次図の診断チャートに示すように、まず「基礎データの抽出」を行い、「各指標の数値算出」、「各指標の評点の当てはめ」をし、「現況、状況変動、医療ごとの合計点の算出」を行う。
次に「自己診断」に移ることとなるが、経営指標(現況指標及び状況変動指標)、医療指標のそれぞれについて合計点により、当該病院がどのような水準にあるか、また、その順位など全病院における相対的位置を把握する(「現況、状況変動、医療別の自己診断」)。
さらに、3種の指標についての相互の関連により当該病院について総合診断を下し、どのような類型に属するかを決定する(「総合自己診断」)。当該病院についての総合診断の結果どのような類型に属するかが決まったら、その類型をもたらした原因を個別指標を調べることにより探求し(「個別指標ごとの自己診断」)、これを改善するための種々の方策を検討する。
評価にあたっては、基本的には、当該病院のおかれている地理的、社会的な環境などを捨象し、それぞれの病院の全一般病院における相対的位置を指標毎に評点化し、同種の指標を集計して総合評価しようとするものである。
したがって、評価結果は、全一般病院における相対的位置を示すものであり、絶対的な評価を示すものではないことに留意する必要がある。
(1) 現況指標(偏差値評価)
各指標について、全一般病院の平均値と当該病院の数値とを比較し、標準偏差(散らばりの度合)を尺度として評価する。
<偏差値の算式>
(算出例)(平成16年度)
経常収支比率が、103.3%である病院の偏差値9.7という評点から、その病院のおおよその順位(位置)を求めるには、P.149の診断表評価スケール[PDF] の平成16年度の偏差値の分布に当てはめて、「+10>i≧0」の欄をみると、「87位〜546位」の間にあることがわかる。(そのうちで9.7は上程度に位置するから、おおむね90位程度という見当がつけられる。)
評価スケールの全国平均値 96.1% 〃 標準偏差 7.4 経常収支比率は、その数値が大きいほどよい項目であるので、算式に当てはめて計算する。 当該病院数値−全国平均値 103.3−96.1 算式A= ――――――――――――― =―――――――― = 9.7………… 偏差値評点 1/10×標準偏差 1/10×7.4
+2点 150病院 ( 1位〜150位) +1点 150病院 ( 151位〜300位) 0点 300病院 ( 301位〜600位) −1点 150病院 ( 601位〜750位) −2点 250病院 ( 751位以下 )(5段階評価の算式)
┌ 16年度数値−15年度数値 │ (数値が比率である場合に適用) │ 変化率= ┤ │ 16年度数値−15年度数値 │ ―――――――――――― ×100 └ 15年度数値 (数値が実数値である場合に適用)
(例1) 数値が比率である場合の変化率i=2.5をP.150の診断表評価スケール[PDF] の経常収支比率変化率の欄に当てはめると、i≧2.1の区分に該当し、評点は+2点となる。また、+2点には、1位〜150位の病院が入っており、そのうちおおむね上位に属していることから、順位もおおよそ130位前後と把握できる。
15年度の経常収支比率 100.8 % 16年度の 〃 103.3 % の病院の経常収支比率変化率の評点 変化率=16年度数値−15年度数値 であるので、この病院の経常収支比率変化率は、 103.3−100.8= 2.5(ポイント) となる。
(例2) 数値が実数値である場合の変化率i=0.8をP.150の診断表評価スケール[PDF] の入院患者1人1日当たり診療収入変化率の欄に当てはめると、1.4≧i>−1.4 の区分に該当し、評点は、±0点となる。また、±0点には、301位〜600位の病院が入っており、そのうち上〜中位に属していることから、順位もおよそ400位前後と把握できる。
16年度の入院患者1人1日当たり診療収入 33,487円 15年度の 〃 33,235円 の病院の入院患者1人1日当たり診療収入変化率の評点 16年度数値−15年度数値 変化率= ―――――――――――― ×100 15年度数値 であるので、この病院の入院患者1人1日当たり診療収入変化率は、 33,487−33,235 ―――――――― ×100 = 0.8(%) 33,235 となる。
救急告示病院における救急体制 施設設備 救急専用入口 専用病床数 10床 …………………3点 〃 処置室┐ 待機体制 医 師1名┐ 〃 手術室├を整備…2点 ├常時当直…4点 〃 自動車┘ 看護師2名┘ 合計 9点の場合、P.131の数値以外の医療指標の評点算出[PDF] の救急告示の区分に当てはめBに該当し、P.151の診断表評価スケール[PDF] の救急告示の欄に当てはめ評点は+1点となる。
3種類の自己診断について詳しく述べることとする。
(1) 現況指標及び状況変動指標による自己診断
ア.評価スケールの点数は、相対的な点数づけとなっており、一般的にはプラス点となっていれば、おおむね良好な水準にあることを示しており、また、0点は平均的な水準にあるといえる。
イ.マイナス点は、相対的にみてかなり低い水準にあることを示しており、その原因を分析するとともに改善に向かっての自己努力が必要である。
ウ.現況指標について診断表評価スケールを適用することにより、全病院における相対的な順位を把握する。
エ.状況変動指標の点数は、現況指標の水準を考慮して判断する必要がある。例えば、現況指標の点数がプラス点を示しその水準が高い場合には、状況変動指標の点数が0点であっても実数値がマイナスとなっていなければ、良好なものとして評価することが必要である。
(2) 総合自己診断
現況指標と状況変動指標及び現況指標と医療指標の関係を2つのグラフに表し、この3つの指標の関連を総合的に把握することがまず必要である。
その結果、グラフの座標の位置により、おおむね次のような類型に分類される。
ア.経営指標のグラフ(現況と状況変動)(縦軸……現況、横軸……状況変動)
(ア) Aグループ:現況も良く、またさらに向上すると予想されるグループ。 このグループにあることが望ましいが、さらに区分すると次の2つのグループになる。 A1:安定型 経営はほぼ安定期にあり、今後は現状を維持することに努めるべきグループ。 A2:発展型 今後の努力によってさらに伸びると予想されるグループ。 (イ) Bグループ:現状は良好であるが、このままでは悪化が予想される要注意グループ。 このグループはなんらかの改善策を講ずる必要があるが、さらに区分すると次の2つのグループになる。 B1:成熟型 現状の水準が高くほぼ頭打ちであり、状況変動が相対的に悪くなっているグループ。 実数値で伸び率がマイナスになっていないかどうかに注意する必要がある。 B2:要注意型 過去の蓄積により現況水準を確保しているグループ。 このままではDグループへの転落が予想されるので、改善策の検討が必要である。 (ウ) Cグループ:現況は悪いが、今後向上が予想されるグループ。 このグループをさらに区分すると次の2つのグループになる。 C1:発展途上型 努力は認められるが、もう一歩であるグループ。このまま努力すればAグループに入ることが予想される ので各項目ごとの指標の分析が必要である。 C2:若年型 努力はしているが現況がかなり低いグループ。長期的な努力の継続が必要である。 (エ) Dグループ:現況が悪く、また努力が不足していると思われるグループ。 このグループは相当な努力が必要とされるが、さらに区分すると次の2つのグループになる。 D1:要奮起型 努力不足により現況が水準に達していないグループ。努力次第ではB又はAグループ入りが可能である。 D2:深刻型 病院の性格の問題もあるが、原点に立ち帰って根本的な見直しが必要であるグループ。
(ア) Aグループ:調和型 現況と医療が調和しているグループ。今後とも現状を維持向上していくことが望まれる。 (イ) Bグループ:堅実経営型 現況は平均以上の水準を維持しているが、医療面の充実が望まれるグループ。 今後は医療体制の整備と患者サービス面の向上が望まれる。 (ウ) Cグループ:医療中心型 経営面の努力が望まれるグループ。 整備された物的・人的資源をフルに活用して経営効率を高める努力が必要である。 (エ) Dグループ:低水準型 抜本的な病院の見直しが必要とされるグループ。病院の規模、機能について原点に立ち帰り検討するとともに 経営健全化計画の策定が必要である。
平成7年度 |
平成8年度 |
平成9年度 |
平成10年度 |
平成11年度 |
平成12年度 |
平成13年度 |
平成14年度 |
平成15年度 |
平成16年度
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現 況 (順 位) |
+5 412〜614 位 |
+10 188〜405 位 |
+13 132〜354 位 |
+14 136〜327 位 |
+13 113〜228 位 |
+18 296〜417 位 |
+11 95〜266 位 |
+8 231〜484 位 |
+11 83〜244 位 |
+10
69〜232 位 |
状況変動 | +9 |
+11 |
+6 |
+10 |
+19 |
-1 |
-15 |
-5 |
+1 |
-4
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医 療 | +15 |
+17 |
+16 |
+17 |
+15 |
+16 |
+15 |
+12 |
+12 |
+13
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(1) この診断表は、あくまでも相対的な評価を主体としてスケールを設定しているので、点数の高低がそのまま経営の良否を判定するものではなく、当該病院の経営状況を簡便な方法で、およその状況を把握し、他の病院と比較して当該病院のどの項目に問題があるかを知り、より良い経営に向けての一つの手がかりを求めるためのものである。
(2) この診断表に選定した指標は、「地方公営企業年鑑」から統一的に把握できるものを採用しているので、適宜、必要に応じてこれ以外に指標を追加して分析することも必要である。
(3) この診断は、当該病院のおかれている地理的、社会的な環境などを捨象し、全一般病院を同一の基準で評価することとしているので、自己診断にあたっては、病院の特殊性などについて独自の工夫を加え診断することも必要である。
(4) 診断にあたっては、当該年度のみの診断に終わることなく、毎年続けて診断を行い、時系列における比較分析を行うことも必要である。
(5) 経営指標のうち、流動比率、設備投資効率、不良債務比率及び利子負担率については、団体ごとの指標を用いているが、自己診断にあたっては病院ごとの指標に置き直すことが必要である。
(6) この指標は一般病院のみを対象としているが、一般病院であっても結核・精神病床のウエイトが高い病院については、所要の補正を行い評価することが必要である。
(7) この診断表は、あくまで自己診断用であり、これにより病院のランクづけを行うことを目的としたものではないことに十分留意されたい。