公表資料

平成15年7月25日
総務省 奈良行政評価事務所



社会福祉法人の指導監督に関する行政評価・監視結果(要旨)

 総務省は、平成15年7月25日、「社会福祉法人の指導監督に関する行政評価・監視」の結果に基づき、厚生労働省に対し、社会福祉法人の運営の適正化、社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の適正化について勧告を行う。
 この調査は、奈良行政評価事務所など全国14の管区行政評価局及び行政評価事務所が、奈良県など14道府県において平成14年4月〜7月に実地調査を行ったもので、奈良行政評価事務所では、総務大臣の勧告に併せて、奈良県に対して当事務所の調査結果を踏まえ参考通知を行う。

実施の背景事情
 社会福祉法人は、社会福祉法(昭和26年法律第45号)に基づき、養護老人ホームの経営、居宅介護事業などの社会福祉事業を行っており、全国的に社会福祉施設を経営する法人の数、施設数、施設在所者数が増加している。

  平成4年度       平成13年度
(法人数) 約1万1,000     約1万4,000
(施設数) 約1万9,000     約4万1,000
(在所者数) 約107万     約153万

 総務省は、厚生労働省に対して、平成4年6月及び9年7月に「社会福祉法人の指導監督に関する行政監察」結果に基づき、管理運営体制の適正化、社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の適正化等について勧告している。また、平成10年11月及び12年3月に「補助金等に関する行政監察」結果に基づき、補助金の採択審査の適正化等について勧告している。
 平成12年6月、社会福祉事業法(現社会福祉法)が改正され、厚生労働省は、社会福祉法人審査基準(平成12年12月1日付け大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護・老人保健福祉・児童家庭局長連名通知、以下「法人審査基準」という。)及び社会福祉法人定款準則(平成12年12月1日付け同上、以下「法人定款準則」という。)を改定するなど、改善措置を講じてきているところであり、その徹底が求められている。
 この行政評価・監視は、社会福祉法人における社会福祉事業の適正な運営を確保する観点から、社会福祉法人の運営状況及び社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。

奈良行政評価事務所の調査対象機関等
 奈良県、社会福祉法人(10法人)
 なお、調査対象14道府県はつぎのとおり。
    北海道、宮城県、青森県、埼玉県、栃木県、千葉県、愛知県、大阪府、奈良県、広島県、島根県、徳島県、福岡県、佐賀県

調査結果

 社会福祉法人の運営の適正化
 社会福祉法人(以下「法人」という。)は、社会福祉法のほか、厚生労働省が定めた法人審査基準及び法人定款準則等に基づき適正な運営を行うことが求められている。
 厚生労働省、都道府県、指定都市及び中核市は、法人に対し、法人設立認可、法人監査等を通じて、法人が適正な運営を行うよう指導することとされている。

〔奈良行政評価事務所の調査結果〕
   奈良県内の社会福祉施設を経営する法人(社会福祉協議会を除く。)のうち10法人を抽出し、法人の組織運営状況について調査した結果、6法人において以下のような状況がみられた。
1)  法人定款準則において、法人業務のうち、日常の軽易な業務は理事長が専決することとされ、理事会があらかじめ理事長の専決事項を具体的に法人の定款細則等で定めておくこととされているが、専決事項を定めていない法人がある(4法人)。また、理事長専決事項のうち、契約については専決できる金額(限度額)を規定しておくこととされているが、専決できる金額(限度額)を規定していない法人がある(2法人)。
 法人定款準則において、施設長の任命については、理事会の議決事項であり、理事長が専決できないとされているが、理事長が専決している法人がある(1法人)。
2)  平成12年12月に改正された法人審査基準において、法人の諮問機関として、評議員会を設置することとされたが、設置していない法人がある(2法人)。
3)  法人定款準則の改正が平成12年12月に行われ、法人の定款に経営の原則、役員の報酬、評議員会の位置付け(諮問機関)、財務諸表の開示等を盛り込むこととされたにもかかわらず、これに対応した定款の見直しが行われていない法人がある(2法人)。
4)  法人審査基準においては、実際に法人運営に参画できない者を役員として名目的に選任することは適当でないとされているが、各法人の役員会への出席状況をみると、年間6回開催した理事会にまったく出席していない理事がみられる(1法人)。
5)  社会福祉法第31条等においては、法人の行う事業については定款をもって定め、また、定款に定めた事業については実施が義務付けられているが、既に廃止した事業(福祉用具貸与事業)を定款に実施事業として記載している法人がある(1法人)。

       平成13年度現在、奈良県の社会福祉施設を経営する法人数(社会福祉協議会を除く)は112法人。

 <参考:厚生労働省に対する勧告要旨>
 都道府県、指定都市及び中核市に対し、以下の事項について、技術的助言を行うこと。
1)  今回の調査の結果、組織運営に不適切な事項がみられた法人に対し、早急に改善を図るよう指導すること。
2)  法人に対し、組織運営に当たっては、法人審査基準、法人定款準則等にのっとり、厳正に行うよう指導すること。

 社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の適正化
 社会福祉法人が設置する社会福祉施設又は設備の整備については、これらに要する費用のうち補助対象経費の2分の1を国が、4分の1を都道府県が、それぞれ負担(補助)することとされている。これら国庫補助金の平成13年度の総額は、約1,365億円(奈良県では約31億円)となっている。
 このような国の補助金については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律によって公正かつ効率的に使用されるように努めなければならないこと、また、補助事業者等は、補助事業等により取得した財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反した使用等を行ってはならないとされている。

〔奈良行政評価事務所の調査結果〕
   上記1において調査対象とした10法人のうち、平成9年度から同13年度までの間に社会福祉施設・設備の整備に係る国庫補助事業を実施した5法人について、その実施状況を調査した。その結果、奈良県において国庫補助事業の採択に当たり、施設利用見込み等の厳正な審査が行われていなかったこと、また、施設整備後の補助金監査が的確に行われていなかったこと等から、2法人において整備した施設が補助金の交付目的どおりに利用されておらず、他の用途に使用されているもの等が4事例みられた。
1)  国庫補助事業により老人デイサービスセンターを整備し、同時に老人居宅介護等事業のためのヘルパーステーション(50.75平方メートル)を設置し、平成12年12月に開所したが、同事業を開始していなかったため、ヘルパーステーションとして使用せず、物置として使用していた。
 なお、同法人は、平成14年12月から老人居宅介護等事業を開始し、当該室を補助目的どおりヘルパーステーションとして使用している。
2)  国庫補助事業により特別養護老人ホームを整備し、同時に老人居宅介護等事業のためのヘルパーステーション(54.9平方メートル)を設置し、平成14年1月に開所したが、同事業を開始していなかったため、ヘルパーステーションとして使用せず、会議室等として使用していた。
 なお、同法人は、平成14年12月から老人居宅介護等事業を開始し、当該室を補助目的どおりヘルパーステーションとして使用している。
3)  国庫補助事業により特別養護老人ホームを整備し、平成14年1月に開所したが、同施設内の宿直室(21.2平方メートル)に自動火災報知設備の受信盤が設置されていなかったため、宿直室を使用しないで空き室のままとしていた。
 なお、同法人は、当事務所の実地調査後の平成14年7月、自動火災報知設備の受信盤を設置し、当該室を補助目的どおり宿直室として使用することとした。
4)  国庫補助事業により特別養護老人ホームを整備し、平成14年1月に開所したが、同施設内の静養室(24.0平方メートル)を事業開始時から静養室としては使用しておらず、事務机等を置き、事務室として使用していた。
 なお、同法人は、当事務所の実地調査後の平成14年7月から、事務室としての使用を取りやめ、補助目的どおり静養室として使用することとした。

 <参考:厚生労働省に対する勧告要旨>
 都道府県、指定都市及び中核市に対し、以下の事項について、技術的助言を行うこと。
 補助事業の採択に当たり、施設・設備の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行うこと、また、補助金で整備した施設の交付目的に沿った使用を確保するため、補助金監査を的確に実施すること。

(注) 全国(14道府県)の調査結果は、こちらをクリック