1 | 検査・登録業務の実施体制の見直し
我が国の自動車保有台数は年々増加し、平成13年3月末現在では7,552万台に達し、自動車は国民の交通手段として、また、物流の担い手として、国民生活に欠かせないものとなっている。
自動車のうち軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く自動車は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第4条の規定により、国土交通大臣の管理する自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならないとされている。また、小型特殊自動車及び国土交通省令で定める軽自動車(注)を除く自動車は、同法第58条の規定により、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならないとされている。自動車検査証の有効期間は、自動車の種類等ごとに1年から3年とされている。
| (注) | 国土交通省令で定める軽自動車とは、二輪の軽自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車等であり、いわゆる軽乗用車、軽トラック等は検査対象に含まれる。 |
自動車の検査においては、当該自動車が道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号。以下「保安基準」という。)に適合するか否かについて審査を行っている。自動車の使用者は、原則として、検査申請書等の必要書類とともに、当該自動車を提示して、国土交通大臣の行う検査を受ける必要がある。しかし、この例外として、1.新たに自動車を運行の用に供しようとするときに受ける新規検査において、国土交通大臣がその型式を指定した自動車について、指定申請者(自動車メーカー等)が発行した完成検査終了証を提出した場合、2.自動車分解整備事業者のうち一定の基準に適合する設備等及び自動車検査体制を有するものとして地方運輸局長から指定を受けた事業者(以下「指定整備事業者」という。)が整備した自動車について、当該指定整備事業者の自動車検査員が検査を行い、保安基準に適合することを証明し、同事業者が交付した有効な保安基準適合証を提出した場合(指定整備事業者が実施する自動車の検査業務を「指定整備」という。以下同じ。)にあっては、自動車の提示を要しないとされている。このように、検査業務の一部については民間能力の活用が図られており、完成検査終了証の提出による検査及び保安基準適合証の提出による検査は、平成12年度において、自動車(軽自動車を除く。(注))の検査件数全体の70パーセントを占めている。国が自動車を提示させて行う検査(以下「現車検査」という。)を書類審査とともに行っているのは残りの30パーセントである。
| (注) | 検査対象軽自動車については、運輸大臣(当時)の認可を受けた軽自動車検査協会が、道路運送車両法第74条の2の規定に基づき昭和48年10月から検査を実施している。 |
また、自動車の登録には、新たに自動車を使用するときに行う新規登録、自動車の所有権の移転に伴う移転登録、自動車の所有者の住所変更等に伴う変更登録、自動車を使用しなくなったときに行う抹消登録等の種類があり、このほか、登録事項その他の自動車登録ファイルに記録されている事項の証明(登録事項等証明)、自動車の抵当権設定の登録等の制度が設けられている。国土交通省では、新規登録、移転登録、変更登録、抹消登録及び登録事項等証明のうち現在の登録事項に係る現在登録証明(これらの5つの登録等を総称して、以下「主要登録」という。)の合計件数(主要登録件数)を登録業務の主要な業務量指標として用いている。
これら自動車の検査・登録の事務等を処理するため、国土交通大臣は、国土交通省設置法(平成11年法律第100号)第37条第1項等の規定に基づき、所要の地に、陸運支局及び自動車検査登録事務所を置くことができるとされている(沖縄県については、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第47条第1項等の規定に基づき、内閣総理大臣が、陸運支局及び自動車検査登録事務所とそれぞれ同様の業務を分担する陸運事務所及びその支所を置くことができるとされている。)。
陸運支局は、道路運送車両法に基づく自動車の検査・登録のほか、同法に基づく自動車分解整備事業等に関する業務、道路運送法(昭和26年法律第183号)に基づく道路運送事業に関する業務等を実施しており、平成13年4月1日現在、都道府県単位に52支局(北海道は7支局)が設置されている。また、陸運支局の業務のうち自動車の検査・登録の業務を分担する自動車検査登録事務所は、平成13年4月1日現在、20陸運支局の下に計36事務所が設置されている。このほか、沖縄県には1陸運事務所及び2支所が設置されている。陸運支局及び自動車検査登録事務所(以下「陸運支局等」という。)には、現車検査業務を実施するため、自動車検査場が設けられており、その中に検査コースがある。
国土交通省では、現車検査業務の増大に対応した自動車検査登録事務所(以下「事務所」という。)の新設について、以下の考え方によることとしている。
1. | まず、現車検査業務の増大には、指定整備制度による民間能力を活用する。 |
2. | 指定整備の増加を見込んでも陸運支局等における業務量の増大が将来的に著しくなることが予想される場合には、既存の陸運支局等の自動車検査場に検査コースを増設する。 |
3. | 検査コース増設のための用地の確保(自動車検査場の全面移転に伴うものを含む。)や陸運支局等の構内施設の配置の変更による検査コースの増設が困難な場合であって、次の4つの条件をすべて満たす場合には、これらを総合的に勘案して事務所の新設を検討する。
i) | 事務所新設を予定している管轄区域における検査対象自動車数の伸びが著しく、年間検査予想台数が年間標準検査台数(1コース当たり2万7,000台)を大幅に超えていること。 |
ii) | 事務所新設を予定している管轄区域がまとまった経済圏を形成していること。 |
iii) | 事務所新設を予定している管轄区域において、自動車検査場の用地を確保することができること。 |
iv) | 事務所の新設について、都道府県及び市町村の全面的な協力が得られること。 |
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平成元年度以降12年度末までに5事務所が新設されている。
陸運支局等の検査部門には、先任自動車検査官(先任自動車検査官が置かれていない陸運支局にあっては整備課長)の下に自動車検査官等が配置され、検査コースにおいて検査のため提示された自動車の現車検査を行うほか、検査申請書の受付・審査、合格した車両に対する自動車検査証交付等の窓口業務等を処理しており、平成12年度末現在1,066人の要員が配置されている。先任自動車検査官が置かれていない陸運支局の整備課では、自動車分解整備事業者に対する指導監督等の業務とともに自動車の検査業務を行っている。
また、陸運支局等の登録部門には、先任自動車登録官の下に自動車登録官等が配置され、各種登録の事務のほか、自動車の臨時運行の許可その他道路運送車両法の施行に関する事務等を処理しており、平成12年度末現在1,056人の要員が配置されている。
このほか、陸運支局には管理部門(支局長及び次長を含む。)、整備部門及び旅客・貨物部門(輸送行政部門)が、事務所には事務所長が置かれており、合わせて845人が配置されている。
これらの合計2,967人の要員のうち、検査部門1,066人、登録部門1,056人、整備部門358人のうち354人及び管理部門等の一部185人の計2,665人の要員については、検査登録手数料を主たる財源とする自動車検査登録特別会計から人件費が支弁され、残りの旅客・貨物部門(輸送行政部門)等の要員302人については、一般会計から人件費が支弁されている。
(1) | 組織の合理化
陸運支局等が実施している業務のうち検査場における検査(自動車検査場において行う現車検査業務)は、平成14年9月末までに自動車検査独立行政法人に移行することとされており、これ以外の検査業務(申請書類受付・審査、自動車検査証交付業務等)及び登録業務は国の事務として存置されることとなっている。国土交通省では、自動車検査独立行政法人には同省から約900人が移行する見込みで、そのほとんどは陸運支局等の検査部門からの移行であるとしている。
自動車検査独立行政法人における現車検査実施体制及び国の事務として存置される事務の実施体制については、今後、国土交通省を中心として、政府において検討が進められることになるが、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)においては、「独立行政法人化等事務及び事業の減量、効率化を行う機関にあっては、その合理化に対応した整理を実施する」とされているところである。
今回、54陸運支局等(32陸運支局及び22事務所)を抽出して、自動車の検査・登録の業務量、業務体制等を調査した結果、次のような状況がみられた。
ア | 独立行政法人化後の国の検査業務体制
調査した54陸運支局等における自動車検査業務の主要な業務量指標である現車検査件数及び自動車登録業務の主要な業務量指標である主要登録件数を平成7年度から11年度までの5年間の平均でみると、陸運支局等間で大きな差がある。現車検査件数は、陸運支局では3万1,227件ないし27万5,750件、事務所では4,385件ないし18万7,481件、主要登録件数は、陸運支局では7万1,751件ないし83万538件、事務所では 6,686件ないし55万8,381件となっている。
検査・登録の両部門の要員数(平成11年度末定員)をみると、1陸運支局当たりの平均は、検査部門14.1人、登録部門14.3人の計28.4人、1事務所当たりの平均は、検査部門10.1人、登録部門9.0人の計19.1人となっている。また、両部門における要員の配置数(平成11年度末定員)は陸運支局等間で大きな差がある。陸運支局では、検査部門が5人ないし31人、登録部門が6人ないし33人であり、事務所では、検査部門が1人ないし24人、登録部門が1人ないし20人となっている。
| (注) | 事務所については、事務所長22人の定員は除いている。 |
こうした検査部門の要員の大半は、現車検査業務が自動車検査独立行政法人に移行されることに伴い、同法人に移行されることとなっており、独立行政法人移行後の陸運支局等に残される検査業務体制について、大幅な見直しが求められている。 |
イ | 小規模事務所の在り方
22事務所の平成11年度末における1事務所当たりの定員は20.1人(所長を含む。)であるが、事務所については、自動車の検査・登録の業務のみを分担しているため、現車検査業務の独立行政法人移行後において、要員がおおむね半減することとなる。
このような状況を踏まえつつ、22事務所についてみると、その中には、国土交通省が一般的な事務所新設の目安としている年間現車検査件数2万7,000件を下回っているものが4事務所(うち2事務所は離島に設置)みられる。これら4事務所の年間現車検査件数は、22事務所の1事務所当たり平均の年間現車検査件数(平成7年度から11年度までの間の平均8万9,535件)の約5パーセント(同4,385件)ないし約24パーセント(同2万1,850件)となっており、また、年間主要登録件数も、22事務所の1事務所当たり平均の年間主要登録件数(平成7年度から11年度までの間の平均19万330件)の約4パーセント(同6,686件)ないし約25パーセント(同4万6,905件)となっているなど、検査・登録の業務量が著しく少なくなっている。
要員1人当たりの業務量でみても、22事務所の平成7年度から11年度までの5年間の実配置検査担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車検査官及びユーザー車検専門官を除く要員)1人当たり年間現車検査件数の平均は9,898件、実配置登録担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車登録官、ユーザー専門官及び管理係長を除く要員)1人当たりの年間主要登録件数の平均は2万6,073件であるが、上記4事務所の実配置要員1人当たり年間現車検査件数及び年間主要登録件数は共に平均の60パーセント未満となっており、中には20パーセント台のものもあるなど、要員の配置も非効率となっている。
平成11年度末現在における上記4事務所の定員は、22事務所の平均定員(20.1人)のそれぞれ約15パーセント(3人)ないし約60パーセント(12人)となっており、現車検査業務の独立行政法人移行後においては、これまで以上に小規模な事務所となる。
国土交通省では、これら4事務所について、既存の陸運支局等から相当程度離れた地域で地理的条件から交通が不便であること、検査対象車両が増加していること、他の地域と隔離した独立した生活圏を形成している地域であったこと等から特に必要と認められるとして設置された経緯があるとしている。しかしながら、今日では、高速道路網の整備、高速船舶の就航等により交通事情が改善してきている地域もみられるところであり、また、陸運支局等の遠方に在住する利用者の利便を図るため、職員が出張して検査・登録業務を実施する出張検査及び出張登録の実施状況をみても、上記4事務所のうち3事務所が処理している年間現車検査件数を上回る件数を処理している例や離島で開催している例があることから、著しく業務量が少ない事務所については、検査業務体制の見直しを行う中で、出張検査等による業務の代替等を含め、組織の在り方について検討する余地がある。 |
したがって、国土交通省は、独立行政法人化に伴う業務及び要員の独立行政法人への移行を踏まえ、陸運支局等の業務体制の減量、効率化を図り、組織の在り方を見直す必要がある。
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(2) | 要員の合理化及び施設整備の適正化
自動車の検査・登録業務については、陸運支局等に配置された検査要員、登録要員等が処理している。
検査部門及び登録部門の要員の推移をみると、年間現車検査件数は平成6年度の995万件から12年度には893万件(6年度の89.8パーセント)に減少しており、検査部門の要員は6年度の1,079人から12年度には1,066人(同98.8パーセント)に微減している。また、年間主要登録件数は、平成6年度の2,073万件以降、8年度の2,329万件をピークに減少し、12年度には2,121万件(6年度の102.3パーセント)となっており、登録部門の要員は6年度の1,092人から12年度には1,056人(同96.7パーセント)に減少している。
自動車の検査・登録の業務については、自動車検査登録特別会計法(昭和39年法律第48号)に基づき、自動車検査登録特別会計により一般会計と区分して経理されている。同特別会計の平成12年度予算における歳出50,890百万円の内訳をみると、人件費が24,332百万円(約48パーセント)と最も多く、次いで庁費 7,995百万円(約16パーセント)、施設整備費7,174百万円(約14パーセント)の順となっている。
陸運支局等の検査・登録業務は、検査コースの自動化(各検査項目が終了するごとに次の手順が表示され、これに従って受検者が次の検査項目に移動する仕組みで、昭和46年度から導入が開始され、平成12年度末には99パーセントの検査コースに導入完了)、自動車登録検査業務情報処理システムの導入(昭和51年12月、全陸運支局等に導入完了)及び更改、検査・登録申請書の光学的文字読取装置(OCR)による入力(昭和63年1月にマークシート方式からシステム変更)等により事務の効率化が図られてきている。
また、政府は、平成11年12月、高度情報通信社会推進本部において決定した「バーチャル・エージェンシーの検討結果を踏まえた今後の取組について」に沿って、自動車の保有に伴い必要となる各種の行政手続(検査・登録、車庫証明、納税等)について、国民負担の軽減及び行政事務の効率化を図るため、手続の電子化によるワンストップサービス(各種の行政サービスを1か所又は1回の手続で提供するもの)を実現し、おおむね平成17年を目標としてワンストップサービスシステムの稼動開始を目指すこととしている。
さらに、陸運支局等が実施している業務のうち現車検査業務については、平成14年9月末までに独立行政法人に移行することとされており、1-(1)で述べたとおり、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」においても「独立行政法人化等事務及び事業の減量、効率化を行う機関にあっては、その合理化に対応した整理を実施する」とされている。
陸運支局等の検査部門及び登録部門の要員については、これらの設備の近代化、手続の電子化の進展、独立行政法人化等による行政事務の効率化により、一層の合理化を進めていくことが求められている。
今回、54陸運支局等(32陸運支局及び22事務所)における検査及び登録業務の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
ア | 検査の体制
(ア) | 調査した54陸運支局等のうち1-(1)に掲げた小規模事務所(4事務所)を除く50陸運支局等における平成7年度から11年度までの間の検査担当要員(主に管理業務等を分掌する先任自動車検査官(整備課長)、次席自動車検査官、整備課長補佐及びユーザー車検専門官を除く定員。以下、本項目において同じ。)1人当たりの年間平均現車検査件数をみると、同様な組織体制の陸運支局間で最大2.1倍、事務所間で最大2倍の較差が生じている。検査コース数が同じで年間現車検査件数もほぼ同程度の陸運支局等間でみても最大1.3倍の較差が生じており、検査部門の要員配置が業務量に対応していない状況がみられる。
検査コース数と要員配置の関係をみると、国土交通省では、検査コースの増設に合わせて要員の増配置を行ってきており、平成7年度から10年度までの間に検査コースを増設した9陸運支局等では、検査コースを増設した年度に3人又は4人の検査担当要員が増員されている(注)。これらの陸運支局等における検査コース増設前年度と11年度の年間現車検査件数を比較すると、8陸運支局等の現車検査件数はほぼ横ばい又は減少となっている。これを9陸運支局等ごとの1コース当たり年間現車検査件数でみると、14パーセントないし54パーセントの減少、検査担当要員1人当たり年間現車検査件数でみると、8パーセントないし42パーセントの減少となる。これらの9陸運支局等のうち5陸運支局等では、平成7年度から11年度までの5年間の1人当たり年間平均現車検査件数も、50陸運支局等の平均(1万1件)を下回っている。
| (注) | 検査コースの増設によりコース数が偶数となる場合は3人、奇数となる場合は4人を増配置 |
また、検査コースを増設した陸運支局等の増設直後の検査担当要員は、近年検査コースを増設していない陸運支局等(検査コース数が同じで現車検査件数が同程度以上の陸運支局等)より6パーセントないし43パーセント配置数が多く、検査コースの増設により要員の配置が過大となっている例がみられる。
一方、検査コースにおける検査項目(ブロック)別の要員配置は、必ずしも固定的ではなく、例えば、自動車検査官が自動車の車台番号や種別、車体の形状が自動車検査証と同一であることを確認したり、自動車の外観を検査する検査コースのブロックでは、1コース当たり1人を配置している陸運支局等がある一方、2コースに1人あるいは3コースに2人を配置している陸運支局等もあるなど、陸運支局等によって検査コースへの要員配置の方法は異なっており、現車検査件数に対応した柔軟な要員配置が可能となっている。 |
(イ) | 陸運支局等の検査業務のうち窓口業務の中には、申請書類の受付における添付書類及び記載漏れの確認等の形式審査や、OCRへの投入、自動車検査証の交付など定型的、反復的なものがある。54陸運支局等におけるこうした定型的、反復的な業務の処理状況をみると、中には、自動車検査官等検査担当要員の監督の下、非常勤職員にこれらの業務を処理させている例がみられる一方、同様の業務を自動車検査官等検査担当要員が分担している例もある。 |
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イ | 登録の体制
陸運支局等の登録部門の要員について、国土交通省では、主要登録件数を基に、ユーザー登録の登録件数に占める割合、係争事案の有無等の地域事情も考慮して配置することとしているが、その配置について、具体的な数値基準等を定めていない。54陸運支局等のうち1-(1)に掲げた小規模事務所(4事務所)及び比較的事務量の少ない現在登録証明の件数が他の事務所に比べ格段に多いため主要登録件数が最多となっている1事務所を除く49陸運支局等における平成7年度から11年度までの間の登録担当要員(先任自動車登録官、次席自動車登録官、ユーザー専門官及び管理係長を除く定員。以下、本項目において同じ。)1人当たりの年間平均主要登録件数をみると、陸運支局間では最大2.6倍、事務所間では最大2.2倍の較差が生じている。主要登録件数がほぼ同程度である陸運支局等間においても、1.5倍以上の較差が生じており、登録部門の要員配置が業務量に対応していない状況がみられる。
また、登録担当要員の現員が定員を下回っている陸運支局等の中には、登録担当要員を主に一般会計に属する旅客、貨物等の輸送行政部門に継続的に配置している状況がみられる(9陸運支局14人)。 |
ウ | 施設整備等
国土交通省では、毎年度、地方運輸局に現車検査件数の伸びの予測等を踏まえた4年ないし5年先の施設整備に関する要望を提出させ、これを参考にしつつ各陸運支局等の施設を整備している。平成元年度以降12年度末までの間に、5事務所の新設、7陸運支局等の移転、28検査コースの増設等が行われている。
しかし、調査した54陸運支局等における施設整備の実施状況をみると、その中に、次のとおり、需要を的確に把握せずに実施した事例がある。
| 1. | 管内における二輪自動車の保有台数が少ない陸運支局等の方が二輪車検査コースの整備対象となっているもの(2例) |
| 2. | 事務所の新設による管轄区域の分割縮小が予定されており、入居する職員数の減少が見込まれていたにもかかわらず、当該見込みが建て替えた庁舎の床面積に反映されていないもの(1例) |
また、施設を移転した場合、跡地の速やかな処分と処分までの間の適切な管理が必要となるが、移転後20年以上経過しているにもかかわらず処分が行われておらず、維持管理も適切に行われていない例がみられる(1例)。 |
したがって、国土交通省は、自動車の検査・登録業務について、業務運営の効率化、要員の合理化及び自動車検査登録特別会計の経費の効率的な使用を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1. | 検査担当要員については、現車検査件数を主たる業務量指標とし、業務量に対応した要員配置となるよう見直しを行うこと。また、検査業務について、非常勤職員で対応可能な業務範囲を見極めつつ、非常勤職員の活用を推進すること。 |
2. | 登録担当要員については、業務量及び業務内容に対応した適正な要員配置となるよう、主要登録件数等を基礎とした要員の配置方法に則って見直しを行うこと。 |
3. | 施設の整備は、需要を的確に把握した上で行うこと。また、施設の移転跡地の処分を促進するとともに、処分までの間の管理を適切に行うこと。 |
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(3) | 出張検査及び出張登録の見直し
出張検査は、陸運支局等から遠距離にある地域に自動車検査担当職員等が出張して検査を行うものであり、利用者の利便向上を図る観点から、昭和20年代に開始された。出張検査は、開催場所ごとに日程を定め、地元の自動車整備事業者団体等が設置・運営している検査施設を国が借り上げて、現車検査を中心に主として継続検査を実施している。平成12年度には、56陸運支局等が133か所(対6年度比94パーセント)において出張検査を開催しており、39万6,668件(対6年度比78パーセント。うち現車検査23万7,021件)の検査が行われている。
国土交通省は、出張検査について、「自動車の出張検査場の指定について」(昭和31年10月8日付け自車第634号運輸省自動車局整備部車両課長通達)により、1.陸運事務所(現在は陸運支局)所在地検査場(本場検査場)と出張検査開催場所及び出張検査開催場所相互間の道路距離が40キロメートル以上であること、2.当該地域に使用の本拠を有する検査対象自動車が500台以上であること等、開催に関する基準(以下「出張検査開催基準」という。)を示すとともに、極力、出張検査開催場所の集約化を図るよう指示している。
出張登録は、出張検査と同様、陸運支局等から自動車登録担当職員が出張して登録を行うものであり、平成6年度から開始された。出張登録は、一部の出張検査開催場所において出張検査の開催に併せて行われており、主要登録業務等を取り扱っている。平成12年度には、10陸運支局が19か所において開催しており、5,902件の主要登録が行われている。
国土交通省は、出張登録について、「出張登録における業務処理について」(平成8年10月1日付け自管第77号運輸省自動車交通局技術安全部管理課長通達)により、1.新規登録等主要登録のほか、登録に付随する業務として、自動車登録番号標(ナンバープレート)への封印の取付け、再封印の取付け等の業務を行うこと、2.管轄陸運支局と出張登録開催場所の距離が60キロメートル以上であること等、開催に関する基準を示している。
今回、54陸運支局等において開催しているすべての出張検査(35陸運支局等67か所)及び出張登録(3陸運支局5か所)の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
ア | 陸運支局等と出張検査開催場所の道路距離(以下「距離」という。)及び出張検査開催場所相互間の距離をみると、陸運支局等と出張検査開催場所の距離が出張検査開催基準に定める40キロメートル未満のものが6か所、出張検査開催場所相互間の距離が40キロメートル未満のものが1事例(2か所)みられる。
また、67か所の出張検査開催場所のうち62か所においては自動車検査のうち継続検査のみを取り扱っているが、継続検査は、自動車の使用の本拠地を管轄する陸運支局等とは異なる陸運支局等においても受検することができることとされている。このため、継続検査のみを扱う出張検査の開催場所については、管轄の陸運支局等のみならず隣接する陸運支局等の自動車検査場やその出張検査開催場所との距離をも考慮して、より広域的な観点から検討することが必要であるが、出張検査開催基準には、この点が明示されていない。
この観点から62か所の出張検査開催場所をみると、管轄の陸運支局等との距離は開催基準を満たしているものの、隣接する陸運支局等の管内で開催されている出張検査開催場所と近接しており、年間の検査件数も全国平均を下回っているものが1か所みられる。当該出張検査開催場所における自動車検査は、その件数等からみて、隣接出張検査開催場所での処理が可能である。 |
イ | 出張検査開催場所67か所における平成7年度から11年度までの5年間の実績をみると、開催回数は1か所当たり年間平均28.8回、1か所当たりの年間平均現車検査件数は2,435件、開催1回当たりの平均現車検査件数は84.6件となっている。
67か所の出張検査開催場所の中には、離島において開催されている9か所を除いても、月1回ないし2回程度開催されているが開催1回当たりの現車検査件数が上記の平均の半分を下回っているものが4か所、年2回ないし6回しか開催されておらず開催1回当たりの現車検査件数も同様に半数以下のものが3か所みられる。
また、出張検査の実施体制についてみると、通常、2人の職員が出張し、検査業務を行っているが、現車検査件数が特に多くないにもかかわらず3人の職員が出張している例もみられる。
出張登録については、開催場所5か所における平成7年度以降11年度までの平均年間開催回数は15.8回、1か所当たりの平均年間登録件数は344件、開催1回当たりの平均登録件数は21.8件と低調な実績となっており、中には、開催1回当たりの取扱件数が数件程度しかないものも1か所みられる。 |
ウ | 出張検査は、地元の自動車分解整備事業者団体等が出張検査の開催のために設置した施設を国(地方運輸局)が有償で借り上げて実施している。出張検査の開催情報の提供状況を33陸運支局等についてみると、いずれも当該団体の会員である事業者等特定の者のみを対象としており、一般ユーザー等を対象とする広報は行われていない。このため、出張検査開催場所67か所における出張検査の利用は、事実上特定の自動車分解整備事業者に限定され、近年増加してきているユーザー車検(自動車の使用者等が自動車分解整備事業者などに整備及び受検手続を依頼せず自ら又はその代理人が自動車検査を受検するもの)の実績も皆無である。
また、出張登録を実施している3陸運支局においても、出張登録の開催について、一般ユーザー等を対象とする広報を実施した実績はない。 |
したがって、国土交通省は、自動車の出張検査及び出張登録について、業務運営の効率化及び要員の効率的配置並びに利用者の利便を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1. | 出張検査の開催基準に満たない出張検査は中止又は集約すること。また、開催場所は、他の陸運支局等及びその管内の出張検査開催地との距離も踏まえて定めること。 |
2. | 出張検査及び出張登録のうち実績が低調なものについては、開催場所が離島である等特殊な事情がある場合を除き、出張検査等の中止又は開催回数の大幅な削減を行うこと。
また、出張人員の規模を適正なものとすること。 |
3. | 出張検査及び出張登録を開催する場合には、広く利用機会が確保されるよう開催についての広報等に努めること。 |
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