情報システムに係る政府調達制度の見直しについて


平成14年3月29日
平成14年4月22日改定
平成15年3月19日改定
平成16年3月30日改定
情報システムに係る
政府調達府省連絡会議了承



   情報システムに係る政府調達については、極端な安値落札などの問題の再発を防止し、質の高い低廉な情報システムの調達を図り、質の高い電子政府の構築を実現するとともに、健全な情報サービス市場の育成に資するため、ソフトウェアの特質を踏まえつつ、以下のとおり見直しを行い、可能な案件から逐次適用していくこととする。

1. 総合評価落札方式をはじめとする評価方式等の見直し


 (1) ライフサイクルコストベースでの価格評価
   当初の落札事業者による相当規模の継続的な開発若しくは保守・運用に係る役務調達や継続的な役務契約(コンサルタント契約等)を当初の落札事業者と複数年にわたり行う必要性がある場合には、原則として、国庫債務負担行為を活用し、複数年契約により実施することとし、その活用が困難な場合には、原則として、複数年にわたる調達全体に関するライフサイクルコストベースでの価格評価に基づく一般競争入札を行うこととする。

 (2) 総合評価落札方式における除算方式の見直し
   国民経済等に与える影響が大きく、既存のソフトウェア製品の活用によっては整備できない電子政府向けの情報システムなどについて、総合評価落札方式による調達を行う場合には、質の高い情報システムを一層適正に調達する観点から、加算方式(技術点と価格点とを合算して得た評価値が最高となる入札をもって落札決定する方式)による評価を行うこととする。

 (3) 低入札価格調査制度の活用の促進
   各府省毎に契約担当官等が調査・判断を行う際の基準等を作成する。具体的な調査の手法に係るガイドラインを定め、入札価格の積算(投入されるソフトウェアプロダクトに係る会計処理等)の妥当性や技術者の配置、入札者の履行体制等を調査し、履行の確保若しくは公正な取引の秩序の確保の観点から問題があると判断される入札者と契約を締結しないこととする。また、入札者の行為に特に重大な問題があると認められる場合には、当該事業者を事後の競争参加から排除するよう措置を講ずる。

 (4) 入札結果等に係る情報の公表の促進
   情報システムに係る調達契約の透明性・公平性の向上を図るため、入札者毎の入札結果に係る情報(入札価格、総合評価を行った場合における提示されたライフサイクルコスト及び技術点の合計等)や随意契約の場合の見積価格及び根拠等について、契約締結後遅滞なく公表する。また、低入札価格調査を行った場合には、その調査結果の透明性を確保するため、調査結果の概要及び調査対象となった入札者に係る入札価格の積算根拠等の情報を公表することとする。

 (5) 技術的な評価の強化
   ソフトウェア開発能力の向上等を通じてソフトウエアプロダクトの質の向上を図るため、技術評価項目の考慮要素として、CMM(Capability Maturity Model:能力成熟度モデル)等ソフトウェア開発のプロセスの改善・評価に関する指標を、その普及状況を踏まえ、活用することとする。

 (6) 公正な取引を乱す行為を行った企業等に対する方策の強化
   極端な安値落札などの問題の再発を防止するため、入札者の行為に特に重大な問題があると認められる場合の当該入札者の事後の競争参加からの排除を徹底するとともに、低入札価格調査を実施した調達案件については、調査結果の契約締結後の速やかな公正取引委員会への報告、入札結果等に係る情報の公表を通じて、全府省で情報を共有し、密接な連携を図る。


2. 競争入札参加資格審査制度をはじめとする入札参加制度等の見直し


 (1) 競争入札参加資格の柔軟な運用の強化
   技術力のある企業に対して企業規模等を問わず競争参加機会を拡充するため、民間における契約実績や同種のシステムの開発実績、高度IT技術者の配置、ソフトウェアプロセス改善活動実績等一定の技術的基準も考慮しつつ競争入札参加資格制度の運用弾力化措置の改善を図ることとする。

 (2) ジョイント・ベンチャー等の企業共同体への競争入札資格の付与
   質の高い情報システムの構築に向けた事業者間の競争の活性化を図る観点から、入札公告時に高度IT技術者の配置等一定の技術的要件を付与する入札案件については、個別案件毎に、当該技術的要件を満たす企業共同体(ジョイント・ベンチャー)に対し、企業共同体内の責任体制、契約履行後の対応の確保等に留意しつつ、競争入札への参加機会を付与することとする。

 (3) 中小企業者からの調達促進
   情報システムに係る政府調達において、予算の適正な使用に留意しつつ、競争入札参加資格の柔軟な運用の強化等によって、技術力等のある中小企業者の政府調達への参加機会の拡大を図ることとする。


3. 調達管理の適正化



 (1) 調達側の体制強化
   CMM等の各種ソフトウェア開発プロセスの改善・評価に関する指標の活用等を通じた技術評価の強化、EVM(Earned Value Management)をはじめとするプロジェクトマネジメント(開発工程管理)手法の導入等を通じて情報システムに係る政府調達の企画・管理の適正化を図る観点から、調達担当官に対する研修等によるスキル向上、手続きの公平性・競争性に留意しつつ、外部の専門家の積極的な活用を通じて調達側の体制強化を図ることとする。

 (2) 契約方式の適正化
   当初の落札事業者による相当規模の継続的な開発若しくは保守・運用に係る役務調達や継続的な役務契約(コンサルタント契約等)を当初の落札事業者と複数年にわたり行う必要性がある場合には、原則として、国庫債務負担行為の活用による複数年契約により実施することとし、その活用が困難な場合には、原則として、複数年にわたる調達全体に関するライフサイクルコストベースでの価格評価に基づく一般競争入札を行うこととする。

 (3) 官民の責任分担を明確化した契約書の導入
1)    情報システムの導入に伴うサービスの内容、レベルを確保するためのサービスレベル契約(SLA)の政府調達への導入を図ることとする。
2)    サービス内容ごとに、当該情報システムが正常に機能しない状況が発生した場合に想定される損害の程度、国民生活に与える影響等を踏まえつつ、適当と認められる場合には、損害賠償の範囲に限度を設定するなど損害賠償責任の明確化を図ることとする。
3)    情報システムの開発段階で発生する著作権等、ソフトウェア資産の知的財産権の帰属については、知的財産推進計画を踏まえて結論を得ることとする。
4)    EVMなどによる開発開始後の評価が適切に行われることを前提として、コストが当初の予定を下回った場合に減少したコストの一部を契約の相手方に還元するといったインセンティブ付契約の導入を図ることとする。

 (4) 調達プロセス管理の適正化
1)    契約の適切な履行から運用までの調達プロセス全体において適切に管理を行う観点から、EVMをはじめとするプロジェクト・マネジメント(開発工程管理)手法を、その普及状況を踏まえ、導入し、契約の適切な履行の確保や適切な下請管理の徹底を図ることとする。

2)    費用対効果の最大化を図る観点から、ISO/IEC12207(JIS X0160)をはじ めとするソフトウェア・ライフサイクルに関する国際標準等を積極的に活用し、供給者間でのソフトウェア開発作業及び作業内容、ドキュメント等に対する標準化を推進する。

 (5) 調達事例の情報共有・分析・活用
   各府省における情報システムに係る政府調達実務とともに、政府調達のより一層の透明性、公平性の向上等に資するため、平成16年4月から運用される「情報システムに係る政府調達事例データベース」の活用を図ることとする。