今回のテーマは、公害紛争処理制度の利用の仕方です。公害紛争処理制度は、シリーズ第1回で解説したとおり、「苦情の解決」と「紛争の解決」の2つをその内容としていますので、それぞれの制度の利用の仕方について説明します。
2 公害紛争の解決の制度の利用
公害紛争の解決のために、公害紛争処理制度ではあっせん、調停、仲裁、責任裁定、原因裁定(それぞれの手続の違いについてはシリーズ第7回で解説する予定です。)といった手続が用意されています。どのような紛争解決を求めるかによって、選択する手続の種類が異なるわけですが、手続ごとに利用の仕方が少しずつ異なります。事件の9割以上を占める調停について、ここでは説明しましょう。
(1) 誰が申請できるの?
「公害(典型7公害)に関する民事上の紛争」の当事者であれば、被害者でも加害者でも申請することができます。「公害(典型7公害)に関する民事上の紛争」については、シリーズ第2回で解説していますので、そちらをご参照ください。1人でも申請できますが、複数人で共同して申請することもできます。公害については、同じ地域の人が同じ被害を受けることが多いため、100人以上の被害者が共同で申請するケースも珍しくはありません。
(2) どこに申請するの?
どこに申請するかは、紛争の種類により定められています。
<公害等調整委員会に対して申請するもの>
1) 大気汚染、水質汚濁により生ずる著しい被害に係る次の事件(重大事件)
ア 人の健康に著しい被害が生じ、かつ、その被害が相当多数に及ぶ事件(例:水俣病)
イ 動植物又はその生育環境に係る被害の総額が5億円以上である事件(例:足尾銅山の鉱毒水による農作物被害)
2) 航空機や新幹線(スーパー特急及びミニ新幹線を含む。)に係る騒音事件(広域処理事件)
<都道府県知事を経由して都道府県公害審査会に対して申請するもの>
上記以外のもの
注1)
注1) 二以上の都道府県にまたがる事件(=「県際事件」)は、関係都道府県のいずれか一の知事に対して申請します。なお、この県際事件は、関係都道府県が共同して設置する連合公害審査会又は公害等調整委員会が処理に当ります。
(3) どうやって申請するの?
次の事項を記載した書面(申請書)に、申請人、代理人
注2)又は代表者
注3)が記名押印し、手数料の額(調停を求める事項の価額に応じて算出します。)に相当する額の収入印紙を添えて、上記(2)の申請先に持参又は郵送します。
- 当事者の氏名又は名称及び住所
- 代理人又は代表者を選任又は選定したときは、その者の氏名及び住所
- 加害地及び被害地
- 調停を求める事項及びその理由
- 紛争の経過
- 申請の年月日
- その他参考となる事項
なお、次のような場合には、それぞれ添付書類が必要になりますので、公害等調整委員会事務局又は都道府県公害紛争処理担当課までご相談下さい。
- 代理人による申請
- 代表者による申請
- 当事者が法人あるいは権利能力なき社団の場合
その他、調停等の申請についてご質問がございましたら、公害等調整委員会事務局又は都道府県公害紛争処理担当課(本誌32頁参照)までお問い合わせください。
注2) 当事者は、弁護士又は調停委員会の承認を得た者を代理人に選任することができます。
注3) 当事者が多数の場合、当事者は、申請の取下げ又は調停案の受諾を除く一切の行為を他の当事者のためにする代表者を、当事者のうちから選定することができます。