越谷市における印刷工場からの悪臭による健康被害責任裁定申請事件
     (平成14年(セ)第4号)

1 事件の概要
 平成14年9月18日,埼玉県越谷市の住民24人から,印刷会社及び越谷市を相手方(被申請人)として責任裁定を求める申請があった。
本事件は,被申請人印刷会社の印刷工場から発生する悪臭により,申請人らは健康被害を受けているが,被申請人越谷市は,同工場進出及び操業に当たり,適正な指導・措置を講じれば被害を予防できたにもかかわらず,これを怠り,行政としての責務を全うしていないとして,被申請人らに対して,損害賠償として,申請人1人当たり,金200万円,合計金4,800万円の支払いを求めるというものである。


2 事件の処理経過
 公害等調整委員会は,本申請を受け付けた後,直ちに裁定委員会を設け,9回の審問期日を開催するとともに,現地調査を実施した。また,被申請人会社印刷工場からの排気に含まれる有機溶剤と申請人らが訴える健康被害との因果関係を判断するのに必要な専門的事項を調査するため,大学医学部教授1人を専門委員に選任するなどして鋭意手続を進めてきた。
 その結果,本件については,平成16年4月15日,当事者間の合意による解決が相当であると判断し,公害紛争処理法第42条の24第1項の規定により職権で調停に付し,裁定委員会が自ら処理することとし(平成16年(調)第1号事件), 4月20日の第1回調停期日において,調停案を提示したところ,当事者双方はこれを受諾して調停が成立し,同条第2項の規定により責任裁定申請は取り下げられたものとみなされ,本事件は終結した。


3 成立した調停の概要
(1)被申請人会社は,地上高16メートルの煙突を設置する。
(2)被申請人会社は,定期的に,臭気測定を実施するとともに,その結果や所定の化学物質使用量等を申請人らに開示,説明する。

(3)被申請人会社は,苦情データ等を蓄積し,かつ,化学物質の排出抑制を進めるため各種技術の研究開発動向を注視し,その成果を積極的に導入するよう努める。
(4)関係各当事者は,円満な関係維持に努める。