昭和60年版 通信白書

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2 通信処理技術

 通信処理技術は,コンピュータ等を駆使して高度な通信を実現するための技術であり,高度情報社会へ向けて今後一層重要になる技術である。
 (自動翻訳電話システムの開発)
 我が国の国際関係への依存度が日々増加している中で,我が国の宿命ともいうべき言語の孤立性を克服し,より円滑な国際通信を実現するために,自動翻訳電話システム構築への要望が高まりつつある。
 自動翻訳電話システムの構築のためには,音声認識,機械翻訳,音声合成の三つの要素技術が中心となり,これらの技術研究・開発が必要であるが,さらにこれらを支える基礎的技術として,コミュニケーションサイエンス,知識処理・言語処理技術等の研究が必要となる。
 音声認識については,現在,話者があらかじめ自分の声を登録しておいて使用する特定話者認識で,最大約500の離散単語(離散的な発声による単語)について,98〜99%の認識率が得られており,また,不特定話者認識では,約30の離散単語で95〜98%の認識率が得られている。しかし,自動翻訳電話システムを実現可能なものとするためには,連続発声かつ不特定話者の音声認識が必要となるため,この認識率向上の技術はこれからの課題である。一方,音声合成については,自動翻訳電話システムでは任意文の音声合成が必要となるため,音声の基本的な単位である音素自体に関する研究を進めるとともに,めいりょう性や,自然性の向上を図るため,アクセントやイントネーションの位置を決定する技術,登録音声の韻律を自由に調整するための技術の開発が必要である。機械翻訳技術に関しては,翻訳対象が会話であるため,省略文あるいは用いられる環境によって異なる意味となる文等が多用されることから,文脈の意味を解しての翻訳が必要となり,意味変換及び文脈理解の研究が要請される。
 また,翻訳システムを実現する上では,大規模な辞書データベース及び言葉の表す概念等を記述したデータベースを構築する必要があり,運用面も含め,データベース関連技術の開発も重要である。
 郵政省では,60年6月に自動翻訳電話システムの開発全体の計画であるマスタープランを取りまとめた。

 

 

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