病院事業の経営状況を示す指標としては、現在、経常収支比率、医業収支比率を代表例とする経営状況を示す諸指標があり、また、高度・特殊、救急医療や看護配置の実施状況など医療水準を示す諸指標がある。
しかし、これらの諸指標は、高度・特殊医療などを実施すれば医療水準は向上するものの、反面、経営構造は悪化するというように、相互に密接な関連を有しながら二律背反的な面も併せ持っている。
ところが、これまでは、これらの指標の位置づけ、すなわちその分類と総合化が必ずしも十分とはいえなかったため、病院経営の総合診断に関する指標が存在していなかった。病院経営の健全性を総合的に測る尺度を何に求めるかは非常に難しい問題であるが、そのための方法として、病院の経営状況を示す指標を、
(1) 一定の基準により分類整理し、
(2) それぞれの指標ごとに、各病院の水準を全国平均値及び分布状況との比較により評価し、
(3) 同種に属する指標の評点を集計する
ことにより、総合評価を行うことは可能である。
自治体病院比較経営診断表は、このような考え方を基本として作られている。
この手法の特徴は、
(1) 各病院のおかれている地理的、社会的条件等は捨象し、全一般病院を同一の基準により比較・評価する
(2) 全一般病院における相対的位置を示す「評価スケール」を用い、各病院の数値を評点化する
(3) 同種に属する指標の評点を集計し評価する
ことにより、病院の経営状況を総合的かつ簡便に診断しようとするものである。
病院事業の経営が健全に行われているかどうかの尺度として、
第1に、効率的な経営が確保され、収支の均衡が保たれているかどうか、
第2に、経営状況がどのような傾向にあるか、また、経営改善について努力されているかどうか、
第3に、住民に信頼される病院として適正な医療施設水準及び医療体制が確保されているかどうか、
の3点を基本として、診断表を次のように構成する。
┌経営指標診断表 │┌現況指標……………………第1の観点 │└状況変動指標………………第2の観点 └医療指標診断表………………第3の観点それぞれの指標の内容、選定項目は次のとおりである。