奄美大島における漁業被害等責任裁定申請事件(平成12年(セ)第1号事件)
事件の概要
平成12年11月8日、鹿児島県大島郡大和村の漁業者3人から、道路工事を施工したとする会社3社及び同工事を発注した鹿児島県を相手方(被申請人)として、責任裁定を求める申請があった。
申請の内容は以下のとおりである。被申請人会社3社及び鹿児島県は、上記道路工事に伴い発生したトンネルの掘削土を海岸の砂浜に放置する等し、海洋の汚濁防止策を全く講じなかったために、付近の魚介類の育成環境等を破壊した。その結果、申請人らの漁獲が減少し、申請人らは漁場を放棄した。これらを理由として、被申請人らに対し、損害賠償として、金5,876万円の支払いを求めるというものである。
その後、申請人らから請求金額を1億8,156万円に拡張する旨の書面が提出され、さらに、被申請人らに対する申請の一部が取り下げられ、請求金額は1億5,156万円となった。
審理の経過
公害等調整委員会は、本申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、2回の審問期日を開催したほか、現地調査及び現地証拠調べを実施するなど、鋭意手続を進めてきた。その結果、本件については、申請人と被申請人2社及び鹿児島県については当事者間の合意による解決が相当であると判断し、第3回審問期日である平成15年6月17日、公害紛争処理法第42条の24第1項の規定により職権で事件を調停に付し、自ら処理することとした(平成15年(調)第4号事件)。
同日開催した第1回調停期日において、裁定委員会から、調停案を提示したところ、当事者双方はこれを受諾して別記調停が成立し、責任裁定申請については取り下げられたものとみなされた。また、残る被申請人1社については、同日、申請の取下げがなされた。これにより、本事件は終結した。
調停条項
調停条項
- 被申請人2社は、平成15年6月30日限り、連帯して、本件解決金を次のとおり支払う。
ア 申請人Aに対し、金〇万円を、同申請人の預金口座(略)に振り込む
イ 申請人Bに対し、金〇万円を、同申請人の預金口座(略)に振り込む
ウ 申請人Cに対し、金〇万円を、同申請人の預金口座(略)に振り込む
- 被申請人らは、奄美地域の優れた自然環境を保全することの重要性に鑑み、地域の自然条件に即した総合的な赤土等流出防止対策を確立し必要な施策を推進するために鹿児島県大島支庁が取りまとめた赤土等流出防止対策方針・実施要領集所定の赤土等流出防止対策を、関係する工事の計画、設計、施工、管理の各段階を通じて確実に実施する。
- 申請人らは、その余の本件請求を放棄する。
- 当事者双方は、本件に関し、本調停条項に定める以外何らの債権債務がないことを相互に確認する。
- 手続費用は、各自の負担とする。
以上
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