鉄道事業の安全確保及び旅客サービスに関する行政評価・監視の結果(要旨)

総務省近畿管区行政評価局

   近畿管区行政評価局(局長:浅井八郎)は、平成14年8月〜11月、「鉄道事業の安全確保及び旅客サービスに関する行政評価・監視」を実施し、その結果、プラットホ−ムの安全対策、踏切遮断機の維持管理及び駅施設等に係るバリアフリ−対策について、一層の推進を図るよう12月2日(月)、近畿運輸局に対して通知。

  1    調査の背景事情等
   鉄道輸送は、大量性、定時性に優れた輸送機関であり、近畿運輸局管内では40事業者(公営3、民営36、その他1)が事業展開。
管内の鉄道網の整備状況は日本でも有数。
   安全輸送の面では、依然、運転事故が絶えず、平成13年度の事故発生件数は182件(列車脱線、踏切障害、人身障害等)。このうち79件(43.4%)が踏切道で発生。
   さらに、乗降客数5千人以上の駅等では高齢者・身体障害者等の移動を円滑化するバリアフリ−対策が必要。

   調査対象等
      近畿運輸局(鉄道部)
      6鉄道事業者、関係2団体

   近畿運輸局に対する主な通知事項
      1) プラットホ−ムの安全対策の的確な実施
      2) 踏切遮断機の適切な維持管理
      3) バリアフリ−対策の一層の推進





      
調査結果


1 プラットホ−ムの安全対策の的確な実施

   6鉄道事業者を調査した結果、1) 線路が急カ−ブしていることによりプラットホ−ムと車両の乗降口との隙間が大きく開いている(4事業者)、2) プラットホ−ムの幅員が狭い、又はプラットホームにある跨線橋や地下道付近の通路部分が狭い(3事業者)ものがあり、必要により旅客の転落を防止するための措置の一層の推進が必要。

   昭和62年以前の鉄道の施設、地形的な事情から特別許可を得た施設等については、線路の曲線、プラットホ−ムの幅員等の構造が一定の基準に達していなくても、今後、事業者が施設の改良工事を行う時点まで改善することを猶予。
   一方、事業者はプラットホ−ムと車両との隙間が大きい場合は旅客に注意を喚起する等の措置が必要。

【改善意見】 
   近畿運輸局は、プラットホ−ム上での旅客の安全を推進する観点から、一定の基準に満たない施設の構造が改善されるまでの間は、鉄道事業者に対し、必要により旅客の注意を喚起する措置の一層的確な実施に努めるよう指導する必要がある。


2 踏切遮断機の適切な維持管理

   6鉄道事業者(15路線)の踏切遮断機を調査した結果、踏切遮断桿(しゃだんかん)の先端が道路に接地しているもの等があり、維持管理が不十分。

 1)    遮断桿の先端が道路に接地しているものや、遮断桿が道路面上80cmの高さで水平という維持管理基準を下回っている(25箇所、5事業者)

 2)    遮断桿が踏切道上に張られているワイヤ−に引っ掛かり、約60度の角度で半開状態となっている(1箇所、1事業者)

 3)    遮断桿の中央部分に開口部が生じているものなど、遮断装置が踏切道の幅員全体にわたり遮断する状態になっていない(12箇所、4事業者)

 4)    遮断桿の黄色又は黒色の塗装が日射・風雨などにより退色し視認性にかける(35箇所、3事業者)

【改善意見】
   近畿運輸局は、鉄道事業者に対し、 踏切遮断機の維持管理をより一層適切に実施するよう指導する必要がある。


3 バリアフリ−対策の一層の推進

   4鉄道事業者を対象に利用者数が多い13駅のバリアフリー対策を調査した結果、エレベーターや身障者トイレへの案内表示が不十分なもの等があり、一層の取組が必要。

 1)    プラットホームの一部に視覚障害者が線路内に転落するのを防止するための点字ブロックがない、又は階段下に不十分な高さの空間があり視覚障害者が衝突するおそれがある等(4駅(6箇所)3事業者)

 2)    エレベーターの設置等による段差解消が図られていない等(8駅、4事業者)

 3)    車いす対応トイレが整備されていない(3駅、3事業者)
 4)    エレベーターや車いす対応トイレが分かりにくい位置に設置されているにもかかわらず案内表示が十分でない(4駅、3事業者)

 5)    点字ブロックにより誘導している自動券売機が、視覚障害者では利用が困難な点字表示のないタッチパネル式のものであったり、点字テープが貼付されていないなど(3駅、3事業者)

【改善意見】
   近畿運輸局は、鉄道事業者に対し、バリアフリー対策を計画的に推進するとともに、一層適正な維持管理を行うよう指導する必要がある。

≪参考≫
   国は、バリアフリー化の確実な推進を図るため、「移動円滑化の促進に関する基本方針」を示し、2010年までに、1) 1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上である駅については、原則として全ての駅をバリアフリー化する、2) 車両については、総車両数の約30パーセントに当たる約15,000両をバリアフリー化された車両とするなどの目標を定めており、当該目標を着実に実現していくため、実施計画を策定すること等により、計画的にバリアフリー化を進めていくことが重要であるとしている。




<資料>
○   交通バリアフリー法の仕組み(PDF)


調査対象機関からの回答については、こちらをご覧ください(PDF)