農業担い手対策に関する行政評価・監視結果(要旨)

通知日平成13年7月11日
通知先農林水産省
実施時期平成12年8月〜平成13年7月
調査の背景事情等
・ 総務省は、平成8年1月、「農業担い手対策に関する行政監察」の結果に基づき、法人化推進のための指導・支援の充実、経営規模拡大のための農用地の集積等について、農林水産省に対し勧告
・ 我が国の農業労働力についてみると、農業に主として従事する基幹的農業従事者は、平成12年には 240万人と平成5年比で30万 2,000人(11パーセント)減少、また、基幹的農業従事者の51.2パーセントが高齢者となっている現状にあり、農業の担い手の育成・確保や担い手への農用地集積の促進は重要な課題
・ この調査は、勧告で指摘した事項に関する改善措置状況を中心に調査し、一層の改善を求めることにより農業の担い手対策の推進を図る観点から実施
調査対象機関:農林水産省、8道県、34市町及び34農業委員会、8指定農業団体、22農地保有合理化法人等
調査担当部局:行政評価局、管区行政評価局(5)、行政評価事務所(3)
調査結果

1 農業経営の法人化の推進

・都道府県は、事業実施要綱・要領に基づき、(1)法人化を志向する農業者等について実態調査を実施し、その調査結果を法人育成のための対象選定等に活用、(2)法人育成推進重点地区活動として法人育成に意欲のある市町村を対象にして重点地区を選定し、法人育成のための関係機関の役割分担、具体的方策について現地検討を実施
・指定農業団体(農業会議等)は、事業実施要領に基づき、指導を受けようとする者から申請があった場合に、法人設立に当たっての課題と対応策等を明らかにした法人化計画書を作成した上で法人設立の助言・指導並びに法人経営の課題及び経営改善の方向を明らかにした経営診断書を作成した上で法人経営指導を実施   
○法人化志向農業者等の実態調査が未実施あるいは調査結果が必ずしも活用されていない
(調査未実施: 調査対象8道県中4県、調査結果が活用されていないもの:調査実施4県中3県)
○法人育成推進重点地区活動として法人化を推進するための具体的方策等の現地検討を行っているものが少ない
(法人化志向農業者等の実態調査を実施せず又は市町村の意向を考慮せずに対象市町村を選定、現地検討会未開催、市町村との連携不十分等の状況。このため、関係機関の役割分担及び法人育成のための具体的方策の検討に至っていないもの:調査対象8道県中5県)
○法人設立指導及び法人経営指導が適正かつ効果的に実施されていない
(法人設立指導及び法人経営指導の実績が過去3カ年間全くないもの:調査対象8団体中1団体)
(実施要領に定める法人化計画書未作成あるいは同計画書に記載すべき事項が未記載のまま法人設立の指導を実施しているもの等:7団体中5団体)
(実施要領に定める経営診断書を作成せずに経営診断を実施しているもの、稲作以外の営農類型に対応した的確な経営診断を実施していないもの等:7団体中3団体)

1.   法人化志向農業者等の実態調査の実施及び調査結果の活用について都道府県に徹底
2.   法人育成推進重点地区活動の対象となる市町村を適切に選定するとともに、事業活動の展開に当たり市町村等関係機関との連携を確保すること等について都道府県に徹底
3.   適正かつ効果的な法人設立指導及び経営指導が行われるよう都道府県を通じ指定農業団体に徹底

2 農業担い手への農用地の集積の促進

・農地移動適正化あっせん事業:農業委員会が農用地等の売買、貸借等のあっせんを行うもの
・農地保有合理化事業:都道府県・市町村農業公社、農協等の農地保有合理化法人が相手方として、認定農業者等を優先して農用地等の売渡し等を行うもの
(注)認定農業者:中核的担い手として、意欲的に経営改善に取り組む農業経営者で、市町村から農業経営改善計画の認定を受けた者(平成11年度末現在 150,324)
あっせん事業においてあっせんの相手方として農地保有合理化事業におけるような認定農業者を優先する取扱方針が示されていない。このため、農業委員会の中には、あっせんによる農用地等の集積実績がないものや認定農業者への農用地の集積が低調なものあり
(あっせんによる農用地等の権利移動の実績が全くないもの:10年度及び11年度で調査対象34農業委員会中14委員会)
(抽出20農業委員会中、あっせんに際し、認定農業者への農用地等の集積への配慮が行われており集積が進んでいるもの(認定農業者への集積面積割合が80パーセント以上)が5委員会ある一方で、集積が低調となっているもの(同10パーセント未満)が10委員会)
農地保有合理化事業において、農用地等の売渡し等は認定農業者を優先して行うこととされているが、そのとおりに実施しておらず、認定農業者への農用地の集積が低調なものあり
(抽出21農地保有合理化法人中、売渡し又は貸付けによる認定農業者への集積面積の割合が80パーセント以上のものが5法人ある一方で、同40パーセント未満のものが10法人)

1.   あっせん事業について、認定農業者を優先する取扱方針を明確に示すこと
  あっせん事業の活性化を図るなどにより、担い手への農用地等の集積の促進が図られるよう都道府県を通じて農業委員会に徹底
2.   農地保有合理化事業について、事業がより効果的に実施されるよう都道府県を通じて農地保有合理化法人に徹底

3  農用地の集積等に係る補助事業費の取扱いの明確化

国の補助金については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第 179号)において、 「各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当たっては、(中略)公正かつ効率的に使用されるよ う努めなければならない」とされている
農用地の集積等に係る補助事業費の執行状況の中には、補助事業者における補助対象費用に関する理解が区々となっている実態
(調査対象3事業:農地流動化促進事業、農地保有合理化事業、農用地利用集積特別対策事業)
(農地流動化促進事業については、農林水産省が平成12年2月に当該事業の施行に伴い必要となる給料・賃金、旅費、報償費等についての補助対象外費用の例を初めて示したが、一部について不明確な点がある。他の2事業については、未だ各費目ごとに使途の範囲を明確に示していない。)
(補助事業者は、これら事業費の執行に当たって、視察研修、会議等に要する経費の取扱いが区々。補助対象の範囲が必ずしも明確でない状況)

  補助事業費の取扱いについて、補助金交付要綱等に基づく具体的な取扱方針を補助事業者に明確に示すとともに、その方針に基づく指導の徹底を図るなど、必要な措置を講ずること