どんな紛争を扱うの?

ちょうせい第2号(平成7年8月)より

わかりやすい公害紛争処理制度 ‐第2回 扱ってくれる紛争って、何?

1 はじめに

 今回は、公害紛争処理制度で扱うことができる紛争の内容について説明します。
 公害紛争処理法では、「公害(典型7公害)に関する民事上の紛争」を扱うこととされています。以下、「公害(典型7公害)」及び「民事上の紛争」の意味について説明します。

2 「公害(典型7公害)」とは

(1) 「公害(典型7公害)」の定義
 「公害」は、環境基本法という法律で、「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」と定義されています。一般に「公害」といえば、日照阻害や通風阻害なども含むもっと広いイメージで捉えられる場合があります。
 しかし、法律で「公害」という場合は、上記の大気汚染から悪臭までの7種類のものを指します。これらがいわゆる“典型7公害”です。
 では、具体的に典型7公害に関する紛争には、どのようなものがあるのか見てみましょう。

(2) 典型7公害に関する紛争
 ア 大気汚染
 窒素酸化物や粉じんなどの汚染物質が大気中に排出されたり、飛散してその質を悪化させることですが、紛争例としては、スパイクタイヤの使用によって粉じんが発生し、健康被害を生ずるとしてメーカーにその製造禁止を求めた例があります。

 イ 水質汚濁
 水中に水銀、カドミウム、シアンなどの有害物質が排出されることなどにより水質などを悪化させることです。紛争例としては、水俣病の損害賠償に関するものがその典型ですが、例えば、廃棄物処分場からの浸透水によって河川、地下水が汚染され、健康被害等が生ずるおそれがあるとして処分場の底部に浸透水用遮水シートを敷設するまでの間廃棄物の搬入を中止することなどを求めた紛争もあります。

 ウ 土壌汚染
 土壌汚染に関する紛争例としては、ゴルフ場の建設で土壌改良剤や農薬等が大量に使用されることにより土壌が汚染されるとして、この防止のための措置が講ぜられるまではゴルフ場の建設を行わないことを求めた例があります。

 エ 騒音
 騒音については、主観的な面があることは否めませんが、一般には、不快な音、好ましくない音を言います。紛争例としては、新幹線や空港の騒音をめぐる紛争があります。また、工場の機械から発生する騒音のため頭痛、耳鳴り等の健康被害を受けているとして、その低減措置や操業日・時間帯の制限等を求めた例もあります。

 オ 振動
 振動に関する紛争例としては、騒音の被害と併せて被害が主張される場合がよく見られます。例えば、鉄道のスピードアップ、増発などによる騒音・振動によって被害を受けているとして沿線住民が損害賠償の支払いを求めた例があります。

 カ 地盤沈下
 地盤沈下に関する紛争例としては、下水道管の埋設工事により宅地の沈下が発生しているとして損害賠償の支払いを求めた例があります。

 キ 悪臭
 悪臭に関する紛争例としては、養鶏業を営む者が排泄される鶏ふんを処理していないため鶏ふんによる悪臭の発生が甚だしいとして、定期的なその搬出処理又は鶏舎の移転等を求めた例があります。

3 「民事上の紛争」とは

 公害紛争処理制度で扱うことができるのは、「民事上の紛争」に限られています。公害に関する紛争であっても、許認可のような行政処分等を争うものは紛争処理の対象にはなりません。
 なお、「民事上の紛争」については、本号の「プラクティス公害紛争処理法」でも解説されていますので、24〜27ページを参照して下さい。

4 最近の公害紛争の傾向

 最後に、最近5年間の都道府県公害審査会等における典型7公害の種類別紛争件数を見ると下のグラフのようになり、騒音、大気汚染の割合が大きいことが分かります。

公害等調整委員会事務局

ページトップへ戻る