国道の維持管理等に関する行政評価・監視
−直轄国道を中心として−結果(要旨)

第1    調査実施時期
平成13年12月〜14年3月

第2  対象機関
九州地方整備局、福岡国道工事事務所、北九州国道工事事務所、熊本工事事務所、宮崎工事事務所及び延岡工事事務所

第3  実施の背景
   一般国道(以下「国道」という。)は、高速自動車国道とあわせて全国的な幹線道路網を構成し、国土を横断し、又は循環して、都道府県庁所在地を連絡するもの等で、産業・経済や社会を支える基幹設備である。
   国道において、最近では案内標識の不備や沿道の植栽で車と歩行者の双方から確認しにくい等の相談が寄せられているほか、案内標識の一部が剥離し落下するという事故の報道例もあり、より一層の安全確保対策が求められている。
   また、道路通行の支障となっている国道の不法占用事例もみられる。
   この行政評価・監視は、国道における道路標識、防護柵等の整備など道路通行者の安全確保対策等を、より一層推進する観点から、国土交通省が管理する直轄国道を中心として維持管理等について調査し、関係行政の改善に資するため実施した。

第4  通知年月日及び通知先
 1 通知年月日 平成14年4月18日
 2 通知先 九州地方整備局

第5  担当部局
九州管区行政評価局、熊本行政評価事務所、宮崎行政評価事務所

第6  調査結果

1  道路通行者の安全確保対策
(1) 道路及び交通安全施設の管理
【制度の仕組み等】
   道路は常時良好な状態に保つように維持、修繕の必要(道路法第42条第1項)
   道路管理者が設置する交通安全施設(道路構造令第31条)
   九州地方整備局管内の各道路関係工事事務所では、九州地方整備局が作成した「道路巡回マニュアル」に基づく維持出張所による道路巡回等での要補修個所の把握及びその結果に基づく維持修繕等の実施などにより、維持管理を推進

【調査結果】
   九州管区行政評価局、熊本行政評価事務所及び宮崎行政評価事務所において、九州地方整備局管内の福岡県、熊本県及び宮崎県内の直轄国道の道路及び交通安全施設の管理状況を調査。
   適切な維持管理に努めているものの、一部の施設に、次のような不十分な状況がみられた。

〔道路−歩道及び車道を対象−〕
   <<車道の路肩の一部に側溝があるがグレーチング等蓋がないためバイク等が誤って転倒する可能性があるものや、歩道に段差を生じているなどにより歩行者等が転倒するおそれ>>
〔交通安全施設〕
さく(防護柵)
<<歩道と水路が交差しているにもかかわらず、歩行者自転車用柵が設けられていないことから、歩行者等が水路に転落するおそれがあるものなど>>
視線誘導標
<<視線誘導標が必要な箇所に設けられていないものなど>>
横断歩道橋
<<横断歩道橋の階段にコンクリートの欠落や滑り止めのゴムの浮き上がりがあり、降雨時には歩行者が足を滑らせる可能性があるものや橋上部分に設けられている雨水の排水口がむきだしとなっており歩行者が足をとられるおそれ>>

〔背景〕
   道路関係工事事務所や維持出張所では、パトロール車からの目視や徒歩による巡回、また歩道等の構造物の定期点検などの道路巡回を通じて、道路の点検を行っているものの、これらの事例は、道路の巡回が車上からの路面の異常など直接道路交通の支障となる事象の把握が主となっていること、かつ、巡回項目が広範にわたることなどから十分に把握ができていなかったことなどに起因しているものである。

−改善所見−

 九州地方整備局は、より一層道路の安全かつ円滑な通行を確保する観点から、次の措置を講じる必要がある。
1)    道路巡回の実施に当たっては、効果的な巡回となるように、更に的確な重点項目の設定などの工夫を講じ、かつ、十分な問題意識を持った点検などを徹底することにより、不十分な箇所の把握に努めること。
2)    不十分な箇所のうち事故防止上緊急を要するものについては、速やかに改善措置を講じるとともに、多大な予算措置を伴うようなものなどについては、計画的な改善を推進すること。

(2) 道路標識(案内標識及び警戒標識を対象に調査)
【制度の仕組み等】
   道路標識は、案内標識、警戒標識、規制標識及び指示標識からなり、案内標識及び警戒標識・は、道路管理者が設置
   道路標識の種類、設置場所及び様式については、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(昭和35年12月17日総理府、建設省令第3号)
   道路標識を整備する際に考慮すべき整備水準及び設置方法等は、「道路標識設置基準」(昭和61年11月1日)
   九州地方整備局管内の各道路関係工事事務所では、道路標識設置基準に基づき道路標識の整備を図るとともに、九州管内の主要な道路管理者により構成される「九州ブロック道路標識適正化委員会」が作成した「案内標識設置指針」に沿って、道路標識の整備を推進

【調査結果】
   九州管区行政評価局、熊本行政評価事務所及び宮崎行政評価事務所において、九州地方整備局管内の福岡県、熊本県及び宮崎県内の国道の道路標識を調査
   わかりやすい道路標識の整備に努めているものの、道路標識の一部に、次のような不十分な例がみられた。

 ○ 案内標識
<<行き先地名が適切に表示されていないものや道路番号・距離が誤って表示されているものなど>>
 ○ 警戒標識
<<必要と思われる場所に設置されていないものや実際の道路形状と異なって表示されているものなど>>

〔背景〕
    1−(1)の背景と同じ。

−改善所見−

   九州地方整備局は、より一層道路標識による道路利用者の利便性の向上及び通行の安全確保を図る観点から、次の措置を講じる必要がある。
1)    案内標識や警戒標識の設置が必要な事例、道路の形状と異なっている事例、その他視認により把握が可能な事例等については、日常の道路巡回などにおいて、更に適切な把握に努めること。併せて案内標識の表示内容等については、再点検に基づき表示内容についての十分な検討を行い、所要の見直しを行うこと。
2)    道路標識が未設置又は標識の表示内容の適切な改善が必要なものなどについては、その緊急度に応じて適切な改善を行うこと。

(3) 道路工事現場における安全確保対策の励行
【制度の仕組み等】
   道路工事には、道路管理者が発注者となる直轄道路工事と道路管理者以外の者が発注者となる占用道路工事(例:下水道管工事や電話線等埋設工事など)あり
   道路工事の安全確保対策に関しては、各種通達等によって、工事施工業者は、適切な防護施設の設置、安全な歩行者用通路の確保、適切な工事標示板の設置等を行うことにより、工事における公衆災害の防止、道路交通の安全かつ円滑な運行等を確保することなどが必要
   国道工事事務所は、直轄工事の場合は施工計画段階で、占用工事の場合は占用許可申請段階で保安対策図等により、安全確保対策の内容を確認し、必要に応じて施工業者又は許可申請者を指導するとともに、道路直轄工事の場合は現場監督業務の中で施工業者に適宜指導することなどを実施

【調査結果】
   九州管区行政評価局において、福岡県内の直轄国道の道路工事現場を調査。
   概ね適切な安全確保対策が図られていたものの、一部に次のような不十分な状況がみられた。

1)    工事現場の保安施設が車両の通行に支障となっている事例(1件)
2)    歩行者通路が確保されていない事例(4件)
3)    道路利用者に工事現場等の内容を周知する工事標示板の設置が不適切な事例(16件)

−改善所見−

   九州地方整備局は、道路工事現場における通行者の安全確保等を図る観点から、直轄工事施工業者及び占用許可申請者に対し、更に通達等に基づく安全確保対策を励行するよう指導を徹底することが必要

2  道路の不法占用対策の推進
【制度の仕組み等】
   道路を占用しようとする場合は、道路管理者の許可を受けなければならない(道路法第32条)
   道路管理者は不法占用物件について、占用の許可が可能なものは許可手続を、許可が不可能なものについては、改造(許可可能な状態にした上で許可申請手続を実施)若しくは撤去を指導
   国土交通省では、道路の不法占用を是正し道路の適正な利用を促進するため、直轄国道区域内に不法に設置されている看板、日除け、アーケード等を対象に、外部委託により、その実態把握、個別指導等を行う道路占用適正化促進事業(以下「適正化事業」という。)を実施

【調査結果】
   九州管区行政評価局、熊本行政評価事務所及び宮崎行政評価事務所において、九州地方整備局管内の5道路関係工事事務所(福岡国道、北九州国道、熊本、宮崎、延岡)における不法占用是正対策の実施状況について調査。次のような状況がみられた。

1)    不法占用物件の把握及び占用者に対する現地指導の実施状況が低調な状況があり
2)    不法占用物件占用者に対する是正指導内容の継続的記録が不十分、是正指導状況も口頭指導に止まっているなど不十分
3)    適正化事業により把握している不法占用物件に対する是正指導が不十分
4)    適正化事業により受託者が実施している不法占用物件に対する是正指導内容に一部、誤りあり
5)    適正化事業の受託者の指導状況に職員との連携などが不十分


−改善所見−

   九州地方整備局は、不法占用物件を是正し、適正な道路利用を促進する観点から、次の措置を講ずることが必要
1)    不法占用物件の的確な把握を行うとともに、改善効果を確保するため、是正対策に特化した定期的な現地指導等の実施、指導記録等の台帳整備の充実を図り、長期未改善物件等に対する文書指導等を徹底すること。
2)    適正化事業については、事業実施前に受託事業者に対して不法占用制度を十分に周知すること。また、受託事業者による指導状況を十分把握するとともに、受託事業者と工事事務所等との必要な連携を図るなどにより、効果的な事業実施を確保すること。