平成8年4月24日

第1章 総則(第1・第2)
第2章 行政文書の開示(第3〜第16)
第3章 不服申立て(第17〜第22)
第4章 補則(第23〜第29)

  第1章 総則

第1 目的

  この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する国民の
 権利につき定めることにより、行政運営の公開性の向上を図り、もって政府の
 諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民による行
 政の監視・参加の充実に資することを目的とするものとすること。

  ※ 「国民による行政の監視・参加」とは、国民が行政の諸活動を注視し、
   行政機関に説明を求め又はその説明を聞いて行政に関する意見を形成し、
   行政が適正に行われることを促すために、その意見を適宜の形で表明する
   ことなどのことを意味する。

第2 定義

  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるとこ
 ろによるものとすること。

 (1) 行政機関 次に掲げる機関をいう。

  イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関及び内閣の所轄の下に置かれる
   機関

  ロ 国家行政組織法第3条第2項に規定する国の行政機関として置かれる機
   関(ハの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める
   機関を除く。)

  ハ 国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機
   関のうち政令で定めるもの

  ニ 会計検査院

   ※ ハの機関としては、独立性、組織実体等を考慮する。

 (2) 行政文書 行政機関の職員が職務上作成し又は取得した文書、図画、
    写真、フィルム、磁気テープその他政令で定めるものであって、当該行
    政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているも
     のをいう。

   ※ 職員が組織的に用いるものとして行政機関が保有している文書は、組
    織としての共用文書となっているかどうか等にかかっており、決裁、供
    覧等を終了した文書に限らない。

   ※ 一般に容易に入手できるもの、一般に利用可能な施設で閲覧できるも
    の、史料として公開されているものなどは、「行政文書」から除かれる
    。

   ※ 行政文書の管理については、第24(行政文書の管理)を参照。

 (3) 開示 閲覧に供し又は写しを交付することをいう。

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  第2章 行政文書の開示

第3 開示請求権

  何人も、この法律に定めるところにより、行政機関の長に対し、行政文書の
 開示を請求することができるものとすること。

第4 開示請求の手続

  行政文書の開示を請求しようとする者は、行政機関の長に対し、請求に係る
 行政文書を特定するために必要な事項その他所定の事項を記載した書面を提出
 しなければならないものとすること。

   ※ 請求手続の詳細(住所、氏名、希望する開示の方法等を記載すること
    など)は、政令で定める。

   ※ 行政文書の特定等は、日本語により記載するものとする。

第5 行政機関の開示義務

 1 行政機関の長は、行政文書の開示の請求(以下「開示請求」という。)が
  あった場合は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されているとき
  を除き、開示請求をした者(以下「開示請求者」という。)に対し、当該行
  政文書を開示しなければならないものとすること。

 2 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合であっ
  て、当該部分が当該部分を除いた部分と容易に区分することができるときは
  、行政機関の長は、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示し
  なければならない。ただし、当該部分を除いて開示することが制度の趣旨に
  合致しないと認められるときは、この限りでないものとすること。

第6 不開示情報

 第5に規定する不開示情報は、次の各号に掲げる情報とすること。

 (1) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。
    )であって、特定の個人が識別され又は他の情報と照合することにより
    識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

  イ 法人等に関する情報に含まれる当該法人等役員の肩書及び氏名

  ロ 公務員の職務遂行に際して記録された情報に含まれる当該公務員(一定
   の範囲の者)の官職及び氏名

  ハ 行政機関により従来から公にされているもの又は公にすることが予定さ
   れているもの

  ニ 人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示することが
   より必要であると認められる情報

   ※ ロの公務員の範囲については、引き続き検討する。

   ※ 特定の個人が識別され得ない状態で開示することによっても個人の権
    利利益を不当に侵害するおそれがある情報の取扱いについては、引き続
    き検討する。

 (2) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」とい
    う。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であっ
    て、開示することにより当該法人等若しくは当該個人の競争上の地位、
    財産権その他正当な利益を害するおそれがあるもの又は公にしないとの
    約束の下に任意に提供され、現に公にされていないもの。ただし、当該
    法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる人の生命、身体若しくは
    健康への危害又は財産若しくは生活の侵害から保護するため、開示する
    ことがより必要であると認められるものを除く。

 (3) 開示することにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際
    機関との信頼関係が損なわれるおそれ、通貨の安定が損なわれるおそれ
    又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると認め
    られる相当の理由がある情報

   ※ 「国の安全」とは、国家社会の基本的な秩序が平穏に維持されている
    状態をいう。

 (4) 開示することにより、犯罪の予防・捜査、公訴の維持、刑の執行、警
    備その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めら
    れる相当の理由がある情報

 (5) 行政機関内部又は行政機関相互の審議、検討又は協議に関する情報で
    あって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中
    立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民に誤解を与え若しくは混乱
    を招くおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼす
    おそれがあるもの

 (6) 監査、検査、取締り、争訟、交渉、契約、試験、調査、研究、人事管
    理、現業の事業経営その他行政機関の事務又は事業に関する情報であっ
    て、開示することにより、当該事務若しくは事業又は将来の同種の事務
    若しくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

   ※ (3)、(4)が「……おそれがあると認められる相当の理由がある
    情報」とし、(5)、(6)が「……おそれがあるもの(情報)」とし
    ているのは、司法審査の程度等に相違があるとの趣旨である。

   ※ 国会、裁判所及び地方公共団体に関する情報の取扱いについては、引
    き続き検討する。

第7 公益上の理由による開示

  開示請求に係る行政文書に第6第2号から第6号までに掲げる情報が記録さ
 れている場合において、これらの規定により保護される利益に優越する公益上
 の理由があると認められるときは、行政機関の長は、第5及び第6の規定にか
 かわらず、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができるものとす
 ること。

   ※ この規定の適用の当否に関しては、不服審査会の調査審議の対象とな
    る。

第8 行政文書の存否に関する情報

  開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか、又は存在
 していないかを答えるだけで、第5及び第6の規定により保護される利益が不
 開示情報を開示した場合と同様に害されることとなるときは、行政機関の長は
 、開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないことができるものとするこ
 と。

第9 著しく大量な行政文書の開示請求

  行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が著しく大量であって、事務の適
 正な遂行に著しい支障を生ずることその他やむを得ない事由があるときは、請
 求に係る対象文書の相当な部分につき、第10に規定する決定をすれば足りる
 ものとすること。

第10 開示請求に対する措置

 1 開示請求に係る行政文書を開示するときは、行政機関の長は、開示の決定
  をし、開示請求者に対し、書面で、その旨及び開示の実施に関し必要な事項
  を通知しなければならないものとすること。

   ※ 開示の決定の通知の詳細(閲覧の日時・場所、写しの交付の方法等)
    は、政令で定める。

 2 開示請求に係る行政文書を開示しないときは、行政機関の長は、請求拒否
  の決定をし、その旨、書面で、開示請求者に通知しなければならないものと
  すること。

   ※ 請求拒否の決定の理由の提示については、行政手続法の定めるところ
    による。

 3 第8の規定により開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないとき及
  び開示請求に係る行政文書が存在しないことその他の理由により請求を拒否
  するときも、前項と同様とするものとすること。

第11 開示等決定の期限等

 1 第10に規定する決定(以下「開示等決定」という。)は、開示請求があ
  った後30日以内にしなければならないものとすること。

 2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、事務処理上の困難その他正当
  な理由により同項に規定する期間内に開示等決定をすることができないとき
  は、一定の期間、これを延長することができる。この場合において、行政機
  関の長は、開示請求者に対し、同項の期間内に開示等決定ができない理由及
  び延長する期間を通知しなければならないものとすること。

   ※ 延長できる期間については、引き続き検討して、具体的な日数を決定
    する。

第12 事案の移送

  行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が他の行政機関により作成された
 ものであるときその他相当な理由があるときは、関係行政機関と協議の上、事
 案を移送することができる。この場合においては、その旨、開示請求者に通知
 しなければならないものとすること。

第13 第三者保護のための手続

 1 開示請求に係る行政文書に国、地方公共団体及び開示請求者以外の者(以
  下「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは、行政機関の
  長は、開示等決定をするに際し、当該第三者の意見を聞くことができるもの
  とすること。

 2 開示請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されている場合にお
  いて、第6第1号ニ、同第2号ただし書又は第7の規定によりこれを開示し
  ようとするときは、行政機関の長は、開示の決定に先立ち、当該第三者に対
  し、所定の事項を通知して、意見を述べる機会を与えなければならないもの
  とすること。

 3 前2項に定める手続がとられた場合において、当該行政文書を開示すると
  きは、行政機関の長は、開示の決定と開示を実施する期日との間に当該第三
  者が不服申立手続を講ずるに相当な期間を確保するとともに、開示の決定後
  速やかに、当該第三者に対し、所定の事項を通知するものとすること。

第14 開示の方法

 行政文書の開示の方法は、政令で定めるものとすること。

   ※ 録音テープ、ビデオテープの閲覧は視聴によること、文書は原本(支
    障があるときは写し)を閲覧させること、電磁的記録物の開示は印字物
    の交付によることができることその他媒体に応じた閲覧、写しの交付の
    方法を具体的に定める。

第15 手数料

 1 行政文書の開示に関する手数料は、実費を勘案し、政令で定めるところに
  よるものとすること。

   ※ 利用しやすい金額とするとともに、不当に大量な行政文書の開示請求
    を抑制するとの観点にも留意する。

 2 行政機関の長は、経済的困難その他特別の理由のあるときは、その手数料
  を免除し、又は減額することができるものとすること。

第16 権限の委任

  行政機関の長は、政令で定めるところにより、この章に定める権限を当該行
 政機関の職員に委任することができるものとすること。

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  第3章 不服申立て

第17 不服申立てに関する手続

  開示請求に対する決定に対して行政不服審査法に基づく不服申立てがあった
 ときは、次の各号に掲げる場合を除き、当該不服申立てに係る処分庁又は審査
 庁は、不服審査会に諮問して、当該不服申立てに対する決定又は裁決をしなけ
 ればならないものとすること。

 (1) 不服申立てが不適法であり、却下する場合

 (2) 請求拒否の決定を取り消し、当該行政文書の開示の決定をする場合(
    当該行政文書に第三者に関する情報が記録されている場合を除く。)

   ※ 不服申立てを受けた処分庁又は審査庁は、できるだけ速やかに必要な
    調査を行い、諮問すべき場合であるかどうかを判断し、諮問すべき場合
    には、遅滞なく諮問の手続を取らなければならないものとする。

   ※ 諮問庁は、諮問に際し、原処分決定書及び不服審査手続で取得した不
    服申立書、弁明書その他の書類(開示請求に係る行政文書を除く。)等
    を、不服審査会に提出するものとする。

第18 不服審査会の設置

  第17に規定する諮問に応じ不服申立てについて調査審議するための合議制
 の機関として、総理府に、不服審査会を置くものとすること。

第19 不服審査会の委員の任免等

 1 不服審査会の委員は、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するものと
  すること。

 2 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退
  いた後も、同様とするものとすること。

 3 前項の規定に違反して秘密を漏らす行為に対する罰則を設けるものとする
  こと。

第20 不服審査会の権限

 1 不服審査会は、諮問をした処分庁又は審査庁(以下「諮問庁」という。)
  に対し、開示請求に係る行政文書の提出を求め、事件の審議にあたる委員を
  して、不服申立人に閲覧させずにその内容を見分させることができる。この
  場合において、諮問庁は、当該行政文書の提出を拒むことはできないものと
  すること。

 2 不服審査会は、必要と認めるときは、諮問庁に対し、不服審査会の指定す
  る方式により処分理由の説明を求めることができるものとすること。

   ※ 「指定する方式」としては、開示請求に係る行政文書の様式、記載項
    目、記載内容の趣旨、請求拒否の理由を分類・整理させることなどが考
    えられる。

 3 前2項に定めるもののほか、不服審査会は、事件に関し、不服申立人、諮
  問庁及び利害関係人(以下「当事者等」という。)に書類又は物件の提出を
  求め、参考人に陳述を求め又は鑑定をさせ、その他必要な調査をすることが
  できるものとすること。

   ※ 当該不服申立てが審査請求である場合は、不服審査会は、原処分の処
    分者その他の関係職員に対し、参考人として陳述を求めることが
    できる。

第21 不服審査会における事件の取扱い

 1 当事者等は、不服審査会に対し、口頭で意見を陳述することを求めること
  ができるものとすること。

 2 当事者等は、意見書その他の書類又は関係する物件を不服審査会に提出す
  ることができるものとすること。

 3 当事者等は、不服審査会に対し、不服審査会に提出された書類又は物件の
  閲覧を求めることができる。ただし、第20第1項に規定する行政文書につ
  いては、この限りでないものとすること。

   ※ 1〜3の求めに対する処分については、不服申立てをすることができ
    ないものとすること。

 4 不服審査会の審理は非公開とする。ただし、答申は公表するものとするこ
  と。

第22 その他の不服審査会関係規定

  第18〜第21に規定するもののほか、不服審査会の組織(委員の人数、事
 務局の組織等)、委員の任免及び服務、事件の取扱い等について、所要の規定
 を設けるものとすること。

   ※ 行政不服審査手続と不服審査会における審理手続との間における行政
    不服審査法の適用関係については、不服申立人、利害関係人と諮問庁と
    の間で行政不服審査法所定の手続が一貫して適用され、これに不服審査
    会における審理手続が別途付加されることを前提としつつ、行政不服審
    査法の適用関係の調整の要否について、引き続き検討する。

   ※ 口頭意見陳述を求める者の便宜のための措置についても、「事件の取
    扱い等」の一部として引き続き検討する。

   ※ この章の規定事項は、法律、政令、不服審査会運営規則で規定するこ
    ととなる。

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  第4章 補則

第23 利便の提供・運用状況の公表

 1 政府は、この法律の円滑な運用を確保するため、総合的な案内窓口の整備
  、資料の提供その他開示請求をしようとする者の利便を考慮した適切な措置
  を講ずるものとすること。

 2 政府は、この法律の運用状況に関し、毎年度公表するものとすること。

第24 行政文書の管理

  行政機関は、行政文書の管理に関する定めを制定し、これを公にするととも
 に、当該定めに従った適切な管理を行うものとすること。

   ※ 行政文書の管理について、政令で定めるべき事項、現行文書管理規程
    との位置付けをどうするか引き続き検討する。

   ※ 歴史的研究の対象となる行政文書の利用の在り方については、公文書
    館等における保存・利用措置等も考慮しつつ、引き続き検討する。

第25 総合的な情報公開の推進

  政府は、公表その他の情報の公開に関する施策の充実を図り、国民に対する
 総合的な情報公開の推進に努めるものとすること。

第26 地方公共団体の情報公開

  地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関
 し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならないものと
 すること。

第27 特殊法人の情報公開

  政府は、特殊法人について、その性格及び業務内容に応じ、その保有する情
 報の公開が推進されるよう、必要な措置を講ずるものとすること。

第28 関係法律との調整

  文書の公開等に関し定めている法律その他関係法律の規定との間で必要な調
 整を行うものとすること。

第29 政令への委任

  この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、政令
 で定めるものとすること。

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