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調停手続にはどんな人が関与できますか?

ちょうせい第5号(平成8年5月)より

プラクティス公害紛争処理法 ‐第5回 調停手続に関与する者

 公害紛争処理の手続には、多くの者が様々な立場で関与しています。そこで今回は、公害紛争処理制度で最も利用されている調停手続に関与する者について、その概念、役割を整理するとともに、「人」に関連するいくつかの実務的な問題について検討してみたいと思います。

1 調停手続に関与する者

(1) 当事者と調停委員会
 調停とは、第三者が紛争当事者間を仲介し、紛争当事者の互譲のもとにその合意により紛争の解決を図ろうとするものである。よって、調停手続に関与する者の基本的な構成は、仲介者と紛争当事者である。

 ア 調停委員会
 公害紛争処理制度の調停における仲介者は「調停委員会」である。「調停委員会」は、事件ごとに三人の調停委員で構成される合議体である(公害紛争処理法(以下「法」という。)31条1項)。「調停委員会」は、当事者等からの意見聴取、事実調査の実施等の手続を経ながら、両当事者の互譲を促し、調停案を提示するなどして、紛争の解決に努めるが、紛争の性質上調停をするのに適当でないと認めるとき等は調停をしない措置をとったり、当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるときは調停を打ち切ることができる(法35条、36条)。

 イ 当事者
 公害紛争処理制度の調停手続は、原則として、公害に係る被害について主張が対立する紛争当事者の双方又は一方からの申請により開始される(法26条)。紛争当事者の双方から申請がなされた場合は申請を行った者(「申請人」)が当該調停手続の「当事者」であり、一方からなされた場合は申請人とその相手方(「被申請人」)が当該調停手続の「当事者」となる。
 調停の手続が係属している場合において、同一の原因による被害を主張する者は、調停委員会の許可を得て、当該調停手続に参加し、「当事者」になることができる(法23条の4)。この参加した者のことを「参加人」という。
 なお、公害紛争は事件の性質上、「当事者」が多数である場合が多いので、そのような調停の手続を迅速かつ簡便に行うための手続が公害紛争処理制度の調停には用意されている。すなわち、「当事者」は、そのうちから一人若しくは数人の「代表者」を選定することができるとされている。「代表者」は、各自、「代表者以外の当事者」のために、申請若しくは参加の申立ての取下げ又は和解の締結若しくは調停案の受諾を除き、手続上の一切の行為をすることができる。他方、「代表者以外の当事者」は、「代表者」のすることができる行為は、「代表者」を通じてしなければならず、本人が直接することはできない(公害紛争処理法施行令(以下「令」という。)3条・公害紛争の処理手続等に関する規則(以下「規則」という。)5条)。

(2) 代理人
 公害紛争処理制度の調停手続について、当事者は、弁護士又は調停委員会の承認を得た者を「代理人」とすることができる。当事者は当該事件の処理に必要な手続上の一切の行為についての権限を「代理人」に授権することができるが、申請の取下げ、調停案の受諾及び代理人の選任については、特別な授権を要する(法23条の2)。

(3) 参考人・鑑定人
 調停手続において、事実関係を明らかにし、適正、妥当な調停案を作成するためには、多くの場合、当事者及びそれ以外の第三者から意見・供述等を求めることが必要であることが当然予想される。そこで、調停委員会は、調停を行うため必要があると認めるときは、事件の関係人(当事者本人及びその代理人、代表者等)若しくは「参考人」に陳述若しくは意見を求め、又は、「鑑定人」に鑑定を依頼することができるとされている(令10条・規則16条1項)。

 ア 参考人
 事件に関連する自分の経験した事実について供述し得る者又は事件に関して必要な意見を述べ得る者である。

 イ 鑑定人
 特別の学識経験を有する者から、事件に関し、専門的な知識やその知識を基礎にした判断・意見を聴取することを「鑑定」といい、その学識経験者を「鑑定人」という。

(4) 専門委員
 公害紛争の解決のためには、高度の専門的・技術的知識・経験が要求されるので、各方面の専門の事項を調査するために学識経験を有する各界の専門家を「専門委員」として公害等調整委員会に置くことができるとされている(公害等調整委員会設置法第18条)。また、条例で、「専門調査員」等を置き、「専門委員」と同様に、紛争の解決に必要な調査を行わせることとしている都道府県もある。

(5) 職員
 調停手続の円滑な進行を事務的な面からサポートするため、公害等調整委員会事務局の職員や都道府県公害審査会の庶務を行う部局の職員は調停委員会の指示の下、様々な調停手続に係る事務を行っている。

2 「人」に関連する制度運用上の論点

(1) 利害関係を有する第三者の調停手続への関与
 調停の手続が係属している場合において、同一の原因による被害を主張する者については、1の(1)のイで述べたとおり、当該手続に参加することが可能であるが、公害紛争処理法には、それ以外の第三者が利害関係人として手続に参加することについての規定は設けられていない。
 しかしながら、例えば、建設工事によって発生する振動に関する損害賠償請求事件について、当事者である工事請負人と被害者との間だけでは事件が解決せず、工事発注者を調停に関与させることにより調停の成立が期待できる場合のように、当事者以外の第三者を手続に関与させる必要がある場合もあり、こうした事例においてはどのような対応が考えられるであろうか。
 一つは、被害を主張する当事者が、利害関係を有する第三者を相手方として調停を申請し、調停委員会が、新たに申請された事件と当初から係属している事件を併合する(令8条・規則14条)という方法がある。
 また、法令上規定はないが、公害紛争の適切な解決という法の趣旨に照らし、当事者及び利害関係を有する第三者の同意を得た上で、その第三者を加えて、調停の成立に導くという方法をとることも可能である。なお、訴訟上の和解においても、明文の規定はないが、第三者が和解上の債務者たることを承諾したときは、その和解調書はこの者に対しても債務名義となるなど、同様の考え方がとられている。
 実際の例として、ゴルフ場造成者を被申請人とした事件で、ゴルフ場経営者を加えて農薬使用を最小限とする等の合意がなされた事例、マンション近隣で騒音を発生させる作業場の経営者を被申請人とした事件で、マンション分譲業者を加えて防音設備の設置等の合意がなされた事例等がある。

(2) 補助者の調停期日への出席
 調停手続は非公開とされており(法37条)、調停期日においては、原則として当事者、代理人以外の第三者に傍聴させることはできないと解釈されるが、迅速かつ適正な紛争解決という調停制度の趣旨から、審理の円滑化を図るため、当事者又は代理人を事実上補助する者(手話通訳者、身障者の介護者、会社・団体等の実務担当者等)で適当と認める者を補助者として当事者又は代理人とともに期日へ出頭することを許し、手続の進行中、適当でないと認めるときはいつでも退席させるという運用を行うことは可能であると考えられる。

公害等調整委員会事務局

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