自動車の検査・登録及び整備に関する

行政評価・監視結果に基づく勧告

 

 

 

 

 

 

平成13年8月

 

総務省

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前  書  き


  我が国の自動車保有台数は年々増加し、平成13年3月末現在で 7,552万台に達している。自動車は国民の交通手段として、また、物流の担い手として、国民生活に欠かせない存在となっており、その安全性の確保は重要である。
  国は、自動車の安全性の確保等のため、自動車の検査・登録及び整備に関する制度を設けており、関連行政を実施する機関として、国土交通省の地方支分部局である陸運支局及び自動車検査登録事務所(以下「陸運支局等」という。)が置かれている。
  自動車の検査・登録及び整備に関する業務は、検査登録手数料を財源とする自動車検査登録特別会計により運営されており、業務運営の効率化、要員の合理化等を含め、経費の効率的な使用が要請されている。
  また、陸運支局等が行っている業務のうち、自動車の検査(検査場における検査)については、平成14年9月までに独立行政法人に移行することとなっている。「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)では、「独立行政法人化等事務及び事業の減量、効率化を行う機関にあっては、その合理化に対応した整理を実施する」とされており、陸運支局等の組織の簡素化、効率化が課題となっている。
  さらに、検査・登録手続等に係る国民負担の一層の軽減、自動車分解整備事業者に対する効率的かつ効果的な監督も求められている。
  この行政評価・監視は、自動車の検査・登録及び整備に関する制度並びに運営の実態について調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。



目      次



  検査・登録業務の実施体制の見直し

(1)  組織の合理化

(2)  要員の合理化及び施設整備の適正化

(3)  出張検査及び出張登録の見直し

  検査・登録及び整備に関する規制の見直し

(1)  定期点検項目の簡素化

(2)  検査・登録及び整備に関する申請手続の簡素化等

(3)  監査業務の効率的かつ効果的な実施




   検査・登録業務の実施体制の見直し
   我が国の自動車保有台数は年々増加し、平成13年3月末現在では7,552万台に達し、自動車は国民の交通手段として、また、物流の担い手として、国民生活に欠かせないものとなっている。
   自動車のうち軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く自動車は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第4条の規定により、国土交通大臣の管理する自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならないとされている。また、小型特殊自動車及び国土交通省令で定める軽自動車(注)を除く自動車は、同法第58条の規定により、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならないとされている。自動車検査証の有効期間は、自動車の種類等ごとに1年から3年とされている。
  (注)  国土交通省令で定める軽自動車とは、二輪の軽自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車等であり、いわゆる軽乗用車、軽トラック等は検査対象に含まれる。
   自動車の検査においては、当該自動車が道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号。以下「保安基準」という。)に適合するか否かについて審査を行っている。自動車の使用者は、原則として、検査申請書等の必要書類とともに、当該自動車を提示して、国土交通大臣の行う検査を受ける必要がある。しかし、この例外として、1.新たに自動車を運行の用に供しようとするときに受ける新規検査において、国土交通大臣がその型式を指定した自動車について、指定申請者(自動車メーカー等)が発行した完成検査終了証を提出した場合、2.自動車分解整備事業者のうち一定の基準に適合する設備等及び自動車検査体制を有するものとして地方運輸局長から指定を受けた事業者(以下「指定整備事業者」という。)が整備した自動車について、当該指定整備事業者の自動車検査員が検査を行い、保安基準に適合することを証明し、同事業者が交付した有効な保安基準適合証を提出した場合(指定整備事業者が実施する自動車の検査業務を「指定整備」という。以下同じ。)にあっては、自動車の提示を要しないとされている。このように、検査業務の一部については民間能力の活用が図られており、完成検査終了証の提出による検査及び保安基準適合証の提出による検査は、平成12年度において、自動車(軽自動車を除く。(注))の検査件数全体の70パーセントを占めている。国が自動車を提示させて行う検査(以下「現車検査」という。)を書類審査とともに行っているのは残りの30パーセントである。
  (注)  検査対象軽自動車については、運輸大臣(当時)の認可を受けた軽自動車検査協会が、道路運送車両法第74条の2の規定に基づき昭和48年10月から検査を実施している。
   また、自動車の登録には、新たに自動車を使用するときに行う新規登録、自動車の所有権の移転に伴う移転登録、自動車の所有者の住所変更等に伴う変更登録、自動車を使用しなくなったときに行う抹消登録等の種類があり、このほか、登録事項その他の自動車登録ファイルに記録されている事項の証明(登録事項等証明)、自動車の抵当権設定の登録等の制度が設けられている。国土交通省では、新規登録、移転登録、変更登録、抹消登録及び登録事項等証明のうち現在の登録事項に係る現在登録証明(これらの5つの登録等を総称して、以下「主要登録」という。)の合計件数(主要登録件数)を登録業務の主要な業務量指標として用いている。
   これら自動車の検査・登録の事務等を処理するため、国土交通大臣は、国土交通省設置法(平成11年法律第100号)第37条第1項等の規定に基づき、所要の地に、陸運支局及び自動車検査登録事務所を置くことができるとされている(沖縄県については、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第47条第1項等の規定に基づき、内閣総理大臣が、陸運支局及び自動車検査登録事務所とそれぞれ同様の業務を分担する陸運事務所及びその支所を置くことができるとされている。)。
   陸運支局は、道路運送車両法に基づく自動車の検査・登録のほか、同法に基づく自動車分解整備事業等に関する業務、道路運送法(昭和26年法律第183号)に基づく道路運送事業に関する業務等を実施しており、平成13年4月1日現在、都道府県単位に52支局(北海道は7支局)が設置されている。また、陸運支局の業務のうち自動車の検査・登録の業務を分担する自動車検査登録事務所は、平成13年4月1日現在、20陸運支局の下に計36事務所が設置されている。このほか、沖縄県には1陸運事務所及び2支所が設置されている。陸運支局及び自動車検査登録事務所(以下「陸運支局等」という。)には、現車検査業務を実施するため、自動車検査場が設けられており、その中に検査コースがある。
   国土交通省では、現車検査業務の増大に対応した自動車検査登録事務所(以下「事務所」という。)の新設について、以下の考え方によることとしている。
    1.   まず、現車検査業務の増大には、指定整備制度による民間能力を活用する。
    2.   指定整備の増加を見込んでも陸運支局等における業務量の増大が将来的に著しくなることが予想される場合には、既存の陸運支局等の自動車検査場に検査コースを増設する。
    3.   検査コース増設のための用地の確保(自動車検査場の全面移転に伴うものを含む。)や陸運支局等の構内施設の配置の変更による検査コースの増設が困難な場合であって、次の4つの条件をすべて満たす場合には、これらを総合的に勘案して事務所の新設を検討する。
i)   事務所新設を予定している管轄区域における検査対象自動車数の伸びが著しく、年間検査予想台数が年間標準検査台数(1コース当たり2万7,000台)を大幅に超えていること。
ii)   事務所新設を予定している管轄区域がまとまった経済圏を形成していること。
iii)   事務所新設を予定している管轄区域において、自動車検査場の用地を確保することができること。
iv)   事務所の新設について、都道府県及び市町村の全面的な協力が得られること。
   平成元年度以降12年度末までに5事務所が新設されている。
   陸運支局等の検査部門には、先任自動車検査官(先任自動車検査官が置かれていない陸運支局にあっては整備課長)の下に自動車検査官等が配置され、検査コースにおいて検査のため提示された自動車の現車検査を行うほか、検査申請書の受付・審査、合格した車両に対する自動車検査証交付等の窓口業務等を処理しており、平成12年度末現在1,066人の要員が配置されている。先任自動車検査官が置かれていない陸運支局の整備課では、自動車分解整備事業者に対する指導監督等の業務とともに自動車の検査業務を行っている。
   また、陸運支局等の登録部門には、先任自動車登録官の下に自動車登録官等が配置され、各種登録の事務のほか、自動車の臨時運行の許可その他道路運送車両法の施行に関する事務等を処理しており、平成12年度末現在1,056人の要員が配置されている。
   このほか、陸運支局には管理部門(支局長及び次長を含む。)、整備部門及び旅客・貨物部門(輸送行政部門)が、事務所には事務所長が置かれており、合わせて845人が配置されている。
   これらの合計2,967人の要員のうち、検査部門1,066人、登録部門1,056人、整備部門358人のうち354人及び管理部門等の一部185人の計2,665人の要員については、検査登録手数料を主たる財源とする自動車検査登録特別会計から人件費が支弁され、残りの旅客・貨物部門(輸送行政部門)等の要員302人については、一般会計から人件費が支弁されている。

(1)   組織の合理化
   陸運支局等が実施している業務のうち検査場における検査(自動車検査場において行う現車検査業務)は、平成14年9月末までに自動車検査独立行政法人に移行することとされており、これ以外の検査業務(申請書類受付・審査、自動車検査証交付業務等)及び登録業務は国の事務として存置されることとなっている。国土交通省では、自動車検査独立行政法人には同省から約900人が移行する見込みで、そのほとんどは陸運支局等の検査部門からの移行であるとしている。
   自動車検査独立行政法人における現車検査実施体制及び国の事務として存置される事務の実施体制については、今後、国土交通省を中心として、政府において検討が進められることになるが、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)においては、「独立行政法人化等事務及び事業の減量、効率化を行う機関にあっては、その合理化に対応した整理を実施する」とされているところである。

   今回、54陸運支局等(32陸運支局及び22事務所)を抽出して、自動車の検査・登録の業務量、業務体制等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   独立行政法人化後の国の検査業務体制
   調査した54陸運支局等における自動車検査業務の主要な業務量指標である現車検査件数及び自動車登録業務の主要な業務量指標である主要登録件数を平成7年度から11年度までの5年間の平均でみると、陸運支局等間で大きな差がある。現車検査件数は、陸運支局では3万1,227件ないし27万5,750件、事務所では4,385件ないし18万7,481件、主要登録件数は、陸運支局では7万1,751件ないし83万538件、事務所では 6,686件ないし55万8,381件となっている。
   検査・登録の両部門の要員数(平成11年度末定員)をみると、1陸運支局当たりの平均は、検査部門14.1人、登録部門14.3人の計28.4人、1事務所当たりの平均は、検査部門10.1人、登録部門9.0人の計19.1人となっている。また、両部門における要員の配置数(平成11年度末定員)は陸運支局等間で大きな差がある。陸運支局では、検査部門が5人ないし31人、登録部門が6人ないし33人であり、事務所では、検査部門が1人ないし24人、登録部門が1人ないし20人となっている。
  (注)  事務所については、事務所長22人の定員は除いている。
   こうした検査部門の要員の大半は、現車検査業務が自動車検査独立行政法人に移行されることに伴い、同法人に移行されることとなっており、独立行政法人移行後の陸運支局等に残される検査業務体制について、大幅な見直しが求められている。
   小規模事務所の在り方
   22事務所の平成11年度末における1事務所当たりの定員は20.1人(所長を含む。)であるが、事務所については、自動車の検査・登録の業務のみを分担しているため、現車検査業務の独立行政法人移行後において、要員がおおむね半減することとなる。
   このような状況を踏まえつつ、22事務所についてみると、その中には、国土交通省が一般的な事務所新設の目安としている年間現車検査件数2万7,000件を下回っているものが4事務所(うち2事務所は離島に設置)みられる。これら4事務所の年間現車検査件数は、22事務所の1事務所当たり平均の年間現車検査件数(平成7年度から11年度までの間の平均8万9,535件)の約5パーセント(同4,385件)ないし約24パーセント(同2万1,850件)となっており、また、年間主要登録件数も、22事務所の1事務所当たり平均の年間主要登録件数(平成7年度から11年度までの間の平均19万330件)の約4パーセント(同6,686件)ないし約25パーセント(同4万6,905件)となっているなど、検査・登録の業務量が著しく少なくなっている。
   要員1人当たりの業務量でみても、22事務所の平成7年度から11年度までの5年間の実配置検査担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車検査官及びユーザー車検専門官を除く要員)1人当たり年間現車検査件数の平均は9,898件、実配置登録担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車登録官、ユーザー専門官及び管理係長を除く要員)1人当たりの年間主要登録件数の平均は2万6,073件であるが、上記4事務所の実配置要員1人当たり年間現車検査件数及び年間主要登録件数は共に平均の60パーセント未満となっており、中には20パーセント台のものもあるなど、要員の配置も非効率となっている。
   平成11年度末現在における上記4事務所の定員は、22事務所の平均定員(20.1人)のそれぞれ約15パーセント(3人)ないし約60パーセント(12人)となっており、現車検査業務の独立行政法人移行後においては、これまで以上に小規模な事務所となる。
   国土交通省では、これら4事務所について、既存の陸運支局等から相当程度離れた地域で地理的条件から交通が不便であること、検査対象車両が増加していること、他の地域と隔離した独立した生活圏を形成している地域であったこと等から特に必要と認められるとして設置された経緯があるとしている。しかしながら、今日では、高速道路網の整備、高速船舶の就航等により交通事情が改善してきている地域もみられるところであり、また、陸運支局等の遠方に在住する利用者の利便を図るため、職員が出張して検査・登録業務を実施する出張検査及び出張登録の実施状況をみても、上記4事務所のうち3事務所が処理している年間現車検査件数を上回る件数を処理している例や離島で開催している例があることから、著しく業務量が少ない事務所については、検査業務体制の見直しを行う中で、出張検査等による業務の代替等を含め、組織の在り方について検討する余地がある。

   したがって、国土交通省は、独立行政法人化に伴う業務及び要員の独立行政法人への移行を踏まえ、陸運支局等の業務体制の減量、効率化を図り、組織の在り方を見直す必要がある。

(2)   要員の合理化及び施設整備の適正化
   自動車の検査・登録業務については、陸運支局等に配置された検査要員、登録要員等が処理している。
   検査部門及び登録部門の要員の推移をみると、年間現車検査件数は平成6年度の995万件から12年度には893万件(6年度の89.8パーセント)に減少しており、検査部門の要員は6年度の1,079人から12年度には1,066人(同98.8パーセント)に微減している。また、年間主要登録件数は、平成6年度の2,073万件以降、8年度の2,329万件をピークに減少し、12年度には2,121万件(6年度の102.3パーセント)となっており、登録部門の要員は6年度の1,092人から12年度には1,056人(同96.7パーセント)に減少している。
   自動車の検査・登録の業務については、自動車検査登録特別会計法(昭和39年法律第48号)に基づき、自動車検査登録特別会計により一般会計と区分して経理されている。同特別会計の平成12年度予算における歳出50,890百万円の内訳をみると、人件費が24,332百万円(約48パーセント)と最も多く、次いで庁費 7,995百万円(約16パーセント)、施設整備費7,174百万円(約14パーセント)の順となっている。
   陸運支局等の検査・登録業務は、検査コースの自動化(各検査項目が終了するごとに次の手順が表示され、これに従って受検者が次の検査項目に移動する仕組みで、昭和46年度から導入が開始され、平成12年度末には99パーセントの検査コースに導入完了)、自動車登録検査業務情報処理システムの導入(昭和51年12月、全陸運支局等に導入完了)及び更改、検査・登録申請書の光学的文字読取装置(OCR)による入力(昭和63年1月にマークシート方式からシステム変更)等により事務の効率化が図られてきている。
   また、政府は、平成11年12月、高度情報通信社会推進本部において決定した「バーチャル・エージェンシーの検討結果を踏まえた今後の取組について」に沿って、自動車の保有に伴い必要となる各種の行政手続(検査・登録、車庫証明、納税等)について、国民負担の軽減及び行政事務の効率化を図るため、手続の電子化によるワンストップサービス(各種の行政サービスを1か所又は1回の手続で提供するもの)を実現し、おおむね平成17年を目標としてワンストップサービスシステムの稼動開始を目指すこととしている。
   さらに、陸運支局等が実施している業務のうち現車検査業務については、平成14年9月末までに独立行政法人に移行することとされており、1-(1)で述べたとおり、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」においても「独立行政法人化等事務及び事業の減量、効率化を行う機関にあっては、その合理化に対応した整理を実施する」とされている。
   陸運支局等の検査部門及び登録部門の要員については、これらの設備の近代化、手続の電子化の進展、独立行政法人化等による行政事務の効率化により、一層の合理化を進めていくことが求められている。

   今回、54陸運支局等(32陸運支局及び22事務所)における検査及び登録業務の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   検査の体制
(ア)   調査した54陸運支局等のうち1-(1)に掲げた小規模事務所(4事務所)を除く50陸運支局等における平成7年度から11年度までの間の検査担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車検査官(整備課長)、次席自動車検査官、整備課長補佐及びユーザー車検専門官を除く定員。以下、本項目において同じ。)1人当たりの年間平均現車検査件数をみると、同様な組織体制の陸運支局間で最大2.1倍、事務所間で最大2倍の較差が生じている。検査コース数が同じで年間現車検査件数もほぼ同程度の陸運支局等間でみても最大1.3倍の較差が生じており、検査部門の要員配置が業務量に対応していない状況がみられる。
   検査コース数と要員配置の関係をみると、国土交通省では、検査コースの増設に合わせて要員の増配置を行ってきており、平成7年度から10年度までの間に検査コースを増設した9陸運支局等では、検査コースを増設した年度に3人又は4人の検査担当要員が増員されている(注)。これらの陸運支局等における検査コース増設前年度と11年度の年間現車検査件数を比較すると、8陸運支局等の現車検査件数はほぼ横ばい又は減少となっている。これを9陸運支局等ごとの1コース当たり年間現車検査件数でみると、14パーセントないし54パーセントの減少、検査担当要員1人当たり年間現車検査件数でみると、8パーセントないし42パーセントの減少となる。これらの9陸運支局等のうち5陸運支局等では、平成7年度から11年度までの5年間の1人当たり年間平均現車検査件数も、50陸運支局等の平均(1万1件)を下回っている。
  (注)   検査コースの増設によりコース数が偶数となる場合は3人、奇数となる場合は4人を増配置
   また、検査コースを増設した陸運支局等の増設直後の検査担当要員は、近年検査コースを増設していない陸運支局等(検査コース数が同じで現車検査件数が同程度以上の陸運支局等)より6パーセントないし43パーセント配置数が多く、検査コースの増設により要員の配置が過大となっている例がみられる。
   一方、検査コースにおける検査項目(ブロック)別の要員配置は、必ずしも固定的ではなく、例えば、自動車検査官が自動車の車台番号や種別、車体の形状が自動車検査証と同一であることを確認したり、自動車の外観を検査する検査コースのブロックでは、1コース当たり1人を配置している陸運支局等がある一方、2コースに1人あるいは3コースに2人を配置している陸運支局等もあるなど、陸運支局等によって検査コースへの要員配置の方法は異なっており、現車検査件数に対応した柔軟な要員配置が可能となっている。
(イ)   陸運支局等の検査業務のうち窓口業務の中には、申請書類の受付における添付書類及び記載漏れの確認等の形式審査や、OCRへの投入、自動車検査証の交付など定型的、反復的なものがある。54陸運支局等におけるこうした定型的、反復的な業務の処理状況をみると、中には、自動車検査官等検査担当要員の監督の下、非常勤職員にこれらの業務を処理させている例がみられる一方、同様の業務を自動車検査官等検査担当要員が分担している例もある。
   登録の体制
   陸運支局等の登録部門の要員について、国土交通省では、主要登録件数を基に、ユーザー登録の登録件数に占める割合、係争事案の有無等の地域事情も考慮して配置することとしているが、その配置について、具体的な数値基準等を定めていない。54陸運支局等のうち1-(1)に掲げた小規模事務所(4事務所)及び比較的事務量の少ない現在登録証明の件数が他の事務所に比べ格段に多いため主要登録件数が最多となっている1事務所を除く49陸運支局等における平成7年度から11年度までの間の登録担当要員(先任自動車登録官、次席自動車登録官、ユーザー専門官及び管理係長を除く定員。以下、本項目において同じ。)1人当たりの年間平均主要登録件数をみると、陸運支局間では最大2.6倍、事務所間では最大2.2倍の較差が生じている。主要登録件数がほぼ同程度である陸運支局等間においても、1.5倍以上の較差が生じており、登録部門の要員配置が業務量に対応していない状況がみられる。
   また、登録担当要員の現員が定員を下回っている陸運支局等の中には、登録担当要員を主に一般会計に属する旅客、貨物等の輸送行政部門に継続的に配置している状況がみられる(9陸運支局14人)。
   施設整備等
   国土交通省では、毎年度、地方運輸局に現車検査件数の伸びの予測等を踏まえた4年ないし5年先の施設整備に関する要望を提出させ、これを参考にしつつ各陸運支局等の施設を整備している。平成元年度以降12年度末までの間に、5事務所の新設、7陸運支局等の移転、28検査コースの増設等が行われている。
   しかし、調査した54陸運支局等における施設整備の実施状況をみると、その中に、次のとおり、需要を的確に把握せずに実施した事例がある。
   1.   管内における二輪自動車の保有台数が少ない陸運支局等の方が二輪車検査コースの整備対象となっているもの(2例)
   2.   事務所の新設による管轄区域の分割縮小が予定されており、入居する職員数の減少が見込まれていたにもかかわらず、当該見込みが建て替えた庁舎の床面積に反映されていないもの(1例)
   また、施設を移転した場合、跡地の速やかな処分と処分までの間の適切な管理が必要となるが、移転後20年以上経過しているにもかかわらず処分が行われておらず、維持管理も適切に行われていない例がみられる(1例)。

   したがって、国土交通省は、自動車の検査・登録業務について、業務運営の効率化、要員の合理化及び自動車検査登録特別会計の経費の効率的な使用を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   検査担当要員については、現車検査件数を主たる業務量指標とし、業務量に対応した要員配置となるよう見直しを行うこと。また、検査業務について、非常勤職員で対応可能な業務範囲を見極めつつ、非常勤職員の活用を推進すること。
2.   登録担当要員については、業務量及び業務内容に対応した適正な要員配置となるよう、主要登録件数等を基礎とした要員の配置方法に則って見直しを行うこと。
3.   施設の整備は、需要を的確に把握した上で行うこと。また、施設の移転跡地の処分を促進するとともに、処分までの間の管理を適切に行うこと。

(3)   出張検査及び出張登録の見直し
   出張検査は、陸運支局等から遠距離にある地域に自動車検査担当職員等が出張して検査を行うものであり、利用者の利便向上を図る観点から、昭和20年代に開始された。出張検査は、開催場所ごとに日程を定め、地元の自動車整備事業者団体等が設置・運営している検査施設を国が借り上げて、現車検査を中心に主として継続検査を実施している。平成12年度には、56陸運支局等が133か所(対6年度比94パーセント)において出張検査を開催しており、39万6,668件(対6年度比78パーセント。うち現車検査23万7,021件)の検査が行われている。
   国土交通省は、出張検査について、「自動車の出張検査場の指定について」(昭和31年10月8日付け自車第634号運輸省自動車局整備部車両課長通達)により、1.陸運事務所(現在は陸運支局)所在地検査場(本場検査場)と出張検査開催場所及び出張検査開催場所相互間の道路距離が40キロメートル以上であること、2.当該地域に使用の本拠を有する検査対象自動車が500台以上であること等、開催に関する基準(以下「出張検査開催基準」という。)を示すとともに、極力、出張検査開催場所の集約化を図るよう指示している。
   出張登録は、出張検査と同様、陸運支局等から自動車登録担当職員が出張して登録を行うものであり、平成6年度から開始された。出張登録は、一部の出張検査開催場所において出張検査の開催に併せて行われており、主要登録業務等を取り扱っている。平成12年度には、10陸運支局が19か所において開催しており、5,902件の主要登録が行われている。
   国土交通省は、出張登録について、「出張登録における業務処理について」(平成8年10月1日付け自管第77号運輸省自動車交通局技術安全部管理課長通達)により、1.新規登録等主要登録のほか、登録に付随する業務として、自動車登録番号標(ナンバープレート)への封印の取付け、再封印の取付け等の業務を行うこと、2.管轄陸運支局と出張登録開催場所の距離が60キロメートル以上であること等、開催に関する基準を示している。

   今回、54陸運支局等において開催しているすべての出張検査(35陸運支局等67か所)及び出張登録(3陸運支局5か所)の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   陸運支局等と出張検査開催場所の道路距離(以下「距離」という。)及び出張検査開催場所相互間の距離をみると、陸運支局等と出張検査開催場所の距離が出張検査開催基準に定める40キロメートル未満のものが6か所、出張検査開催場所相互間の距離が40キロメートル未満のものが1事例(2か所)みられる。
   また、67か所の出張検査開催場所のうち62か所においては自動車検査のうち継続検査のみを取り扱っているが、継続検査は、自動車の使用の本拠地を管轄する陸運支局等とは異なる陸運支局等においても受検することができることとされている。このため、継続検査のみを扱う出張検査の開催場所については、管轄の陸運支局等のみならず隣接する陸運支局等の自動車検査場やその出張検査開催場所との距離をも考慮して、より広域的な観点から検討することが必要であるが、出張検査開催基準には、この点が明示されていない。
   この観点から62か所の出張検査開催場所をみると、管轄の陸運支局等との距離は開催基準を満たしているものの、隣接する陸運支局等の管内で開催されている出張検査開催場所と近接しており、年間の検査件数も全国平均を下回っているものが1か所みられる。当該出張検査開催場所における自動車検査は、その件数等からみて、隣接出張検査開催場所での処理が可能である。
   出張検査開催場所67か所における平成7年度から11年度までの5年間の実績をみると、開催回数は1か所当たり年間平均28.8回、1か所当たりの年間平均現車検査件数は2,435件、開催1回当たりの平均現車検査件数は84.6件となっている。
   67か所の出張検査開催場所の中には、離島において開催されている9か所を除いても、月1回ないし2回程度開催されているが開催1回当たりの現車検査件数が上記の平均の半分を下回っているものが4か所、年2回ないし6回しか開催されておらず開催1回当たりの現車検査件数も同様に半数以下のものが3か所みられる。
   また、出張検査の実施体制についてみると、通常、2人の職員が出張し、検査業務を行っているが、現車検査件数が特に多くないにもかかわらず3人の職員が出張している例もみられる。
   出張登録については、開催場所5か所における平成7年度以降11年度までの平均年間開催回数は15.8回、1か所当たりの平均年間登録件数は344件、開催1回当たりの平均登録件数は21.8件と低調な実績となっており、中には、開催1回当たりの取扱件数が数件程度しかないものも1か所みられる。
   出張検査は、地元の自動車分解整備事業者団体等が出張検査の開催のために設置した施設を国(地方運輸局)が有償で借り上げて実施している。出張検査の開催情報の提供状況を33陸運支局等についてみると、いずれも当該団体の会員である事業者等特定の者のみを対象としており、一般ユーザー等を対象とする広報は行われていない。このため、出張検査開催場所67か所における出張検査の利用は、事実上特定の自動車分解整備事業者に限定され、近年増加してきているユーザー車検(自動車の使用者等が自動車分解整備事業者などに整備及び受検手続を依頼せず自ら又はその代理人が自動車検査を受検するもの)の実績も皆無である。
   また、出張登録を実施している3陸運支局においても、出張登録の開催について、一般ユーザー等を対象とする広報を実施した実績はない。

   したがって、国土交通省は、自動車の出張検査及び出張登録について、業務運営の効率化及び要員の効率的配置並びに利用者の利便を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   出張検査の開催基準に満たない出張検査は中止又は集約すること。また、開催場所は、他の陸運支局等及びその管内の出張検査開催地との距離も踏まえて定めること。
2.   出張検査及び出張登録のうち実績が低調なものについては、開催場所が離島である等特殊な事情がある場合を除き、出張検査等の中止又は開催回数の大幅な削減を行うこと。
   また、出張人員の規模を適正なものとすること。
3.   出張検査及び出張登録を開催する場合には、広く利用機会が確保されるよう開催についての広報等に努めること。

   検査・登録及び整備に関する規制の見直し
(1)   定期点検項目の簡素化
   自動車の使用者は、道路運送車両法第47条の規定により、自動車の点検をし、必要に応じ整備をする(点検整備)ことにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならないとされている。
   自動車の点検は、目視等により日常的に行うこととされている点検(日常点検)と、一定の期間ごとに行うこととされている点検(定期点検)とに区分され、車種に応じた具体的な点検の項目とそれぞれについての技術上の基準(点検箇所と点検内容)が国土交通省令(「自動車点検基準」(昭和26年運輸省令第70号))に規定されている。国土交通省は、「自動車の点検及び整備に関する手引」(平成12年運輸省告示第 162号)により、自動車の使用者が点検整備に理解を深めるための点検の実施方法の指針を示している。
   定期点検については、平成4年6月の臨時行政改革推進審議会の「国際化対応・国民生活重視の行政改革に関する第3次答申」において、「安全性及び公害規制と密接に関連する事項のみを対象とするように点検項目数を大幅に削減する。その際併せて、自家用乗用車の6カ月点検は廃止する」とされ、平成5年6月の運輸技術審議会の答申を経て、7年7月に、自家用乗用車の6か月点検が廃止されるとともに、点検項目数の半減(自家用乗用車の場合、1年点検の点検項目を60項目から26項目に、2年点検の点検項目を 102項目から60項目にそれぞれ削減)等の措置が講じられた。また、上記第3次答申において、「自動車の定期点検整備及び検査については、自動車技術の進歩等に対応して今後とも常に見直しを行う」とされ、上記運輸技術審議会答申においても、「国は、今後とも、自動車の技術の進歩等に対応して適宜、点検項目等について見直しを行うことが必要である」とされた。
   また、平成7年12月の行政改革委員会の「規制緩和の推進に関する意見(第1次)」において、「営業用自動車等を含めた車検期間及び点検・検査項目については、その判断材料となる各種データの動向について、毎年継続的に監視を行う仕組みを設け、適時適切に見直しを行っていくべきである。この際、データや検討プロセスの公開により、制度の透明性の確保に努めるべきである」とされたことを受け、平成8年7月、運輸省(当時)は、学識経験者やユーザー代表、自動車業界団体代表等による「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」を発足させた。この基礎調査検討会の調査検討結果(平成10年3月)及び平成10年12月の運輸技術審議会の答申の指摘を踏まえ、12年5月から定期点検項目の更なる削減(自家用乗用車の場合、2年点検の点検項目を60項目から56項目に削減)が実施された。
   同答申においては、定期点検の時期及び項目の見直しに関して、自動車技術の進歩、使用状況の変化に対応するために、点検の結果何らかの整備作業が必要とされた割合(要整備率)を指標とし、
   (ア)   要整備率が低い項目については、廃止又は実施時期の延長を検討する。
   (イ)   要整備率が低くない項目であっても、点検が目視等により容易に確認できること、整備の主な作業が清掃等軽微であること、又は安全の確保等に必要な措置を講じることにより、日常点検にゆだねるか又は実施時期の延長を検討する。
   (ウ)   安全の確保及び環境の保全の観点から重要な項目は維持する。
との方針が示されている。
   さらに、同答申では、「国は、車種毎の不具合や自動車の使用実態等について継続的に調査等を行い、……今後、必要に応じて、点検整備の方法、自動車検査証の有効期間、検査内容等について検討していくことが適当」であるとされ、定期点検方法の不断の見直しの必要性が示されている。

   今回、自動車の点検整備について、自動車分解整備事業者、ユーザー団体、自動車製造事業者(メーカー)等を対象に調査を行った結果、次のような状況がみられた。
   自動車分解整備事業者が継続検査に伴い点検・整備した車両の点検整備記録簿から、我が国の自動車保有台数の約7割を占める自家用乗用車計 368台を抽出し、これについて定期点検項目ごとの要整備率を集計してみると、2年点検の点検項目56項目のうち35項目は要整備率が5パーセント未満となっている。この35項目のうち18項目は要整備率が1パーセント未満となっており、そのうち8項目については要整備車両が皆無となっている。
   要整備率が低い項目又は整備内容が軽微である項目の中には、「点火時期」、「ディストリビュータのキャップの状態」のように、装置の電子化等により点検の必要がない車種が増加してきているものがみられる。

   したがって、国土交通省は、自動車技術の進歩等に対応し、平成10年12月の運輸技術審議会答申を踏まえつつ、自動車の点検結果等について継続的に調査等を行い、自動車使用者の負担軽減の観点から定期点検項目について見直しを行う必要がある。

(2)   検査・登録及び整備に関する申請手続の簡素化等
   平成9年2月10日の閣議決定「申請負担軽減対策」においては、申請・届出の簡素化を図るため、1.申請書等の記載事項は、審査基準からみて必要不可欠のものに限る、2.添付書類は、申請書等の記載事項の真実性を裏付けるため及び諾否等の判断を行うために必要不可欠なものに限る、等の指針が示され、各省庁は各種申請・届出の積極的な見直しを行うこととされている。
   また、政府は、省庁の枠を超える様々な課題に対応するため、平成10年12月に内閣総理大臣直轄の省庁連携タスクフォースを設置し、自動車の保有に伴い必要となる検査・登録、納税等の諸行政手続を1か所又は1回の手続で完了させる仕組みを実現するための検討を行ったところであり、自動車の検査・登録等に関する申請書類・手続の簡素化は重要な課題となっている。

   今回、自動車の検査・登録及び整備に関する申請手続等について調査した結果、次のような状況がみられた。
   検査・登録申請用紙の入手の利便確保
   自動車の検査・登録の申請に使用する用紙は、紙質、印刷等について国土交通大臣の承認を受けた者が作製し(注)、各陸運支局等に隣接する販売所を設置している公益法人等がこれを販売しており、陸運支局等の窓口で入手することはできない。
  (注)  これらの申請用紙は、「自動車の登録及び検査に関する申請書等の様式等を定める省令」(昭和45年運輸省令第8号)によりその様式が定められているが、光学的文字読取装置(OCR)により入力処理を行うことから、申請書の紙質、印刷等について国土交通大臣の承認を得たものでなければならないとされている(同省令第5条)。このため、申請者が独自に申請用紙を作成することは困難となっており、財団法人自動車検査登録協力会が国土交通大臣の承認を受けて作製している。
   このため、通常、申請者、特に自動車の使用者が自ら申請を行う場合は、陸運支局等の事務庁舎内の申請手順の表示に従い、いったん庁舎を出て隣接する公益法人等の販売所で申請用紙を購入してこなければならない状況となっている。
   この点について、国土交通省では、おおむね平成17年を目標としてオンライン申請を可能とするワンストップサービスの実現を図ることとしており、申請用紙は徐々に不要となっていくことが予想されるとしている。
   しかしながら、現状においては、申請用紙を入手するために道路を横断しなければならないなど申請者の負担が大きい例がみられる。
   自動車分解整備事業関係申請書類の簡素化
   自動車分解整備事業を経営しようとする者は、道路運送車両法第78条の規定により、自動車分解整備事業の種類及び分解整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受けなければならないとされている。認証の申請に当たっては、同法第79条の規定により、申請書に加え、同法第80条の認証基準に適合することを証する書面及びその他地方運輸局長が必要と認める書面が必要とされている。
   また、自動車分解整備事業者が、国に代わって自動車の現車検査を行うことができる指定自動車整備事業の指定を受ける場合は、指定自動車整備事業規則(昭和37年運輸省令第49号)第1条に規定する申請書及び添付書面を地方運輸局長に提出することとされている。当該申請の審査に当たっては、道路運送車両法第94条の2の規定により、上記規則第2条の基準への適合性の確認に加え、設備、技術及び管理組織の基準を定めた優良自動車整備事業者認定規則(昭和26年運輸省令第72号)を適用することとされている。
   これを受けて、各地方運輸局では、それぞれ事務処理要領等で認証の申請及び指定の申請に必要な具体的な書類を示している。しかし、各地方運輸局が事務処理要領等に基づき申請者に提出させている書類をみると、一部の地方運輸局のみが提出を求めており、かつ、申請の審査をする上で必要性が乏しいとみられるものがある。
   例えば、事業場の写真の提出を求めているものが、9地方運輸局中認証の申請で5局、指定の申請で2局あり、また、工員名簿の提出を求めているものが、9地方運輸局中認証の申請で2局、指定の申請で5局あるが、これらはいずれも申請の審査に当たり陸運支局が行う現地調査により確認可能な事項である。特に、指定の申請において一部の地方運輸局が定める工員名簿の様式には、氏名、整備士資格、職名のほか、年齢、勤続年数、平均給与まで記載させることとなっているが、これらは申請を審査する上で不可欠な内容であるとはみられない。さらに、指定の申請において、4地方運輸局が提出を求めている自動車分解整備事業の認証書及び優良自動車整備事業の認定書の写し並びに1地方運輸局が提出を求めている自動車整備士合格証書については、陸運支局が把握している事項である。
   検査登録手数料の一括納付取扱対象の拡大
   自動車の検査・登録に要する手数料は、道路運送車両法第 102条及び道路運送車両法施行規則第69条の規定により、申請書に添付する手数料納付書に所定の金額の自動車検査登録印紙を貼付することによって納入することとされているが、「自動車検査登録手数料の一括納付について」(昭和62年3月20日付け地管第36号・地技第77号、運輸省地域交通局長通達)により、反復継続して大量に自動車検査登録手数料の代納を行う者で陸運支局長が指定した者(登録代行センター)は、手数料を一括して納付することができる。この措置は、同一日に提出する複数の申請についてそれらの手数料の合計額を高額印紙により一括して納付することができるものであり、申請事務の負担軽減に寄与するものとなっている。
   一括納付が認められている手数料は、完成検査終了証の提出をもって当該自動車の提示に代えることができる新規検査登録(いわゆる新車新規)に限定されているが、同種の申請について大量に手数料を納付する場合で、手続上の支障がなく、かつ、申請者側及び陸運支局等の双方の事務負担の軽減が図り得るものについては、新車新規以外にも一括納付制度の適用を拡大する余地があるとみられる。この点については、登録代行センターを中心に、例えば、指定整備事業者が保安基準適合証を発行した中古自動車に係る新規検査登録(いわゆる中古新規)、継続検査等についても一括納付制度の適用について要望がみられる。
   封印取付委託申請書類の簡素化
   自動車の所有者は、道路運送車両法第11条の規定により、自動車登録番号標(ナンバープレート)に、国土交通大臣又は同大臣による委託を受けた者(以下「受託者」という。)の行う封印の取付けを受けなければならない。国土交通大臣による委託を受けようとする者は、それぞれ管轄の陸運支局に委託申請を行うこととされている。
   受託者は、その取扱車両の範囲の違いから甲種、乙種及び丙種に区分され、このうち乙種封印受託者(主に新車を販売する自動車販売店(ディーラー)が自ら販売する自動車に封印するため受託者となっているもの)に委託を行う場合の要件については、業務委託の簡素・合理化の観点から、登録自動車の販売台数又は見込販売台数が一定数以上であることを要件としないよう、平成6年2月の事務連絡により、運輸省(当時)から各陸運支局に対して指示されている。
   しかし、14陸運支局について、各陸運支局が乙種封印受託者の申請者に求めている封印取付委託申請の添付書類をみると、陸運支局が定める取扱細則等により最近3か月又は6か月の新車販売実績又は販売計画書を提出させているものが4支局ある。また、取扱細則等では提出することとされていないものの、事実上これらの書類を提出させているものも4支局ある。

   したがって、国土交通省は、自動車の検査・登録及び整備に関する申請手続等に係る国民の負担軽減を図る観点から、以下の措置を講ずる必要がある。
1.   検査・登録の申請用紙については、申請者が陸運支局等の庁舎内で入手できるようにするなど、所要の措置を講ずること。
2.   自動車分解整備事業の認証申請及び指定自動車整備事業の指定申請の審査における申請書類の利用実態を調査し、これを踏まえ申請を審査する上で必要性が乏しい書類を廃止し、申請書類を簡素化すること。
3.   検査登録手数料の一括納付の取扱対象を新車新規以外にも拡大すること。
4.   封印取付委託の申請において委託要件としていない事項に係る書類を求めないよう徹底すること。

(3)   監査業務の効率的かつ効果的な実施
   自動車分解整備事業は、自動車の使用者の依頼を受け自動車の点検、整備、検査等を行うことにより、自動車の安全な運行等に重要な役割を果たしている。
   自動車分解整備事業を経営しようとする者は、道路運送車両法第78条の規定により、対象とする自動車の種類及び分解整備を行う事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けることとされている。
   また、地方運輸局長は、道路運送車両法第94条の2の規定に基づき、認証を受けた自動車分解整備事業者の申請により、一定の基準に適合する設備等及び自動車検査員等の体制を有するものについて指定自動車整備事業の指定を行っている。この指定を受けた事業者である指定整備事業者(指定整備事業者以外の自動車分解整備事業者を「認証整備事業者」という。以下同じ。)は、自ら点検、整備した自動車を同事業者に所属する自動車検査員が検査し保安基準に適合する旨を証明したときは、自ら保安基準適合証及び保安基準適合標章を交付することができ、国土交通大臣が行う継続検査等に際しては保安基準適合証を提出することにより当該自動車の提示を省略することができることとされている。
   自動車分解整備事業者は、平成12年度末現在、全国で8万 7,076事業者(うち指定整備事業者は2万 6,927事業者、認証整備事業者は6万 149事業者)となっている。自動車分解整備事業者は、自動車の使用者に代わって法令で義務付けられた自動車の点検及び整備を行っている。特に、指定整備事業者は、上記のように、国の検査業務の一部を代行する機能(指定整備)も有しており、軽自動車を除く自動車の継続検査に占める指定整備の割合は平成11年度で約69パーセントとなっている。
   このような自動車使用者の自己管理責任及び官民の役割分担を踏まえ、自動車の整備・検査に関する規制の仕組みの円滑な運用を確保するためには、自動車分解整備事業者に対し適切な指導監督を行うことが重要である。しかしながら、8万 7,000余りの自動車分解整備事業者の指導監督を行う陸運支局の整備担当要員は 323人(平成12年度末)であり、この体制で適切な指導監督を行っていくためには、その効率的な実施が必要となる。
   自動車分解整備事業者は、分解整備を行う場合においては、当該自動車の分解整備に係る部分が保安基準に適合するようにしなければならないほか、事業場における標識の掲示、分解整備記録簿の記載・交付、設備の維持等、料金表の掲示、概算見積書の交付、整備主任者研修の受講等の遵守事項が法令で定められている(道路運送車両法第89条等、道路運送車両法施行規則第62条の2の2)。
   地方運輸局長は、上記の事項が遵守されていない場合は、道路運送車両法第92条の規定に基づき、事業者に対し必要な措置を採るべきことを命ずることができるとされており、各陸運支局は、道路運送車両法第100条、自動車運送事業等監査規則(昭和30年運輸省令第70号)第4条及び各地方運輸局が定める監査要領等に従い、事業者の事業運営の実態を把握するため事業場への立入等による監査を実施し、監査の結果必要と認める場合には、口頭による指導、文書による警告、地方運輸局への処分(認証・指定の取消し、事業の停止等)の上申等を行っている。
   指定整備事業者に対する監査について、国土交通省では、指定整備事業者が国に代わって現車検査を行う重要な責務を負っていることから、特に、1事業者当たり年2回の監査実施計画を定め、これによって設備の状況、整備の体制・内容等の事項について有効かつ適切に監査を実施するよう地方運輸局に指示している(「指定自動車整備事業規則等の取扱について(依命通達)」昭和46年3月31日付け自整第91号運輸省自動車交通局長通達)。

   今回、9地方運輸局及び22陸運支局における自動車分解整備事業者に対する監査の実施状況、監査結果に基づく改善状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   指定整備事業者に対する監査
(ア)   9地方運輸局が作成している監査要領等における監査の実施方針をみると、国土交通省の指示を踏まえ、指定整備事業者に対しては1事業者当たり年2回(又は全事業場数の2倍)の監査を計画するよう規定しているものが7局ある。一方、「1事業者当たり年2回の監査にこだわらないものとする」とし、事業運営が適切でないとみられる事業者に対し密度の高い監査を行うよう規定しているもの(1局)もみられる。
   こうした地方運輸局の定める監査要領等を踏まえた陸運支局における運用方針をみると、監査対象事業者の選定に当たり、過去の監査結果等を勘案するとしているものが8支局あるものの、14支局では、苦情や情報に基づく監査を除いて、監査対象の選定について特段の重点化の方針を有していない。また、その中には、全事業者に対しローテーション重視で監査計画を策定するとしているものもみられる。
   また、22陸運支局における指定整備事業者に対する監査の実施状況をみると、平成9年度から11年度までの3年間の平均で1事業者当たり年1.42回となっている。平均で1事業者当たり年2回の監査を達成している支局は皆無であり、2支局は年1回にも満たない状況となっている。
   監査実績が国土交通省の指示する回数に達しない理由について陸運支局では、監査を担当する職員が検査業務を兼任していることや、新規認証・指定の審査や道路運送事業の運行管理者に関する事務等他の業務が多いことを挙げている。1事業者当たり年2回の実施は体制上困難であるとして、少なくとも年1回は実施する方針としている支局もみられる。
(イ)   22陸運支局が実施した指定整備事業者に対する平成9年度から11年度の監査結果をみると、法令違反等の指摘を長期間受けていない事業者がみられる一方、同一事業者が繰り返し指摘を受けているなど、監査による指摘が一部の事業者に集中する傾向がみられる。
   また、当省が指定整備事業者 106事業者を抽出し、各事業者の事業場における法令等の遵守状況及び過去の監査で指摘された事項の改善状況をみたところ、70事業者において計 141件の法令等違反があり、この中には、過去の監査において指摘されているにもかかわらず改善されていないものが45件(32パーセント)みられた。これらは同一事業者による違反の継続又は繰り返しの傾向を示している。
   一方、22陸運支局が実施した指定整備事業者の監査結果(平成11年度の監査件数1万 4,889件)に基づく措置状況をみると、特に問題がなく措置不要としたものが全監査件数の60パーセント、比較的軽微な違反に対して行う口頭による指導、警告等が39パーセントを占め、比較的重大な違反に対して行う文書勧告、地方運輸局への処分の上申は1パーセントにとどまっている。
   以上からみて、全指定整備事業者に対し一律の頻度で監査を実施することは効率的であるとはいえない。
   地方運輸局及び陸運支局の中にも、定期的、一律的な監査の方法を見直し、過去の監査結果、処分歴等を踏まえ、必要性が高いとみられる事業者に対し重点的に監査を実施する方法にするべきであるとする意見がみられる。
   認証整備事業者に対する監査
   認証整備事業者については、当該事業者が整備した車両は継続検査等において国が現車検査を行うこととなるため、国土交通省では、指定整備事業者と同等の監査頻度は必要ないとの考えから、特に監査実績の目標を示していない。
   各陸運支局においては、指定整備事業者に対する監査に重点を置いていることもあり、平成11年度における22支局の認証整備事業者に対する監査の実施状況は、全事業場数の5パーセント(計算上20年に1回程度の頻度)となっている。このため、認証整備事業者に対する監査は、監査の必要性が高い事業者を選定し効率的かつ効果的に実施することが求められる。
   地方運輸局の監査要領等においても、9局中6局が、新たに認証を受けた事業者、検査成績が不良な事業者など監査の必要性が高い事業者の類型に該当する事業者に対して重点的に監査を実施する方針を規定している。
   しかし、この6地方運輸局管内の12陸運支局における監査対象選定の状況をみると、地方運輸局の監査要領等に規定されているにもかかわらず、監査対象事業者の選定の際に検査成績を勘案していない陸運支局が9支局みられる。その中には、検査成績を勘案していない理由として、再検査数や整備不良の内容等を認証整備事業者ごとに整理・把握していないこと等を挙げているものもある。
   これに対し、当省が再検査数の多い認証整備事業者を抽出して調査したところ、法令違反の事例もみられた。

   したがって、国土交通省は、自動車分解整備事業者に対する監査を効率的かつ効果的に実施する観点から、自動車分解整備事業者に対する過去の監査結果等を整理・活用し、事業者ごとに監査頻度を設定して監査を行う等により、監査実施の重点化を図る必要がある。