農林水産統計業務に関する行政評価・監視結果に基づく勧告


 

 

 

 

 

 

平成13年9月

 

総務省

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前  書  き

   農林水産省の統計関係の組織は、本省統計情報部(5課)、地方農政局(7統計情報部)、統計情報事務所(42か所)、出張所 (281か所)等から成り、職員数は、平成13年度末現在で約5,900人と、国の統計関係職員の約3分の2を占めている。
   統計調査については、「統計行政の新中・長期構想」(平成7年3月10日統計審議会答申)において、統計調査を取り巻く厳しい環境の中で新たな統計の需要に的確に対応し、必要とされる統計を必要とされる精度で持続的かつ円滑に作成していくためには、報告者負担の軽減を図るとともに、既存統計調査の必要性、調査内容について見直しを行い、統廃合を含む調査の簡素化に積極的に取り組む必要があること等が提言されている。
   また、「行政コスト削減に関する取組方針」(平成11年4月27日閣議決定)においては、「統計調査を始めとする各種調査等に関する業務については、客体数及び調査事項の見直し、各調査のデータの共有化等による調査事項等の重複是正、類似調査の一元化や同時実施等の調査の全体的見直しを行い、経費の削減を図る」こととされている。
   国の地方支分部局については、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)第45条において、1.社会経済情勢の変化等を踏まえ、地方支分部局の事務及び事業の必要性を見直し、その再配置、統合及び廃止並びにその内部組織及び職員の定員の整理及び合理化その他必要な措置を講ずること、2.府省の編成に併せて総合化の対象とならない地方支分部局は、可能な限り、整理すること等の方針に従い、地方支分部局の整理及び合理化のために必要な措置を講ずることとされている。
   この行政評価・監視は、このような状況を踏まえ、農林水産統計業務の実施状況、実施体制等を調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。


目      次


 統計調査の合理化、効率化
(1)  農林水産施策の改革、生産構造の変化等に対応した統計調査の廃止、見直し
(2)  統計調査の実施方法の合理化、効率化
 情報収集等業務の合理化、効率化
 地方統計情報組織の合理化等
(1)  地方農政局(統計情報部)における業務の見直し
(2)  出張所の統廃合の推進
(3)  地方統計情報組織における要員配置の合理化


   統計調査の合理化、効率化
(1)   農林水産施策の改革、生産構造の変化等に対応した統計調査の廃止、見直し
   国が行う統計調査は、総務省が国勢調査など国勢の基本に関する統計調査を実施しているほか、各府省がそれぞれ所管する行政施策の企画・立案等の基礎資料を収集・整備することを目的としてそれぞれ必要な統計調査を実施している。
   農林水産省においては、大臣官房統計情報部(以下「本省統計情報部」という。)が中心となって統計調査を実施しており、例えば、平成12年度末現在で農林水産省が所管している統計調査68本(1回限りのものを除く。)のうち43本(63パーセント)は本省統計情報部が実施している。
   本省統計情報部の業務については、農林水産省組織令(平成12年政令第253号)において、「農林水産業及びこれに従事する者に関する統計その他農林水産省の所掌事務に係る統計の作成に関すること」(第3条第1項第20号。以下「統計業務」という。)、「農林水産省の所掌事務に係る調査資料その他の情報の収集及び分析に関すること」(同第21号。以下「情報収集等業務」という。)等とされている。
   本省統計情報部の業務を分掌する地方支分部局として、平成13年4月1日現在、7地方農政局(統計情報部)、地方農政局が設置されていない都道府県(沖縄県を除く。)に42統計情報事務所(北海道に4事務所)、地方農政局の下に45統計情報出張所、統計情報事務所の下に232出張所が設置されている。
   なお、沖縄県の区域については、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第44条の規定により、内閣府沖縄総合事務局が地方農政局の所掌事務を分掌し、当該事務については農林水産大臣が沖縄総合事務局を指揮監督することとされており、これらのうち統計業務及び情報収集等業務を実施するため、農林水産部統計情報課及び4統計情報出張所が設置されている。(以下、本省統計情報部、地方農政局(統計情報部)、統計情報事務所、地方農政局の統計情報出張所及び統計情報事務所の出張所並びに内閣府沖縄総合事務局(農林水産部統計情報課)及び同事務局の統計情報出張所を合わせて「統計情報組織」、本省統計情報部を除く統計情報組織を「地方統計情報組織」、地方農政局の統計情報出張所及び統計情報事務所の出張所並びに内閣府沖縄総合事務局の統計情報出張所を合わせて「出張所」という。)
   統計情報組織の定員は、平成13年度末現在、本省統計情報部369人、地方統計情報組織5,466人、合計5,835人となっている(内閣府沖縄総合事務局分83人を除く。)。
   国の統計行政については、その中長期的な構想を示した「統計行政の新中・長期構想」(平成7年3月10日統計審議会答申。以下「新中・長期構想」という。)において、統計行政を進めるに当たっての視点として、既存統計調査の必要性、調査内容について見直しを行い、統廃合を含む調査の簡素化に積極的に取り組む必要がある旨提言されている。
   また、統計調査の実施については、「行政コスト削減に関する取組方針」(平成11年4月27日閣議決定)において、「統計調査を始めとする各種調査等に関する業務については、客体数及び調査事項の見直し、各調査のデータの共有化等による調査事項等の重複是正、類似調査の一元化や同時実施等の調査の全体的見直しを行い、経費の削減を図る」とされている。

   今回、農林水産省における統計調査の実施状況、調査結果の利活用状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   農林水産施策の改革、生産構造の変化等に対応した統計調査の廃止、見直し
i)   農林水産施策の改革に対応した統計調査の廃止、見直し
   農政の分野では、「農政改革大綱」及び「農政改革プログラム」(いずれも平成10年12月農林水産省決定)が策定され、その後、食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)が制定され、同法の基本理念や施策の基本方向を具体化し、的確に実施していくための基本的な計画である「食料・農業・農村基本計画」(平成12年3月24日閣議決定)において、政府は、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとされている。
   また、林野・水産行政の分野では、「林政改革大綱」及び「林政改革プログラム」(いずれも平成12年12月農林水産省決定)、「水産基本政策大綱」及び「水産基本政策改革プログラム」(いずれも平成11年12月農林水産省決定)がそれぞれ策定され、平成13年の通常国会において林業基本法の一部を改正する法律(平成13年法律第107号)及び水産基本法(平成13年法律第89号)が成立した。今後、施策の総合的かつ計画的な推進を図るための「森林・林業基本計画」及び「水産基本計画」を策定することとされている。
   このような農林水産施策の改革の動向に対応して、統計調査についても見直しが必要な状況となっているが、改革に対応した見直しが行われていないものもみられる。
   例えば、中山間地域における農業の生産条件に関する不利を補正するための支援施策等の検討に資するため、農林水産省は、平成9年度から「農林家経営動向調査」を毎年実施してきたが、平成12年度に中山間地域等直接支払交付金制度が創設される等必要な施策が講じられたことから、本統計調査を継続して実施する必要性は乏しくなっている。
ii)   農林水産業における生産構造の変化等に対応した統計調査の廃止、見直し
   統計調査の対象とされている分野、品目の中には、生産量が激減しているなど農林水産業における生産構造等が変化しているにもかかわらず、見直しが行われていないものもみられる。
a)   養蚕に関しては、養蚕及び収繭量に関する実態を明らかにし、蚕糸に関する行政の基礎資料を整備することを目的として「養蚕収繭量統計調査」が実施され、収繭量、基準収繭量、養蚕農家数等が調査されている。
   しかし、平成2年から11年までの間についてみると、収繭量は2万4,925トンから1,496トン(平成2年比6パーセント)に、養蚕農家数は5万2,000戸から4,000戸(平成2年比8パーセント)にそれぞれ激減しており、また、繭検定及び生糸検査の強制等を規定した蚕糸業法(昭和20年法律第57号)が廃止されるとともに、生糸の安定価格帯制度等を規定した繭糸価格安定法(昭和26年法律第310号)の一部改正が行われ生糸の安定価格帯制度が廃止される(いずれも平成10年4月1日施行)など、養蚕に対する行政の関与も大幅に縮小されたことから、本統計調査を引き続き実施する必要性は乏しくなってきている。
b)   園芸種苗に関しては、国内生産状況の把握を行い、優良種苗の安定供給確保及び流通の適正化対策のための資料を整備することを目的として「種苗生産統計調査」が実施され、種苗の生産量が調査されている。
   しかし、近年は、野菜の生産が横ばいないし微減傾向にあることなどから種子需要が安定しており、種子の供給も、種苗会社が国内生産と海外生産を組み合わせて計画的・安定的に行っている状況にあることなどから、本統計調査の必要性は乏しいものとなっている。
c)   製材に関しては、その実態を把握して林業行政の基礎資料を作成することを目的として「製材統計調査」が実施され、製材に用いる動力の出力数が7.5キロワット以上の製材工場を対象として、素材の入荷量、製材品の生産量等が調査されている。
   本統計調査のうち年に1回調査を実施する基礎調査においては、製材用動力の出力が7.5キロワット以上37.5キロワット未満の階層については2分の1の抽出率で調査している。
   しかしながら、7.5キロワット以上37.5キロワット未満の階層の工場数は、平成11年で全体の32パーセント(総工場数1万2,288に対して3,935)であるのに対して、年間の素材消費量は6パーセント(総消費量2,708万立方メートルに対して163万立方メートル)にすぎず、小規模階層の製材工場について精度の高い調査を実施する必要性は乏しい。
d)   内水面漁業・養殖業の生産に関しては、その実態を明らかにし内水面に係る水産行政の基礎資料を整備することを目的として「内水面漁業生産統計調査」が実施されており、すべての内水面漁業・養殖業経営体及び内水面漁業協同組合を対象として、魚種別の漁獲量、天然産種苗採捕量、養殖方法別収獲量及び種苗販売量が毎年調査されている。
   しかし、平成11年における内水面漁業の漁獲量(内水面養殖漁業に係るものを除く。)は7万1,351トンで、海面漁業の漁獲量523万9,352トンの約1パーセント強にすぎず、元年の漁獲量10万3,234トンに対し31パーセント減少している。また、平成11年は400河川、80湖沼を超える内水面を調査対象としているが、そのうち漁獲量上位の74河川、7湖沼でそれぞれ漁獲量全体の80パーセントを占めている。
   このため、すべての内水面漁業・養殖業経営体及び内水面漁業協同組合を対象として調査を実施する必要性は乏しい。
iii)   上記のほか、行政コストの削減、調査客体の負担軽減等の観点から、調査客体数の縮減、調査項目の簡素化等の見直しが行われていない統計調査の例もみられる。
2.   行政の遂行上収集されているデータの活用等による重複の是正
   新中・長期構想においては、統計調査における報告者負担の軽減等のため、行政記録(許認可、届出、法律に根拠を置く規則等に基づく行政報告として行政の対象である個人や世帯及び企業や事業所から報告を求めたデータ)を統計的に活用する方策を検討すべきであるとの考え方が示されている。
   また、行政記録ではないデータでも統計調査と重複したデータが収集されている場合には、これを積極的に活用することにより、報告者負担の軽減及び経費の削減を図ることができる。
   本省統計情報部以外の部局が所管行政を遂行するため、地方公共団体等を対象に行っているデータの収集状況等をみると、次のとおり統計調査と重複している例もある。
i)   本省統計情報部が実施する「漁業センサス」には、漁港の施設規模、利用漁船数等が調査項目に含まれている。
   一方、水産庁は、漁港の利用状況等の実態を明らかにし、漁港行政及び漁港関係事業の実施に必要な基礎資料を作成することを目的として、入港利用実漁船数等を都道府県に委嘱して調査している。
ii)   本省統計情報部が実施する「作物統計調査」では、いぐさの作付面積及び収穫量が調査されている。
   一方、農林水産省生産局は、地方農政局(生産経営部)を通じていぐさの生産流通実態に関する調査を実施しており、その調査事項の中には、「作物統計調査」の調査事項である作付面積及び収穫量も含んでいる。

   したがって、農林水産省は、統計調査の合理化、効率化を推進する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   農林水産施策の改革、生産構造の変化等に的確に対応して、個別の統計調査の廃止を含めた統計調査の抜本的な見直しを行うこと。
2.   統計調査により得られたデータと行政機関が統計調査以外の方法で収集しているデータ等が重複している場合には、速やかにその是正を図ること。

(2)   統計調査の実施方法の合理化、効率化
   農林水産省は、本省統計情報部が所管している統計調査は、農林水産物の生産・流通・消費にわたる農林水産省の各般の施策の企画・実施に必要な基礎資料を整備することを目的とし、国の財政支出を伴う重要政策の決定に直接利用されることや、農林水産業の多様な実態を把握する必要があることなどの理由から、全国に地方統計情報組織を配置し、出張所の職員が調査客体を訪問して調査する方法及び農作物の生育状況等を実測・観察する方法(以下「職員調査」という。)を基本として実施しているとしている。
   一方、他府省が所管している統計調査についてみると、例えば、統計法(昭和22年法律第18号)第3条の規定に基づく54本の指定統計調査(平成11年度現在で継続して実施されているもの。農林水産省所管の8本を除く。)のうち35本(65パーセント)については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に規定する法定受託事務として地方公共団体が調査等の事務を実施している。
   また、54本の指定統計調査のうち27本(50パーセント)については、各府省の本府省又は地方支分部局が調査を実施しているが、大半は臨時的に雇用する調査員が調査客体を訪問して調査する方法(以下「調査員調査」という。)や、本府省又は地方支分部局から調査票を調査客体に郵送し記入・返送を依頼する方法(以下「郵送調査」という。)により実施されており、基本的に職員調査は行われていない(一つの統計調査において、国が調査する部分と地方公共団体が調査する部分が併存することがあるため、統計調査数の合計は総数(54)に一致しない。)。
   調査員調査は、調査票の回収率が高い、調査事項が多少複雑でも調査が可能等の長所がある反面、適当な調査員を確保することが困難、調査員の選任、指導の事務がある等の短所があるとされている。一方、郵送調査は、広い地域にわたる調査が可能、特別の調査組織を必要としない等の長所がある反面、調査票の回収率が低い、質問内容の誤解による誤記が多い等の短所があるとされている。実際の調査に当たっては、これらの長所・短所を踏まえ、統計調査の目的・内容、調査対象の特性や必要とされる正確性、予算等を考慮して調査方法が決定されるが、一般的には特別の調査組織を必要としない調査員調査や郵送調査は、職員調査と比較して効率的であると考えられる。

   今回、本省統計情報部における統計調査の調査方法を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   統計調査は、農家、集出荷団体等の調査対象ごとに調査事項が異なる場合は、通常それぞれ異なる調査票を用いて実施されており、1統計調査について数種類の調査票を使用しているものが多い。本省統計情報部が平成11年度末現在で所管している42本の統計調査(1回限りのものを除く。)の調査票の合計は164種類となっている。
2.   職員調査により実施している38統計調査135調査票について、調査員調査、郵送調査等のより効率的な調査方法に移行することが可能と考えられるものが次のとおりみられた。
i)   調査員調査又は郵送調査にすること等の余地があるとみられる統計調査(13統計調査24調査票)
a)   調査内容が平易であり回答方法もほとんどが選択式であること、調査客体が地方公共団体であり確実な回収が期待できること等から、郵送調査とすることが可能と考えられるもの(「農業生産環境調査」等2統計調査4調査票)
b)   調査客体の秘密に属する事項を調査していることから、電子化されたデータを収録したFD(フレキシブルディスク)を職員が回収しているが、郵送でも秘密の保護を図ることができることから郵送調査とすることが可能と考えられるもの(「青果物卸売市場調査」等3統計調査4調査票)
c)   食品産業の事情に詳しい者等を活用することにより調査員調査とすることが可能と考えられるもの(「加工食品流通動態調査」等4統計調査10調査票)
d)   調査票の回収周期を延長することが可能と考えられるもの(「農業経営統計調査」等4統計調査6調査票)
ii)   実測調査において、職員以外の者を補助者として活用するこ とにより調査の効率化を図ることが可能とみられる統計調査(「作物統計調査」等4統計調査18調査票)
   「作物統計調査」等4統計調査18調査票は、耕地、作物等について、職員がその面積、収穫量、被害量等を実測する方法等で調査されている。農林水産省は、これらの調査を職員が実施している理由としてa)耕地の利用実態、各作物の生産事情、作柄の予測、被害の見積り、調査結果の整合性等について技術的・専門的知識が必要であること、b)調査結果が水稲の生産調整、野菜の指定産地の指定・解除、需給計画、行政価格の算定等に利用されることから利害関係のない中立的な者が調査を実施する必要があること等を挙げている。
   「作物統計調査」(12調査票)を例にみると、実測調査の実施体制については本省統計情報部から特に指示はないが、調査した35出張所のすべてにおいて、a)現地確認、記録等の業務を分担して実施する方が効率的であること、b)距離、面積の実測には最低2人が必要であること等の理由から2人ないし4人で班を編成して実施しており、実測等(1人ないし3人)とその結果の記録(1人)とを分担して行っている例が多い。
   実測調査は、面積調査の場合、基本的に土地登記簿等から得た面積や空中写真に基づき求めた面積を基準として、実際の田畑別面積、作物別作付面積、不作付面積等を見積もるものである。また、作況に関する調査(作柄概況調査、予想収穫量調査、収穫量調査)の場合も、品目別では最も調査箇所数が多い水稲の作況標本筆調査の例でみると、畝幅、株間、穂数、もみ数等の計測は比較的単純な業務である。このため、これらの業務及び実測調査結果の記録業務は、一定程度の知見や見識を有する者であればそれ程困難なく実施できる業務である。

   したがって、農林水産省は、統計調査の実施方法の合理化、効率化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   調査員調査又は郵送調査を積極的に活用するなど調査方法を抜本的に見直すこと。
2.   実測調査のうち実測調査結果の記録等の比較的容易な業務については、職員以外の者を補助者として活用するなどの効率化を積極的に図ること。


   情報収集等業務の合理化、効率化
   統計情報組織が実施する統計業務及び情報収集等業務については、「統計情報組織における農林水産統計情報業務について」(平成7年2月21日付け7統第209号(企)経済局統計情報部長通知)により、1.本省統計情報部が企画し、地方農政局(統計情報部)や統計情報事務所などを通じて全国規模で行う業務(以下「本省企画業務」という。)、2.本省統計情報部と地方が共通のテーマについて共同して企画する業務(以下「共同企画業務」という。)、3.地方農政局(統計情報部)、統計情報事務所等が企画し、地方規模で行う業務(以下「地方企画業務」という。)の3区分とされている。
   本省企画業務及び共同企画業務については、毎年度策定される「農林水産統計情報業務の運営方針」により業務の方針が示され、平成11年度では「農林水産施策の動向及び行政改革への対応を図るため、新規調査に向けて調査体系の見直しを含めた各種検討や既存統計情報の整理合理化等の推進、情報処理・通信技術及び新技術の導入等による業務の効率化を図る」等とされている。
   また、地方企画業務については、「地方統計情報組織における地方企画業務の実施指針」(平成13年4月12日付け13統計第73号大臣官房統計情報部長通知)において、地方農政局等政策担当部署等と密接な連携を図りながら、国の農林水産行政の地域的展開を推進する上で必要なものを基本としつつ、効率的に実施するとされている。

   今回、統計情報組織における平成11年度の情報収集等業務の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   本省企画業務
   平成11年度に本省企画業務として、アンケート等の調査、既存の統計を加工した加工統計の作成等が10件(1回限り又は不定期で実施されたものを除く。)実施されているが、その内容、調査方法等についてみると、次のとおり合理化、効率化を図る余地のあるものがある。
1.   業務の在り方を見直す必要がある情報収集等業務の例
   「生鮮食料品流通情報サービス業務」は、青果物と食肉の卸売市場の市況及び入荷量、産地の生産、出荷状況等に関する情報を、行政機関を始め、生産者、出荷団体、流通関係者、消費者等に迅速かつ的確に提供することにより、生鮮食料品の需給の均衡と価格の安定に資することを目的として、昭和43年から実施されており、提供情報の内容は、市況情報、産地情報、加工情報、市場情報及び流通消費情報の5種類である。
   このうち、流通消費情報の一つである「生鮮食料品のマーケット・レポート(卸売市場情報)」は、東京都(大田市場、築地市場)及び大阪市(本場市場、東部市場)の4中央卸売市場の卸売会社等から市場の取引概況や今後の動向(入荷量及び価格の見通し)等に関する情報を収集して取りまとめ日々提供するものである。
   しかし、類似の情報が新聞により市況情報等として提供されており、これに加えて卸売会社の中には野菜、果実に関する当日の品目別相場表や、主要な野菜、果実に関する月間の価格見通しに関する情報を提供しているものもみられる。
   農林水産省では、主としてこの「生鮮食料品のマーケット・レポート(卸売市場情報)」の作成業務を行うため、東京都及び大阪市の3中央卸売市場に職員を常駐(大田市場6人、築地市場6人、本場市場5人)させている。
2.   調査方法の合理化、効率化が可能とみられる情報収集等業務の例
   本省統計情報部は、生産者、流通加工業者、消費者等の中から全国で約8,000人をモニター等として委嘱し、その意見・意向等を把握するとともに、モニター等への情報提供等を行う農林水産情報交流ネットワーク事業(以下「ネットワーク事業」という。)を実施している。
   また、農業・農村の有する多面的機能の発揮、農村地域の活性化に資するため、地域資源の利活用、保全管理の実態等について把握する「地域資源の維持管理・活性化に関する実態調査」を実施している。
   平成11年度におけるネットワーク事業及び「地域資源の維持管理・活性化に関する実態調査」のうちアンケート等の調査(5本)の調査方法をみると、調査票についてはあらかじめ郵送しているが、i)回答の内容を確認する必要がある、ii)モニター等に対して農林水産施策に関する情報を提供する必要がある等の理由により、職員が調査客体を訪問して回収する方法で実施されている。
   しかし、i)アンケート等の調査の回答方法は選択式となっているなど簡易であること、ii)モニター等に対する情報の提供等に関しては、調査の都度、毎回職員がモニター等を訪問しなくとも、ネットワーク事業のメニューの一つである懇談会等を活用することにより対応が可能と考えられることから、これらのアンケート等の調査については、郵送調査により実施しても差し支えないものと考えられる。
   地方農政局(統計情報部)の地方企画業務
   7地方農政局(統計情報部)では、地方企画業務として、アンケート等の調査、加工分析書の作成等を実施している。
   このうち、アンケート等の調査は、平成11年度に20件が企画され、管内の統計情報事務所を通じて実施されているが、その内容及び調査方法をみると、次のとおり合理化、効率化を図る余地のあるものがある。
1.   業務の廃止が可能とみられる情報収集等業務の例
   7地方農政局(統計情報部)のうち4局では、管内の市町村や農業協同組合等の関係団体から、イベントの開催、朝市・産地直売所の所在地等に関する情報を収集し提供する地方企画業務を実施している。
   しかし、このような情報については、当該都道府県や市町村等の観光便覧やホームページ、市町村広報紙にイベント情報等として公表されているほか、関係団体等においても、全国農業協同組合連合会では、全国の農業協同組合等が開設する朝市や産地直売所に関する情報を各県別、内容別に検索できる方法でホームページに登載しているなどの例がみられる。
   また、これらのホームページの中には、関連する情報へのリンクが可能となっているなど、利用者が容易に必要な情報を検索できるものもみられる。
2.   調査方法の合理化、効率化が可能とみられる情報収集等業務の例
   ネットワーク事業の地方企画業務として、平成11年度には3地方農政局(統計情報部)で「食料・農業・農村基本法についてのアンケート」等の調査が4件実施されている。
   このうち3件は、本省企画業務の場合と同様に、管内のモニター等に郵送した調査票を出張所の職員が回収する方法で調査が実施されているが、本省企画業務と同様の理由から、郵送調査により実施しても差し支えないものと考えられる。
   統計情報事務所等の地方企画業務
   統計情報事務所(内閣府沖縄総合事務局(農林水産部統計情報課)を含む。以下本項において同じ。)及び出張所では、地方企画業務として、アンケート等の調査、加工分析書の作成等を実施している。
   このうち、アンケート等の調査は、平成11年度には、調査した19統計情報事務所で16件、51出張所で6件、合わせて22件実施されており、その内容は、1.消費者、学生、農家等を対象とした農業や食料、農政に対する意識や意向等に関するアンケート等18件(統計情報事務所企画12件、出張所企画6件)、2.地域イベント、農産物直売所等に関する情報の収集が4件(いずれも統計情報事務所企画)となっている。
   これらのアンケート等の調査についてみると、次のような状況となっている。
1.   農業や食料、農政に対する意識や意向等を把握するアンケート等は、i)地方農政局の政策担当部署から具体的な要請を受けて企画されたものではなく、統計情報事務所等で独自に企画されており、ii)実施に当たっての地方農政局の政策担当部署との連携は、地方農政局(統計情報部)を通じた口頭協議によるとしているものが大半であり、調査対象や調査項目の選定、調査内容の精査等において実効ある協議が実施されていない。
   このため、地方農政局の政策担当部署において、アンケート等の調査結果が具体的に活用されている例はみられない。
2.   地域イベントや農産物直売所等に関する情報は、前述のとおり、都道府県や市町村等において情報の収集、提供が進んでいることから、国が情報収集し提供する意義は乏しい。

   したがって、農林水産省は、情報収集等業務の合理化、効率化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   本省企画業務のうち、中央卸売市場に職員を常駐させて行っている業務については、必要性を含めその在り方を抜本的に見直すこと。
   また、アンケート等の調査について、調査方法を見直し、郵送調査を積極的に活用すること。
2.   地方農政局(統計情報部)の地方企画業務のうち、イベントの開催や朝市・産地直売所の所在地案内等に関する業務については廃止すること。
   また、アンケート等の調査について、調査方法を見直し、郵送調査を積極的に活用すること。
3.   統計情報事務所及び出張所の地方企画業務のうち、アンケート等の調査については、必要性を含め厳しくその在り方を見直すこと。


   地方統計情報組織の合理化等
(1)   地方農政局(統計情報部)における業務の見直し
   平成13年4月1日現在、統計情報組織(内閣府沖縄総合事務局に係るものを除く。)は、本省統計情報部、ブロック単位に設置された地方農政局(統計情報部)、都道府県単位に設置された統計情報事務所及び統計情報事務所の出張所の4段階の組織となっている(北海道及び地方農政局所在府県を除く。)。
   統計情報組織は、昭和22年に米の作付面積調査等の作物統計調査を重点に行う組織として設置されて以降、昭和45年には、地域の実情に即したきめの細かい施策の推進が要請されていることにこたえ、地方段階の組織においても農林統計を行政面へ十分に活用できるよう、地方農政局の所在する都府県にある統計調査事務所についてはその地方農政局に統合され、また、47年には、農林畜水産物の生産、流通、価格等に関する情報関係事務の強化を図るため、統計業務に加えて情報収集等業務を併せて行うこととされ、これに伴い農林省統計調査部が同統計情報部に、地方農政局統計調査部が同統計情報部に、統計調査事務所が統計情報事務所に改称される等の改編が行われている。
   また、地方農政局が設置されていない北海道については、農林水産省組織規則(平成13年農林水産省令第1号)第303条の規定により、札幌統計情報事務所が北海道所在の他の3統計情報事務所が所掌する事務の取りまとめ及び当該事務所間の連絡調整に関する事務を行うこととされ、統計業務及び情報収集等業務については地方農政局(統計情報部)と同様の役割を担っている(以下本項において地方農政局(統計情報部)に札幌統計情報事務所を含む。)。
   地方統計情報組織(内閣府沖縄総合事務局に係るものを除く。)に配置されている職員数は、平成13年4月1日現在、8地方農政局(統計情報部)に429人(1地方農政局当たり平均54人)、41統計情報事務所に1,883人(1事務所当たり平均46人(出張所と同じ業務を行う地域情報課の職員数(479人)を除く平均は34人))、277出張所に3,126人(1出張所当たり平均11人)となっている。
   国の地方支分部局については、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)第45条において、1.社会経済情勢の変化等を踏まえ、地方支分部局の事務及び事業の必要性を見直し、その再配置、統合及び廃止並びにその内部組織及び職員の定員の整理及び合理化その他必要な措置を講ずること、2.府省の編成に併せて総合化の対象とならない地方支分部局は、可能な限り、整理すること等の方針に従い、地方支分部局の整理及び合理化のために必要な措置を講ずるものとされている。

   今回、本省統計情報部が企画する統計業務及び情報収集等業務について、地方農政局(統計情報部)及び統計情報事務所が行っている審査、取りまとめ等の業務の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   統計業務及び情報収集等業務については、調査の企画は本省統計情報部が、調査の実施は出張所が行っている。このため、地方農政局(統計情報部)及び統計情報事務所の主な業務は、上部機関からの指示の下部機関への伝達、調査等の実施方法の指導及び管内分の調査結果の審査・取りまとめである。
   このうち指示・指導の業務の実施状況については、地方農政局(統計情報部)において、用語の定義、調査の実施方法等について解説・説明資料等を作成している例がみられるが、これらについては、本省統計情報部が作成する実施要領、手引等に必要な範囲内で一括して盛り込むことが効率的であると考えられる。
   また、管内分の調査結果の審査・取りまとめの業務については、次のとおり、地方農政局(統計情報部)を経由する必要性は乏しい。
i)   本省統計情報部が平成11年度現在で所管している42統計調査のうち、本省統計情報部へ直接報告しているものは30統計調査(71パーセント)、地方農政局(統計情報部)を経由しているものは18統計調査(43パーセント)となっており(複数の報告系統となっている統計調査があり、重複して計上しているため合計は統計調査総数(42)と一致しない。)、また、情報収集等業務の調査結果でも、本省統計情報部が平成11年度に実施した情報収集等業務(1回限り又は不定期のもの等を除く。)9件のうち本省統計情報部へ直接報告しているものは4件、地方農政局(統計情報部)を経由しているものは5件となっており、統計情報事務所から本省統計情報部への調査結果の報告には、地方農政局(統計情報部)を経由していないものがみられる。
ii)   地方農政局(統計情報部)を経由して本省統計情報部へ報告されている統計調査及び情報収集等業務についての地方農政局(統計情報部)における審査は、主として管内都府県間の比較により行われているが、都道府県間の比較は本省において実施されている。

   したがって、農林水産省は、事務の合理化、効率化を図る観点から、地方農政局(統計情報部)における統計調査及び情報収集等業務の審査・取りまとめ等に関する業務について、本省統計情報部で一括して行うこととするなど抜本的に見直す必要がある。

(2)   出張所の統廃合の推進
   出張所の総数は、昭和24年の2,113か所をピークとして減少し、平成13年4月1日現在では277か所となっている(内閣府沖縄総合事務局の統計情報出張所を除く。)。

   今回、7地方農政局、18統計情報事務所及び内閣府沖縄総合事務局の158出張所(13統計情報事務所地域情報課を含む。)の配置状況等について調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   農林水産省は、出張所の統廃合について、必ずしも明確かつ具体的な基準を有しておらず、その都度、調査の効率性、職員の勤務条件等を考慮して統廃合の対象となる出張所を決定している。また、平成13年度以降については出張所の具体的な統廃合計画は策定されていない。
2.   出張所においては、農家等の調査客体に対する面接調査や耕地面積の実測調査等の業務が行われていることから、その管轄区域は、調査客体までの所要時間によって制約されると考えられるが、出張所相互間の距離が短い場合は、統合による調査客体までの所要時間の延長は短時間であり、業務への影響も少ないことから、統廃合を推進する余地があると考えられる。
   158出張所について最寄りの出張所までの道路距離をみると、例えば30キロメートル(車での所要時間が約1時間)未満となっている出張所が63か所(40パーセント)あり、中にはわずか8キロメートルのものもある。
3.   農林水産統計をめぐる諸情勢が著しく変化する中で、臨時的かつ緊急的な調査に機動的に対応していくことが求められている。
   しかし、職員数の少ない出張所では、このような要請に的確にこたえることが困難な面もあることから、優先的に統廃合を推進する必要性が高いと考えられる。
   ちなみに、上記63出張所のうち21か所は職員配置数が10人未満となっている。

   したがって、農林水産省は、組織の合理化を図る観点から、最寄りの出張所間の距離・所要時間や出張所の配置職員数、調査客体の分布状況等を勘案した出張所の統廃合の基準を策定し、これに則して計画的に出張所の統廃合を推進する必要がある。

(3)   地方統計情報組織における要員配置の合理化
   地方農政局(統計情報部)、統計情報事務所及び出張所(内閣府沖縄総合事務局の統計情報出張所を除く。)の定員は、昭和43年度末に1万2,095人であったものが平成13年度末には5,466人となっている。
   また、沖縄県の区域における統計業務及び情報収集等業務は、内閣府沖縄総合事務局(農林水産部統計情報課)及び4統計情報出張所が実施しており、その定員は平成13年度末で83人となっている。

   今回、地方統計情報組織について、要員配置の状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   部門別の業務量及び要員配置の状況
i)   内閣府及び農林水産省では、統計情報事務所及び出張所ごとの職員配置については、農林水産業の状況、その他社会的、地理的状況等を総合的に勘案して配置するとしているが、部門ごとの業務量の指標や同指標に基づく職員配置に関する基準を策定していない。
ii)   統計情報事務所の業務は、大きく分けて庶務(出勤簿の管理・確認等)、人事(職員の任免、昇格、昇給等)、会計(給与・旅費の支給等)、庁舎・物品等の管理、文書管理等の総務関係業務(総務課)並びに統計調査の母集団整備・管理、出張所に対する指示・指導、調査票等の審査・集推計、調査結果の分析等の統計業務及び情報収集等業務(総務課以外の課)となっている。
   総務関係業務のうち、例えば、庶務、人事、会計については、おおむね所属する職員数に対応して業務量が増減すると考えられることから、統計情報事務所及び管内出張所の所属職員数を業務量指標として、17統計情報事務所(札幌統計情報事務所を除く。)の総務課職員1人当たりの所属職員数を相互に比較すると、10人ないし18人と較差がみられた。
   また、統計業務及び情報収集等業務のうち、例えば、調査票等の審査・集推計については、おおむねその対象となる客体数に対応して業務量が増減すると考えられることから、主要な統計調査である「農業経営統計調査」を例に、当該統計調査の対象となる農家戸数を業務量指標として、17統計情報事務所の担当職員1人当たりの農家戸数を相互に比較すると、19戸ないし96戸と較差がみられた。
iii)   出張所は、調査の実施、情報収集等の業務を実施しているが、調査客体となる農林漁家の構成割合は出張所ごとに異なり、耕作の形態も、おおむね水田単作の地域や、畑作、果樹作等を中心とする地域があるなど一律ではない。
   このようなことから、調査した7地方農政局、18統計情報事務所及び内閣府沖縄総合事務局の148出張所(平成11年4月1日現在)のうち、漁家等の海面漁業経営体が皆無でかつ耕地面積の70パーセント以上が水田となっている等の条件に該当する25出張所について、例えば、管内農家戸数を業務量指標として、出張所職員1人当たりの農家戸数を相互に比較すると、860戸ないし2,000戸程度と較差がみられた。
2.   業務の合理化、効率化等に対応した要員配置の合理化
   既述の統計調査の廃止及び見直し、統計調査の調査方法の合理化及び効率化、情報収集等業務の合理化及び効率化、地方農政局(統計情報部)の業務の在り方の見直し並びに出張所の統廃合に併せて、地方統計情報組織における要員配置を見直す必要がある。
   したがって、内閣府及び農林水産省は、地方統計情報組織の要員配置の合理化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   統計情報事務所及び出張所の要員配置について、極力その基準を策定することにより、業務量に見合ったものとなるよう見直すこと。
2.   地方統計情報組織について、業務の合理化、効率化等を指摘した事項の実施に対応した要員配置の合理化を図ること。