2aの予備機であるBS-2bは61年2月に,また,BS-2に続く第二世代の放送衛星であるBS-3は,本機BS-3aについては65年度に、予備機BS-3bについては66年度にそれぞれ打上げが予定されている。
 また,BS-2を利用して,高精細度テレビジョン放送,PCM音声放送,静止画放送等の新しい放送サービスのための技術開発を行うことが計画されている。

通信衛星2号(CS-2)

 

 

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